香港で働く日本人の 給与所得税申告について徹底解説

2016/04/11

毎年この時期は、多くの駐在員が帰国又は他の国へ異動し、また日本から新しいスタッフが着任する時期かと思います。
雇用主にとっては、4月は従業員の給与所得申告の月でもあります。
今回は、香港で働く日本人の給与所得税申告について、詳しくそして分かりやすくご説明いたします。

香港の雇用下で働く日本人の場合
❶香港でフルタイムで働く従業員は、給与の一部が日本で支給されているか否かに関わらず、香港及び日本からの双方の給与に関して香港の税務署に所得を申告する必要があります。この場合、日本で支給される給与から社会保障基金や退職年金基金、税金などが控除されていても、支給された給与総額をSalaries Tax Return(個人所得税申告書)およびEmployer’s Return(雇用主支払報酬申告書)にて申告しなくてはなりません。
❷課税年度期間(4月1日から翌年3月31日まで)における香港滞在が60日に満たない従業員は、いわゆる60日ルール(*)に従い、香港の会社から給与を支給されていても所得税は免除されます。
その場合でも、Employer’s ReturnとSalaries Tax Returnは定められた時期にIRD(税務局)へ提出しなければなりません。また、税金が香港にて支払われるべきか否かの確証のため、IRDは下記の書類の提出を求めることが多々あります。
・課税年度期間のパスポートの全ページのコピー(空白ページも含む)
・雇用契約書とその後の継続契約書(あれば)
・有給休暇と疾病休暇の記録(あれば)
・中国、日本またはその他の国での納税遵守および納税記録
❸課税年度期間における香港滞在が60日以上の従業員は、給与所得の総額が課税対象となります。しかしながら、中国でも就業し、中国にて所得税(Individual Income Tax(I.I.T))を収めている場合、その所得部分は香港では免税対象となります。これは、中国・香港間での二重課税回避のための調停(DIPN 44)による措置です。
この場合、免税申請の付属書類として中国での納税遵守および納税記録をIRDに提出しなければなりません。

香港の会社の役員
❶香港の会社から役員手当を受け取っている役員は、課税年度期間に香港にいたか否かに関わらず、給与所得の課税対象となります。60日ルールは役員に対しては通常適用されません。
❷役員手当が香港の所得税申告を逃れる方法が一つございます。IRDに対して、”Central management and control of the company”(会社の中央管理と統制)場所が香港ではない、ということを証明できれば良いのです。
例えば、香港の会社の役員が通常日本、または中国に滞在し、すべての取締役会が香港ではなく日本もしくは中国にて開催され、また管理の権限・権力を香港の従業員に与えない(つまり、香港には従業員はいない、事務所も設置していない)場合、会社の中央管理と統制場所が香港ではない、と主張することができます。しかし、何の目的であれ(観光や買い物が目的であっても)その役員が頻繁に香港に出入りしている場合は、この主張は成立しません。

香港以外の雇用下で働く日本人の場合
日本の会社の従業員が香港で何らかの業務をする(つまり、香港の関連会社にサービスを提供する)場合、time-in time-out理論(#)に基づき、香港での業務に対する収入のみ課税対象となります。従って、香港外での業務に対する収入は香港では免税対象となります。また、課税年度期間中の香港滞在が60日未満であれば、香港での所得課税の対象とはなりません。
下記の3つの要件を満たせば、IRDによってその雇用が香港外であると認められます。
❶その雇用契約が香港外で協議・締結され、実施可能なものであること
❷雇用主が香港外に居住していること
❸従業員の報酬が香港外で支払われていること

二重雇用と二重収入
従業員が、香港と日本からというように二重に雇用されている場合は、収入も香港と日本からの二重に得ることになります。
このような場合、一般的にその従業員は香港と日本を行き来することになります。例えば、香港には165日滞在し、日本には200日滞在するというようなケースです。こういった場合には、その従業員が役員でない限り、60日ルールが適用されます。しかし、time-in time-out理論は適用されません。
簡単に申し上げますと、香港の給与は香港での給与所得課税の対象となり、日本の給与は日本での給与所得課税の対象となるわけです。
日本での給与は、香港での業務もしくは雇用とは関係のないものなので、IRDに申告する必要はありません。

(*)60日ルールとは、実働日60日を意味するものではありません。香港に入った日も1日とカウントされます。同様に、香港を離れる日も1日とカウントされることになります。
(#)time-in time-out理論:例えば、課税年度期間中の中国滞在(time-out)が200日、香港滞在(time-in)が165日の場合、全給与額に香港滞在日数を按分計算して算出された給与額が課税対象となります。(全給与額 x 165/365 = 香港での課税対象給与額)

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