中国法律コラム9「中国の生育保険(出産保険)の解説」広東盛唐法律事務所

2016/08/22

中国では二人っ子政策が開始され、今後は皆さんの会社でも女子従業員が妊娠・出産するケースが多くなると思います。今回は、生育保険(出産保険)及びその受給待遇などについて、下記のとおりにまとめました。女子従業員の方が妊娠されたとき、どのような生育保険待遇を受給できるのか及び申請方法について、下記の内容でご確認ください。

一、生育保険の納付基数及びその上限・下限、料率、納付義務者
1、納付基数:従業者の賃金総額
上限:従業者月平均賃金の3倍
下限:最低賃金
2、料率:従業者賃金総額0.5%
(2015年10月1日改正、改正前の料率は1%)
3、生育保険料は使用者が毎月納付する。従業者個人は納付しない。

二、生育保険待遇
生育保険待遇の主なものとしては、生育医療費用及び生育手当がある。
(一)生育医療費用には下記のものが含まれる。
1、生育(出産)にかかる医療費用:
女子従業者に妊娠、分娩のため生じる医療費用。これには、国家及び広東省が定める出産前検査の費用、流産の費用、分娩のため入院する期間の助産費、手術費、入院費、薬代、妊娠合併症の診断及び治療にかかる。
2、計画生育にかかる医療費用:
子宮内避妊器具の取り付け又は取り外し、輸卵管、輸精管の結紮又は回復の手術、妊娠中絶、分娩を促すための医療費用
3、法律、法規、規則に定めるその他の費用
(二)生育手当の計算方法及び支払方法
1、生育手当は従業者が生育(出産)又は計画生育手術をするときの使用者の前年度従業者月平均賃金を30で除した値に規定の休暇日数を乗じて計算する。
2、休暇日数の計算方法
(1)女子従業者の生育(出産)休暇:
安産の場合は98日とする。難産の場合は30日を追加する。多胎児の場合は赤子が1人増えることに15日を追加する。妊娠4ヶ月未満で流産した場合は15日とする。妊娠満4ヶ月以上で流産した場合は42日とする。
(2)計画生育手術の休暇:
子宮内避妊器具の取り外しは1日、取り付けは2日とする。輸卵管の結紮手術は21日とする。輸精管の結紮手術は7日とする。輸卵管又は輸精管の回復手術は14日とする。同時に2つ以上の手術をする場合は休暇は合わせて取得することができる。
3、成育手当の支払方法:
従業者が規定の出産休暇又は計画生育手術休暇を享受する期間において、まずは使用者が従業者のもとの賃金基準に従い毎月生育手当を支給するものとする。その後、社会保険機構が規定に従い使用者に支給する。生育手当が従業者のもとの賃金基準を上回る場合、使用者はその余った金額についても従業者に支給するものとする。生育手当が従業者のもとの賃金基準を下回る場合、差額部分は使用者が補填しなければならない。
4、《広東省従業者生育保険規定》第16条2項によると、従業者が計画生育法律、法規により奨励として追加される出産休暇(30日の計画生育奨励休暇)又は看護休暇など第2項に列記する休暇期間に適合しない休暇については、使用者が規定に従い賃金を支払わなければならず、従業者は生育手当を受給できない。

三、生育保険待遇の受給手続き
(一)生育医療費用
1、生育保険加入満1年以上の従業者に深セン市内の指定医療機関で発生した生育医療費用について、カード読み取り確認を実施し、社会保険機構及び指定医療機構が当市の非営利性医療機構の医療サービス価格基準に従い直接決済する。
2、生育保険加入満1年以上の従業者に深圳以外の地区で発生した生育医療費について、発生後1年以内に深圳の社会保険機関にて一定額(全額ではない)を一括精算するものとする。一定額を一括精算する基準は、社会保険行政部門が定める。精算基準を超える部分については、生育保険は支給をしない。
3、生育保険加入1年未満の従業者に生じた生育医療費用について、まずは本人が支払った後、加入期間が満1年に達した後1年以内において、社会保険機構に一定額の一括精算を申請することができる。
4、生育保険加入満1年以上の従業者の未就業配偶者に生じた生育医療費用について、まずは従業者本人が支払った後、発生後1年以内に社会保険機構に一定額の一括精算を申請することができる。
(二)生育手当
1、生育保険加入後満1年の従業者であり、かつ、使用者が生育手当を立て替えて従業者に支払った場合、使用者は従業者が生育(出産)又は計画生育手術をした次月から1年以内において、社会保険機構に生育手当の支払いを申請することができる。
2、生育保険加入後1年未満の従業者が生育(出産)又は計画生育手術をした場合、使用者は当該従業者の生育保険加入期間が満1年となり、かつ、当該従業者のため生育手当を立て替えて支払った後1年以内において、当市社会保険機構に生育手当の支給を申請することができる。
3、従業者が規定に従い出産休暇又は計画生育手術休暇を取得している期間において、使用者が営業許可証を取り消された、閉鎖を命じられた等の客観的原因又は正当な理由なくして生育手当を立て替えて支給しない場合、従業者本人は出産休暇又は計画生育手術休暇が終了した後1年以内に、統括地区の社会保険機構に生育手当の支給を直接に申請することができる。

大嶽 徳洋さん広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
中国深圳市福田区福華一路一号
大中華国際交易広場15階西区
電話:(86)755-8328-3652
メール : odake@yamatolaw.com

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