教育費のリスクと学資保険（2）Borderless Management & Investment Ltd. - ビジネス投稿

学資保険は子供が小さいうちから少しずつお金を積み立てて大学などへ進学するときの学費を作る商品である。

学資保険は中学、高校、大学の入学時に「祝い金」の出るものや契約者である親が亡くなった場合には残りの期間の保険料が免除される云々、様々なオプションがあってついつい複雑なイメージを抱きがちであるがもとを正せば子供を被保険者にして加入する生命保険だ。

生命保険は人の命に保険をかけて、仮に保険契約期間中に保険をかけられた人（被保険者）が死亡したら死亡保障（保険金）が支払われるものである。また生命保険は被保険者が存命中に解約をすれば解約返戻金というお金が戻ってくる。

解約返戻金は契約してから保険料を払ってきた期間が長ければ長いほど多くなってゆき、ある程度契約を継続して解約をすると解約返戻金の金額がそれまでに支払った保険料の合計金額を越えることもある。

生命保険は万が一の死亡リスクに対する備えを確保しながら「お金を貯める」ことのできる商品なのである。学資保険は子供の生命に保険をかけ、一定期間経過後に解約して解約返戻金を得る商品なのである。学資保険はこの子供に保険を掛
けるというところに大きなメリットが潜んでいる。

通常であれば子供に生命保険を掛ける必要はあまりない。多くの場合、生命保険は一家の家計を支える大黒柱が急に亡くなり収入が途絶えてしまうリスクを回避するために加入するものだが子供が家計を支えることなどまずないので、もし子供が死んだとしても、その精神的な喪失感の深さは別にして、一家が経済的に困窮することはないのだ。また、現代社会では若くてエネルギーに溢れた子供が死ぬ可能性はとても低く、生命保険の保険金を受け取る確率も極めて小さい。

ところがその側面が逆に効率よくお金を殖やすことに作用する。

生命保険契約に毎年（あるいは毎月）支払う保険料の金額は年齢や性別、喫煙をするかどうかによって違ってくる。例えば40歳の男性と女性が20年払いで同じ保険金額の生命保険に加入したとすると、通常女性の支払う保険料の方が男性が支払う保険料より安くなる。何故かというと統計的に女性の方が男性よりも寿命が長いからだ。

これは保険会社の立場に立ってみればわかりやすい。

男性が75歳、女性が85歳まで生きるとすれば、40歳のときに終身保険の契約を引き受ければ保険会社は男性の契約に対して35年後に保険金を支払わなければならないが女性の場合は45年後で良い。つまり10年間長くお金を預かって運用に回せるのである。であるなら、女性の保険料は多少安くしてもかまわないし、そもそもそれが公平であるはずだ。

同じように40歳の男性と5歳の男児が同じ条件の保険に加入した場合、当然5歳男児の保険料の方が安くなる。逆を言えば、40歳の男性と5歳の男児が同じ保険料を同じ期間支払えばそれだけ効率良く運用ができる（お金が貯まる）ということになるのだ。

実際の20年払いの終身生命保険のプランを例にとって解約返戻金の金額を比べてみる。

【40歳男性】
加入時年齢：40歳
性別：男性
喫煙の有無：非喫煙者
保険料支払期間：20年払い
支払い方法：年払い
年間保険料：USD6,001.98/年
20年間払込保険料：USD120,040
20年後解約返戻金：USD133,557（非確定利益を含む概算）

【5歳男児】
加入時年齢：5歳
性別：男性
喫煙の有無：非喫煙者
保険料支払期間：20年払い
支払い方法：年払い
年間保険料：USD6,090/年
20年間払込保険料：USD121,800
20年後解約返戻金：USD151,445（非確定利益を含む概算）

若干の誤差はあるが、ざっくり年間の保険料がUSD6,000、20年間の合計支払保険料の金額はUSD120,000というプラン。

しかし20年後の解約返戻金は40歳男性がUSD133,000に対して、5歳男児の方は約USD150,000というところ。もちろん5歳の子供の方が40歳の男性に比べて死亡する確率が低い（=保険会社のリスクが低い）という統計に基づいた結果であるが、年齢が低いうちに生命保険に加入するというのはこれだけ運用に良い影響を与えるのである。

すなわち学資保険はこの高い利殖効果を利用して毎年少しずつ積み立てる資金を効率よく運用し、学費などあらかじめ予見できる大きな出費に備えることのできる商品なのである。

玉利将彦　（タマリ　マサヒコ）
上海と香港を拠点に活動し、中国在住歴は20年に渡る。
香港の証券取扱免許（SFC）と保険取扱免許(PIBA)を保有する資産運用アドバイザーとして、顧客のライフプランに即した投資計画の立案及び積立ファンド・保険の仲介、HSBC香港BOOM証券・中国銀行など海外の有名金融機関の口座開設・運営サポートをおこなっている。

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