アナシス人事労務誌上相談「ChatGPTが注目されてますが、本当に使えますか?」

2023/06/14

Vol.66

M1問い:ChatGPTが話題ですが、まだ使ったことがありません。ビジネスで活用できるものなのでしょうか?
黒崎:かなり使えるようになるはずです。中国・香港ではまだ正式にChatGPTを使える環境にはなっていませんが、そのうちにそうした生成型AIが登場するでしょう。Microsoft社はOSやオフィスアプリにに「Copilot」と呼ぶAIを投入すると発表しています。開発が驚くほど速く進んでおり、これらのAIによってホワイトカラーの生産性は大幅に改善されるはずです。
さてChatGPTが従来のAIと違うインパクトを持てたのは、自然な言葉で質問に答えてくれるという容易さにあります。その日本語力は本当に驚異的です。ChatGPTの機能としては、文章の作成・添削・校正、文章や概念の要約、思考の壁打ちやブレスト、リサーチ・論点の洗い出し、キーワードやアイデア出し等があります。翻訳などでよくある変な日本語表現は出てきません。
英語はさらに得意なので、校正を頼むと文法の間違いだけでなく、内容の改善点の指摘や修正理由なども教えてくれます。メールの作成も手伝ってくれます。私は思考のヌケモレがないかを確認するときや、セルフコーチングにも使っています。まるで優秀なアシスタントが1人増えたような感覚です。
そもそもこうしたAIは大きく4つに分類出来ます。異常検出や認証に使われる「識別系」、需要予測などに使われる「予測系」、会話ができる「会話系」、そして文章・画像・音楽などを創る「生成系」の4つです。この生成系AIが飛躍的な進化を遂げているのです。
しかし生成系AIにはいくつかの懸念点があります。まず、不正確な情報を出す可能性があるということ。AIが平気で嘘をついてくることがあります。こうした誤情報・偽情報が拡散されると大問題となります。それゆえ、その情報を評価し、修正する「編集力」がAI活用には必要になります。さらに著作権侵害や差別的表現をする可能性もあります。これはコンプライアンスや倫理問題となります。また、セキュリティ問題として、機密情報や個人情報をオンラインに掲載すると悪用される危険性があります。これらの対策として、AI活用のガイドラインの策定が必要です。
またChatGPTでよくある話しが「大した答えが出てこない」というもの。システムの世界では「GIGO:Garbage in, Garbage out」という言葉があるように、入力する質問の質が答えの質に影響します。このChatGPTも同様で、質問力が問われます。AIから望む返答を導き出すための指示を「プロンプト」と言いますが、その例が随分と出回っています。そしてChatGPTにはそうしたプロンプトを作成してくれるプラグインまで登場してきました。ですので、慌てる必要はありません。
しかし、重要なのはそうしたサンプルを活用して、AIに何をやってもらうかという目的を明確にすることです。そしてゼロから1を生み出す「構想力」、そして先ほどの質問力・指示力を組み合わせた「指令力」、正確性の確認と本質的な問題解決へと進める情報の「編集力」が、AI時代に鍛えるべきスキルでしょう。問題解決力とコミュニケーション能力の向上も、AIの活用を考える上で重要です。
実際に、指示の上手な人ほどそもそも生産性が高く、AIをうまく使いこなせる人はさらに生産性が高まります。一方、指示を待つ人や確認も出来ない人は仕事が出来ないと言えるでしょう。
もし「指示待ち」の文化を持つ組織や個人の場合、その仕事はAIに取って代わられる可能性があります。AI導入が人員削減につながると誤解されないようにすることも重要です。経営としてはそんな時代を見越して、職務のアサインメントと育成を構想していく必要があります。
冒頭で述べたように、Microsoft社はAIを「Copilot」(副操縦士)と名付けました。つまり我々ユーザーこそが「Pilot」(操縦士)だということ。目的と意志を持った自律型人材こそが、その操縦士になれるはず。AIの活用を考えるほど、そうした自律型人材の養成が必要になってくると感じます。
まずは実際に使ってみることから始めると良いと思います。そして活用方法の具体的な事例を試しながら、自社・自分に適した活用方法を見つけていくことが大切です。

<黒崎幸良 Anaxis Ltd. グループCEO>
86年より一貫して人事系業務に就き、92年より中国ビジネス、02年香港で独立。香港華南のベテランコンサルタントが集結して16年にAnaxis Ltd.を創業、香港・深セン・広州・上海に拠点を持つ人事労務コンサル会社を経営。


●ご契約者向けのウェビナー「ウィークリー・アナシス・オンライン」でも、AIの活用を取り上げていきます。
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