目から鱗の中国法律事情 Vol.77

2023/03/08

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国の非法人組織 その1

法人とは
「法人」というと多くの人は「会社のこと」と思うかもしれません。現実的に多くの人が目にする「法人」は会社のことかもしれません。しかし、法律上「法人」とは「法律上、人として扱われるもの」をいいます。日本でも中国でも、法律的な行為(例えば、契約など)を行うことができるのは「人」に限られるとされています。
生きている人間は当然「人」ですので、法律的な行為を行うことができます。しかし、法律的な行為を行うことができるのが生きている人間に限られると不合理なことが多く発生します。例えば、契約を締結するときに、会社名義での契約が締結できず生きている人間だけが契約を締結できることになっていたらどうなるのでしょう。そのような場合、当然にその会社の社長などの名で契約することになるとは思いますが、社長は会社自身ではありません。社長もある日突然退任するかもしれません。もし、契約を締結した社長が突然退任したら、その契約はどうなるのでしょう。会社の名称が契約上に出てこず、さらに契約の際に名を提供した者がその会社にいないのであれば、もうその会社と契約を締結したとは言えません。
このように、会社の代表者と契約をしても、会社の代表者は変更になる可能性があるので、会社そのものと契約が締結できなければ意味がありません。このような事情から、生きている人間ではないが、契約を締結するなど法律的な行為ができるように法律上している存在を「法人」というのです。「法人」の語源は、人ではないが「法律上人として取り扱う存在」ということです。25284968_l

中国の非法人組織?
ところで、中国では2020年5月28日に「民法典」が公布され2021年1月1日から施行されており、本連載でも何度か民法典を重点的に取り上げてきました。そして、本連載第46回(PPW751号(2020年8月14日号)掲載)でも少し述べましたが、民法典第2条には「民法は平等な主体として自然人、法人、非法人組織間の人身関係や財産関係の調整を行う」という規定があります。さらに、民法典第102条~第108条には「非法人組織」という規定もあります。
中国では、法人となっていない団体も財産関係を持つ(=財産を保有することができる)ようです。日本では、法人となっていない団体は法律上財産を保有することすらできません(日本で法人となっていないサークルのような団体は、その団体名義で銀行の通帳などが作れないのはそのためです)。しかし、このような規定を見ると中国での法人の位置づけとは何なのかという問題が出てきます。今シリーズでは、このような中国の非法人組織の規定を見ていきましょう。(続く)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

P30 Lawyer_731

Pocket
LINEで送る