変化を恐れずに経済合理性を追求する。Borderless Management & Investment Ltd.

2016/05/09

パナマ文書の流出報道以来、「税金逃れ」という言葉が文字が各所で踊っている。「税金逃れ」という言葉自体、すぐに犯罪を意味するものではない。明らかな法律違反である脱税と合法的に税金を節約する行為である節税を含めて、この言葉を使っている。税金逃れ、と聞いて良いイメージを抱く人はいないだろう。直接、法には触れない節税もつくづく世間では嫌悪感のあるものなのだな、と思う。
本来タックスヘイブンができたのはそこに「余地」があったからである。主権とは国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行う権利であるがどんな貧しい小国とはいえ、国家であれば他の国から侵害されない主権がある。例えば通常、多くの国は主権を行使して自国内に設立された企業(法人)から法人税を徴収する。国内で営利活動をおこなって得た利益の中から自国に税金を納めるというのはごく当たり前のことである。自国に多くの消費者(国民)がいれば、国内に工場を作り、流通を整えれば経済が活性化して国は豊かになる。
ところが絶海の孤島にあるような人口の少ない国ではそれが難しい。もちろんその国の人たちも豊かな生活を求める心も権利もある。だから彼らが主権を使って「我が国に設立した法人が海外で挙げた利益に関しては課税しない」という法律を作った。自国をタックスヘイブン化したのである。各国で利益を挙げている企業はそこに子会社として法人を設立して事業を移せば、自国で挙げた利益が子会社のある国では海外での利益になるので税金を支払わなくて済むという「余地」ができた。その余地を利用するのは違法ではない。タックスヘイブン化した国には海外の企業が進出してくるようになり、そこにさまざまな事務作業や賃貸需要が発生して雇用が増えて国民が豊かになった。進出した企業も嬉しいし、タックスヘイブンも嬉しい、いわゆるWin-Winの関係である。
しかし、もともとその企業があった本国は法人税を取りっぱぐれることになるので当然不服だ。だが本国にも主権がある。「タックスヘイブンに設立した子会社が挙げた利益に関しては本国にある本社の利益と合算してみなし課税をする」という法律を作って対抗したりする。つまり不備な制度の抜け穴を利用して貧しい小国や節税したい企業が経済合理的な行動をとった結果起こったことであり、今度は本国が自国の経済合理性を追求してその抜け穴を塞いだということである。要するに人間の社会はまだまだ未完成で明文化
されたルールではカバーしきれてない部分がたくさんあるということではないかと思う。だから道義上どうかとは思うが法律のうえでは問題ない、ということが起こるのであろう。
こうした人間社会の不備な部分は今後も新しい規定によって制御されてゆくことだろう。その過程でこれまではよかったのに急にダメになったということも多々発生してくるはずだ。それは文明の発展の一環としては仕方のないことである。将来の変化のリスクを恐れて何もしないという手もあるが、それでは変化の乏しい退屈な人生になってしまうだろう。大切なのは人間の社会は常に歴史の中で変化が続いているというのを認識しながらも経済合理的な探求をやめないことだと思う。ときには道義的な観点から、ときにはただ単に権力者のエゴで今の常識が覆されることはあっても、新しいことは常に生まれてくるのである。
自分のアンテナを磨き、生きている限り変化に敏感であることをやめてはいけない。

玉利将彦さん玉利将彦(タマリ マサヒコ)
上海と香港を拠点に活動し、中国在住歴は20年に渡る。
香港の証券取扱免許(SFC)と保険取扱免許(PIBA)を保有する資産運用アドバイザーとして、顧客のライフプランに即した投資計画の立案及び積立ファンド・保険の仲介、HSBC香港BOOM証券・中国銀行など海外の有名金融機関の口座開設・運営サポートをおこなっている。

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