「メタバース」の時代がやってくる

2023/01/25

5最初に予見したのはアメリカの小説から
昨今耳にする機会が多くなったメタバースは、元々は米作家のニール・スティーブンソンが1992年に発表した小説『スノウ・クラッシュ』に登場する架空の仮想空間サービスの名称だった。ここでは、現実から離脱し、オンライン上のパラレルワールドの中で、仮想アバターとして自由に生きる人々の姿が描かれている。
さて、HUAWEIとHiSilicon(ハイシリコン)によって開発されたHarmonyOS(鴻蒙)をご存知だろうか?スマホやタブレット、スマートウォッチなどデバイス間連携機能に優れたOSで、HUAWEIが米国制裁を受けてから起死回生のため売り出したもの。同OSシステムは初めて、このSF小説から由来する「メタバース」という概念を取り入れ、新たな産業構造と科学技術を生み出すプロジェクトに着手しているという。
この仮想世界が「メタバース」であり、現実世界から接続した人がここに仮想アバターを持っている。イヤホンとVR視覚装置をつけてコンピュータに接続すれば、仮想IDで実世界と平行する新しい世界に入ることができるのだ。
スティーブンソンが書いた「メタバース」は、仮想現実を体験できる次世代のインターネット空間といえる。『スノウ・クラッシュ』は「メタバース」の雛形となり、スティーブンソンは「メタバース」の正式な提案者と公認されている。

大企業CEOも注目するメタバース
現段階では、「メタバース」については厳密な定義はない。フェイスブックのCEO・ザッカーバーグは「メタバースは次世代のインターネットだ。ここでは、コンテンツを見るだけでなく、自らの身を置くこともできる」と話し、NVIDIA Corporation(エヌビディアコーポレーション)のCEO・ジェンスン・フアン(黃仁勳)は「ここでは友人と過ごすことができ、それは3Dの立体的世界になるだろう。また、私たちはタイムスリップを実現したり、光の速さで遠い場所に行ったりすることができる」と形容した。
また、テンセントの馬化騰CEOも「完全なる真のインターネット」だと考えている。彼は2020年末に社内誌で、「現在、エキサイティングな機会が到来している。モバイルインターネットの10年にわたる発展の末、また新たなアップグレードの波がやってくるだろう。私たちはそれを「完全インターネット」と呼び、仮想世界と現実の扉が開かれ、虚から実へ、そして実から虚へ、ユーザーがよりリアルな体験を実現することに力を入れている」と述べた。
現在、一般的な定義は「メタバースとは人類がデジタル技術を用いて構築したもの。現実世界からマッピングされたり、現実世界を超えたりして、リアルとバーチャルが対話することができる空間で、新しい社会システムを備えたデジタル生活空間でもある」ということだ。近い将来、人々の理解と認知も徐々に成熟し、科学と技術変革の発展の未来像となるだろう。

メタバースの代表ゲーム・ロブロックス
さて、2021年は「メタバースの年」であったことをご存知だろうか? それは、2021年初め、中国の若者の間で大流行したソーシャルメディアアプリ「Soul」が業界内で初めて「ソーシャルメタバース」の構築を提案したことに起因する。同年3月、「メタバース第1株」と呼ばれるロブロックス(英語はRoblox、子どもにも愛されるオンラインゲーミングプラットフォームおよびゲーム作成システム)がニューヨーク証券取引所に正式に上場した。5月、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、同社が「エンタープライズ・メタバース」の構築に取り組んでいることを明らかにした。12月27日、百度Create AI開発者大会はメタバース製品であるVR空間「希壤(Xi Rang)」を発表し、大会は「希壤APP」で開催された。これはした中国国内初のメタバースで開催された大会で、同時に10万人の同画面インタラクティブ交流を実現した。スクリーンショット 2023-01-11 154337スクリーンショット 2023-01-11 154550

莫大な規模と投資額
現在の「メタバース」界の主なシーンは「ゲーム+コンテンツ」の娯楽発展モデルを構築することであり、新技術の革新に伴い、インターネット大手各社、ゲーム、ソーシャルメディア大手が商業化発展を始め、一連のオリジナルIPを発売した。
通信と計算力、人工知能とVR/AR設備などの発展に伴い、仮想世界と現実世界は絶えず相互に融合している。統計によると、2022-2027年の中国市場規模は引き続き高い成長を維持し、年平均成長率は32.98%で、2027年までにその市場規模は1263.5億元に達すると推定され、将来の見通しは明るい。
昨年、中国では20以上の都市が「メタバース」行動計画と関連支援政策を次々と打ち出し、投融資市場の活発さが顕著に向上した。政策の牽引、資本の後押しの下で、関連産業の発展はすでに各地で競い合う新たな潮流となっている。
地域分布では、同産業にかかわる人材の需要は主に大都市に集中し、その中で北京、上海、深圳はトップ3に位置し、求人数の割合はそれぞれ21.9%、11.5%、9.3%だった。政策支援などの影響を受けて、新一線と二線都市はいずれも力強い伸びを見せ、22年1~7月の職位数は前年同期比22.4%と19.0%となり、一線都市の平均求人数の伸び率を上回った。
国内政策の発展に伴い、将来的にはまだより多くのメタバース関連の雇用が生まれると言われており、十分な質の高い雇用を促進し、デジタル経済の発展を推進するために力を入れている。

依然としてたくさんの課題も
もしかすると、いまだにメタバースの存在を認めず、ギャグだと思っている人もいるかもしれない。しかし、今ではメタバース時代が来るかどうかの問題ではなく、それがいつ、どのような形で到来するかが議論されている。
もちろん、「メタバース」の発展には依然として多くの問題が早急に解決される必要があることは否めない。技術的限界は最大のボトルネックであり、ブロックチェーン、人工知能などの基礎技術は「メタバース」の応用に必要なレベルに依然として大きな差がある。また、「メタバース」は現実経済活動を急速に「バーチャル化」させてしまうため、実体産業虚化のリスクがある。同時に、個人情報や、著作権・肖像権などの問題については、関連する法律の枠組みを整備する必要がある。
歴史は驚くほど似ているのか、科学と技術の変革はいつも不意にやってくる。1993年、米クリントン政権が「情報スーパーハイウェイ構想」の実施を発表した際、多くの人が半信半疑だった。それもそのはず、当時はインターネットという言葉すらなかったのだから。クリントン氏のこの計画は、世紀をまたいだインターネットバブルを招いたが、この動きこそが米国を全世界にリードさせ、人類を新しいインターネット時代に突入させたことは間違いない。この頃より、スマートフォンがPCに取って代わると、かつての大手ノキアは残影を残すことなく市場から去り、アップルの市場価格総額は2兆ドルを超え、群雄割拠のさまを余裕で見下ろしていたわけだ。
アップルのように「時代を読む力」、つまり「メタバース時代」を視野に入れ、リアルとバーチャルが融合する世界を切り開くことが、次世代における技術革命の新たな始まりになる。36 (1)

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