経済的に「住みやすい街」を取り戻すための課題とは?

2016/06/13

仕事今、香港の若者の政治に対する不満と、将来へ抱える不安がピークに達している。
2013年から2016年の間の香港の若年層の失業率は、5%から7%の間で変動しており、これは全世代を通した同時期の失業率3.4%よりも高い数値だ。そして、過去20年で消費者物価は45%、不動産価格に至っては300%の増加が見られるのに対し、大卒の収入再頻値は20%しか上昇していない。
これらの現状を受け、今年9月に行われる立法議会選挙、そして来年に迫った行政長官選をむかえるにあたり、政府は今まさにこの先5年の経済に関する方針を考え始める時にさしかかっている。目指すべき「経済の多様性」は新しい雇用を生み、社会的流動性を促すためにも重要であり、そのためには3つの優先的な投資が必要であると考える。
まず第一に対応すべきは優秀な人材プールを拡張することだ。近年、高所得層の家庭の子供の香港内の大学進学率はきわめて低く、毎年セカンダリースクール卒業生のわずか18%でしかない。しかも、卒業生の専門分野による偏りから、産業分野による人材の過不足がアンバランスな状態となっている。また才能を持ながらも金銭的な問題で進学できない低所得層の子供も、大学の高等教育を受けることができるように制度を改革し、より多く、バラエティに富んだ有能な人材を輩出するさせることが急務だ。
第二に、東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易関係をより強化することで、ビジネスチャンスを増やす事だ。これまで香港の経済成長は中国に大きく依存してたが、引き続きこれまでのように中国と他国との強力な架け橋としての機能を維持し続けることが重要であると同時に、これからは東南アジア諸国にも目を向ける必要がある。
最後は、「新たな産業へのより有効な公的投資」だ。政府はここにきて香港国内の技術力とイノベーションの成長を促す為、GDPの0.2%にあたる580万ドルの予算を投じた。これは大きな一歩ではあるものの、まだ充分とはいえない。また、単に「お金を出すだけ」ではなく、能力開発とその実行に必要な基盤づくりからサポートすることがより有効な投資といえよう。
現在、香港の議会はガバナンスの危機という、政策を実施するにあたり深刻な問題を抱えている。いち早い政治改革のためには議会の統制を取り戻すことはまず取り組まなくてはいけない最重要課題であり、実際、シンクタンク「Path of Democracy」が行った世論調査では回答者の75%が議会の正常化を求めている。
また今後、政府は香港の若者、そして香港に投資し続けてきた国際社会のために政治改革を推し進める中で、中道派の政治団体との適度な協力も必要になってくるであろう。
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