香港・華南で輝く日本の先端技術力。堀正國際VEGILABグリーンテクノロジー

2015/05/27

VEGILABの香港生まれの日本いちご「さくら姫」ハイテクビニールハウスで実現、完熟・朝摘みの日本いちごが香港で食べられる!

香港で人気の日本いちご。
堀正國際のVEGILABグリーンテクノロジー部門では、香港で日本いちごの栽培・販売に取り組んでいる。
日本から取り寄せたいちごの苗を、次世代栽培システムや日本のいちご農家のノウハウを導入したビニールハウスで育成。
そこで実った香港生まれの日本いちごを「さくら姫」と名付けて一昨年より販売をスタートした。
大粒で甘み・酸味のバランスがよい「さくら姫」は香港の人達に大好評。
VEGILABプロジェクトマネージャーの掘田三洋さんにお話を伺った。

堀正國際は、機械部品の商社として事業を展開する堀正工業が2005年に香港で設立した会社だ。中国に進出した日系企業にベアリング等の機械部品の販売を手掛けている。

いちごビニールハウス1
機械部品の商社が農業分野の事業を行っている「VEGILAB」は、2012年から新規に始められた事業と伺いました。
はい、堀正工業では、今後ますます重要となってくる「食」をテーマとした新規事業を始めたいと考えて、5年前よりリサーチを開始しました。そして、2012年に立ち上げたのが、新しい農法でビジネスモデルづくりに取り組むVEGILABグリーンテクノロジー部門です。
VEGILABでは、香港に拠点を設けて、海外で日本いちごを栽培する技術の研究と、施設内で内部環境をコントロールしてレタスなどの葉物野菜を育てる「植物工場」システムの開発・販売の2つの事業に取り組んでいます。植物工場システムについては、施設内で使われるLED照明を商材として扱っていたことも決め手となりました。

いちご

どうして香港に拠点を設けられたのですか。
いちごの栽培については、香港では日本いちごの人気が高く、当時は日本から入ってくるいちごも少なかったのでニーズがあると考えました。香港の気候は、いちごの栽培には向いているとはいえないのですが、チャレンジとしてやってみようと。
植物工場システムについても、香港は高層ビルが多くて土地も少なく、大気汚染等の影響で食の安全に対する関心も高まっているので、施設内で安心な野菜を供給できる植物工場の需要があると思いました。
2013年に、新界のファンリン(粉嶺)地区でいちごのパイロットファームと、シャーティン(沙田)にあるサイエンスパークで植物工場システムのショールームを兼ねたラボを開設しました。私達が目指しているのは、新しい技術を科学的に実証し、経済的にも成り立つ農業モデルの提案です。

日本いちごの栽培はどのように取り組まれているのですか。
パイロットファームとして、約1反(990平方メートル)のいちごハウスを運営しています。日本のいちご農家と提携し、栽培の指導を受けています。いちごは地面より高い位置に設定した棚の上(高設栽培)で、土ではなくヤシ殻を用いた培地で栽培しています。ここで次世代栽培システムとして採用しているのが、イスラエル発祥の水やり方法を日本の技術でIT化した「自動点滴灌水ハイドロポイックス・システム」です。これはいちごやトマトなどの
ハウス栽培に適した栽培方法で、6種類のオリジナル養液を植物の育成段階にあわせて、プログラミングによる自動制御で供給します。また日本の農家とは、スマートフォンのアプリで生育情報を共有し、養液のバランスや水やりのタイミング、温度調整などのアドバイスを受けています。

香港の気候に合わせた、いちごの栽培は大変でしたか。
はい、日本と同じ栽培方法ではダメなので、こちらの気候に合わせていろいろ試行錯誤しながらやってきました。いちごはデリケートで、3~4日天気が悪い日が続くと、味がどーんと落ちてしまいます。また日が強すぎると、今度は小さくて真っ赤かになってしまう。日差しが強い日は遮光カーテンをかけるなど、日本人が1人、つきっきりで世話をしています。
またハウス栽培での暑さ対策としては、乾燥した地域でしたら、ミスト(霧)や、壁面に水を流すパットを設置し、取り込んだ空気を冷却しハウス内に循環させる方法もあります。でも、湿度が高い香港でこの方法をやると、いちごが病気になってしまいます。チラー(温度を一定に保つ装置)は使っており、温度を下げるために、いちごの培地や上部に水を流すためのパイプを配置しています。こうした取組みも含めてビニールハウスには様々な技術が詰め込まれています。

