中国法律コラム6「中国の定年退職制度」。広東盛唐法律事務所

2015/10/27

中国の定年退職制度について

日本では、定年退職年齢は、法律で定められておらず、会社は内部規定で定年退職に関する事項を規定できることとなっています。しかし、こちら中国では、労働者の退職年齢は法律により全国一律に定められています。日本と中国の定年退職制度には大きな違いがあるため、今月号のニュースレターでは、中国の定年退職について論じさせていただき、皆様の理解の助けとなることができればと思っております。

一、退職時の経済補償金について
中国では、労働者が法定年齢に達したとき、労働契約は自動的に終了となります。なお、定年退職を事由に労働契約を終了するとき、使用者は経済補償金を支給する必要はありません。中国では、日本のような退職金制度は一般的ではないため、通常、日本の退職金制度のように、日頃から積立され退職時に支給される金員はありません。なお、労働者が法定年齢に達していないにも関わらず、会社が定年退職を事由に労働契約を終了する場合、不当解雇と認定され、賠償金の支払義務が生じるリスクがあります。

二、中国の定年退職年齢
前述のとおり、中国において定年退職年齢は法に定められており、男子は満60歳、女子は満50歳、女子労働者が幹部身分である場合は満55歳とされています。本規定は、明確なように感じられますが、実務においては、後述の点が争点となり、紛争が生じることが多々あります。

三、紛争が生じやすい争点
1.労働者の年齢は何を根拠に判断するのか?
中国では、労働者の身分証上の生年月日と、戸籍や人事䈕案上の生年月日が一致しないことが良くあります。このような状況が生じた場合、労働者の年齢は、どの資料を基準とすれば良いでしょうか?この点、「国家規定に反して従業者を事前に定年退職させる問題の制止と是正に関する通知」によりますと、労働者の生年月日について、身分証と人事䈕案に記された日付が異なる場合、人事䈕案に最初に記載された日付が基準とされます。実務においては、本規定に基づき、次のような対応を採ることができます。まずは、労働者の身分証に記載された生年月日に基づき定年退職日を定めます。労働者が身分証記載の生年月日は真実の生年月日ではないと主張する場合は、人事䈕案記載の日付を基準とします。

2.女子労働者に生じやすい問題
女子労働者の場合、男子労働者とは異なり、幹部身分と非幹部身分(中国語は「工人」)とで、定年退職年齢が異なるため、定年退職が50歳なのか、55歳なのかを争点に紛争が生じるケースが多々あります。それでは、女子労働者が幹部身分なのか、非幹部身分なのかはどのように判断すべきでしょうか?
広東省労働および社会保障庁は「粤労薪[1999]114号文書貫徹の関連問題に対する処理意見」を公布し、女子労働者の定年退職について明確に規定しました。当該規定は、次のように解釈することができます。女子労働者の現在の職位が幹部と認められる職位であれば(例:主任、課長、部長、マネージャーなど)、定年退職年齢は55歳と、ワーカーなど一般の職位であれば、非幹部身分として定年退職年齢は50歳と判断できる。
ただし、どのような職位を幹部身分、非幹部身分と判断するかは、具体的に明確にされているわけではないため、判断が難しい職位もあります。
実務対応としましては、女子労働者が満50歳になる時点で、まずは、社会保険の継続納付が可能かどうかを確認します。社会保険局のシステム上、満50歳で納付ができなくなる非幹部身分であった場合、まずは本人の意思を確認します。本人が50歳での退職に同意する場合、50歳で定年退職をしてもらいます。本人が50歳での定年退職に応じない場合は、労働契約から労務契約への切り替えについて協議します。労働契約を労務契約に切り替えることができれば、今後、会社が本人との労務契約を解除しようと思った場合、即日解除も可能であり、また、経済補償金の支払も不要であるため、会社にとって大変メリットがあります。自分は幹部身分であると主張し、労働契約から労務契約への切り替えに同意せず、55歳までの継続雇用を求める労働者に対しては、会社は慎重に対応する必要があります。会社が一方的に定年退職として処理し、紛争となった場合、本人が法的手段で争い、幹部身分であることを立証した場合には、会社は不当解雇をしたとして、賠償金支払の法的リスクに直面することとなるからです。

大嶽 徳洋さん広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
中国深セン市福田区福華一路一号
大中華国際交易広場15階西区
電話:(86)755-8328-3652
メール : odake@yamatolaw.com

Pocket
LINEで送る