おいしいいちごができあがりましたか。
3シーズンのいちごの収穫を終えましたが、2シーズン目から満足のできるものができ上がりました。シーズン中はハウス前のバス停でも直売しています。ハイキングがてら、周辺にある路地栽培の農園でいちご狩りをやって来た方が「さくら姫」を食べて味の違いにびっくりされていました。香港の気候でも、私達の栽培方法を用いれば、美味しいものができるんですよ。
「さくら姫」は農地を借りている先から紹介してもらい、一昨年より有機野菜を取り扱っているショップ「ファームダイレクト」で販売しています。また昨年からワンチャイ(湾仔)のグランドハイアットで、スイーツにも使っていただいています。
空輸してくる日本いちごは、まだ熟していない段階で摘んでいます。でも私達の方法だと、完熟で朝摘んだいちごを販売できるので味がぜんぜん違います。

いちごの販売で採算はとれますか。
店頭では日本から輸入されている高級いちごと同じ値段で販売していますが、1反の栽培面積では採算は合いません。香港では10月末に苗を定植し、12月中旬から収穫が始まり、天気によりますが4月末まで収穫することができます。でも日本より収穫できる時期が短いので、日本で1反から5トン収穫できるとしたら、香港では3~4トンしか収穫できず収量が下がります。栽培面積が3~5倍になれば採算が取れるようになるでしょう。

おいしい日本いちごが身近になる取り組み、ぜひ広げてほしいです。
みなさんからそう言われます(笑)。いちごの栽培は、採算が合うように規模を大きくしてやっていきたいと考えています。香港のほか、ハワイや沖縄で栽培する計画もあり、どこでやるかは今検討しているところです。

店頭に並ぶフルーツ

植物工場システムの事案についても教えてください。
こちらはハワイ大学との共同研究で行っています。植物工場はタンクに養液を入れて栄養を与える水耕栽培が一般的です。でも私達のシステムでは化学肥料や農薬を一切使わない「アクアポニックス」という栽培方法を用いています。この栽培方法は魚の養殖方法を活用したものです。具体的には、タンクの中で魚を飼い、魚の排泄物に含まれるアンモニアを、バクテリアの働きで亜硝酸塩、そして硝酸塩へ変換させ、植物の養分として供給します。植物が硝酸塩などの養分を吸収し浄化された水は、再びタンクに戻されます。この循環システムでは、水耕栽培と同様、水の使用量が一般的な栽培方法と比べて1/10で済みます。化学肥料を用いていない栽培法なので、ハワイ大学に設置されている同じシステムはアメリカの有機認定も取得しています。

熱帯魚などを飼っている方も、このシステムに興味を持っているそうですね。
はい。モンコック(旺角)で魚を眺めている人にリサーチしたら、ぜひこういうシステムが欲しいといわれました。魚を飼っている人は、このシステムがあれば水の交換をしなくてすみますから。

アクアボニックス イメージ

引き合いも多く寄せられているそうですね。
はい、ビルの屋上でやってほしいとか、中国で新たに工業団地を設立したので、そこに作って目玉にできないか、など多くの引き合いが寄せられています。昨年11月に香港で開催されたエコエクスポアジアに出店しましたが、反響が大きかったですね。
これまでは研究がメインでしたが、家庭や店舗向けに、工業デザイナーの方などの協力を得て、アクアポニックスシステムを採用したミニプランターも開発しました。下で熱帯魚を飼い、上で野菜を栽培できるもので、インテリアとしても楽しめます。今年中に販売を開始できれば、と思っています。
ハワイでは、アクアポニックスによる植物工場と、いちごハウスをパッケージにした観光農園を建設する計画も進めています。これらのシステムに、大腸菌やサルモネラ菌等を検知する検知器などをセットして販売していきたいと考えています。

堀田三洋堀正國際VEGILABグリーンテクノロジー部門の
プロジェクトマネージャー堀田三洋(ほったみつひろ)さん
香港在住3年。香港と日本を行き来する生活を送る。また3カ月に1回は出張でハワイを訪れるという。今シーズンの「さくら姫」の販売は残念ながら終了。来シーズンの販売は12月から始まる予定。「ぜひ味わってみてください」と堀田さん。


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堀正國際 VEGILABグリーンテクノロジー部門

住所:2/F.,Unit 208, Bio Tech Centre 1, 9 Science Park West Ave.,
Science Park,Pak Shek Kok,N.T.
電話:(852)2210-7136
メール:info@vegilab.com
ウェブ:http://www.vegilab.com

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