三菱電機(香港)50周年記念特集 世界で活躍する“三菱電機の技術”! 【第2回】

2016/09/27

省エネ・省スペースを実現する
三菱電機の技術力。

香港で生活する上で欠かせない交通手段といえばMTR。ほぼ定時刻で運行するこの車両に、三菱電機製品が取り付けられていることを皆様はご存知だろうか。安全で安定した運行を支える同社電気品について、社会インフラ事業部総経理鳥海寿郎(とりうみとしお)氏、副総経理蘇志文(Mr.George So)氏に加え、勤続年数30年、常に第一線で現場を取りまとめてきた同事業部 建設部経理陸兆豪(Mr.Luk)氏に取材を行った。

三菱電機

左から、同事業部建設部経理・陸兆豪(Mr.Luk)氏、同総経理・鳥海寿郎(とりうみ としお)氏、社会インフラ事業部副総経理・蘇志文(Mr.George So)氏

 

 

三菱電機(香港)の社会インフラ事業部では、ここ香港での交通ビジネスにおいてどのような役割を担っているのでしょうか。

鳥海:社会インフラ事業部は、電力、公共及び交通事業を担当しています。当社の電気品は空路や陸路など様々な方面で、香港の安全で円滑な交通機関の運行に貢献してきました。現在、香港MTRでは11路線、102駅、971両ありますが、約90%の車両に車両用インバーター、変圧器、モーター等をはじめ当社の電気品が採用されています。当社では更に、省エネを切り口とした「S-EIV (Station Energy Saving Inverter)」、No Fire Riskを切り口とした「C-GIS (Cubicle Type Gas Insulated Switchgear)」という2機種の製品を開発しました。2017年以降、MTRの各駅に新製品を設置することを目指します。当事業部の果たすべき役割は、車両用及び駅舎用電気品の拡販のみならず、エアコン、昇降機及び人転落防止用センサー等他事業本部と連携しながら、鉄道のトータルソリューションの提案をすることです。まさに、香港を牽引する三菱電機の総合力を示すことと言えます。

 

 

MTRの全車両の約9割に様々な三菱製品が導入されている理由についてお聞かせください。

陸:現在香港で走行している車両は、イギリス・韓国・中国製と様々なメーカーが混在していますが、MTRが各車両メーカーに対し当社電気品を使用することを要求しています。納入後はアフターサービスとして、建設部が定期的にメンテナンスを実施しています。建設部では不具合が発生した時に速やかに対処できるよう、全てのエンジニアが既設電気品の講習を受けており、更には自分が携わるプロジェクトや提供するサービスについても専門的な知識を備えています。

三菱電機

MTR九龍メンテナンス工場で車両用電気品の更新を行っている様子

 

 

新製品の一つ、「S-EIV」について読者の方にも分かるよう概要や特徴について教えてください。

蘇:車両がブレーキをかけた時に発生する余剰回生エネルギー( 余ったエネルギーを回収・蓄積し、再利用するシステム)を、S-EIVに内蔵されているインバーターにて直流から交流に効率よく変換し、駅構内のエアコン、照明及び昇降機へ電力供給することができます。インバーターに搭載する半導体素子の性能改善により、電力損失をミニマイズし駅舎用電力を有効活用できることで、地上設備も含めた鉄道システム全体の更なる省エネが期待できます。

三菱電機

東京メトロ東西線妙典駅に設置されたS-EIV

 

 

今年2月~8月中旬の約6ヶ月にわたり、MTR荔景(ライキン)駅にて試用運転をされていたそうですがどのような効果がでましたか。

蘇:ほぼ計画通りに省エネ効果は期待できそうです。計画では、630kWH(60世帯分の1日の電力量に相当)の節電でしたが、半年間の試行結果では、計画値の95%に相当する613kWHを達成できそうです。省エネ効果及び投資回収メリットを説明できれば、MTRは本格導入に向け前向きに検討すると思います。

 

 

試用運転にあたりどのような工事を行いましたか。またデータ測定について苦労した点も交えてお聞かせください。

陸:据付、試験、受電までに1~2ヶ月間が必要でした。MTRのシステムは24時間作動していますので、受電側の高圧機器から駅構内の低圧機器間の電力ケーブルの設置は、非常にデリケートな工事でした。今回試用運転を行ったS-EIVの余剰回生エネルギー量は、車両用電気品(特に車両用エアコン)の消費電力に左右されたため、データ測定にあたり三菱電機のエンジニアと共に現場で計画値と実績値の差異を分析・調整することに苦労しました。

 

 

次に、「C-GIS」とはどのようなものでしょうか。香港地下鉄側でも導入を検討中とのことですが、開発された経緯とはどういうものでしょうか。

鳥海:MTRは電力会社から33kVで電力供給を受けています。「C-GIS」は415Vまで電圧を調整し、駅構内の昇降機・照明及びエアコンなどに配電するための重要な受配電設備の一つです(駅構内で使用するには変圧器で電圧を下げる必要があるため)。香港では設置スペースが限られているため、コンパクトな本体は非常に有効です。また不燃性の絶縁ガスを使用していますので、火災の心配がなく、落雷などの事故電流も遮断します。香港地下鉄のみならず香港電力及び中華電力向けにも適用され、電力の安定供給には欠かせないシステムです。

 

 

既に導入されている他社製品と比較するとどのような利点がありますか。

鳥海:香港電力向けにほぼ100%納入実績のある三菱電機製の「C-GIS」が注目され、MTR受配電設備として開発品をMTRに提案しました。この結果、高品質はもちろん、他社製品と比べコンパクトである点、据付容易性、アフターサービス体制が評価されました。現在、詳細仕様を確認している段階にありますので、必要に応じ試用運転を客先に申し入れます。各駅に6面必要となりますので、102駅合計で612面が総需要となります。内、既設機器の更新需要は、37駅、222面ありますので、2018年以降、市場投入を目指します。

 

 

こうした省エネを切り口とした顧客ニーズは、海外市場や国内市場においてこれまで以上に高まるものと思われますが、S-EIV、C-GIS等をはじめこうした分野での貴社の今後の展望を教えてください。また知名度を上げるためどの様な活動をされていますか。 

蘇:交通ビジネスに限らず電力や公共ビジネスにおいても、トータルソリューションの一環として、最適な製品の組み合わせを提案したいと考えています。また知名度を上げるために三菱電機は2014年に続き、2016年9月20日~23日のベルリン国際鉄道技術専見本市に参加し、三菱電機の鉄道技術をパネル、ビデオにて紹介しました。この見本市を通じて、世界各国の鉄道会社から引き合いが増えていますが、ここ香港MTRの車両用電気品の約90%が三菱電機製であることに注目されています。

 

 

2018年末には九龍西から広州にかけて新幹線が開通し、ランタオ島からマカオ・珠海にかけて港珠澳大橋(香港珠海マカオブリッジ)の完成を間近に控えています。香港MTRでも海怡半島(サウスホライズン)と金鐘(アドミラリティ)を結ぶ港島二線や何文田(ホウマンティン)と黃埔(ワンポア)を結ぶ觀塘線延線などの路線が計画され、19路線120駅を上回ることが予想されています。これらを踏まえ貴社で構想しているビジネスはどのようなものでしょうか。

鳥海:2018年末以降、大橋、新幹線効果により、今後更にヒトやモノの流通の活発化が予想されることから、香港を点でみるのではなく、珠江デルタという面の広がりを見据えながら、香港地下鉄から高い評価を受けた三菱電機の技術をマカオ、中国広東省へ発信することを意識しています。香港をモデルケースとして、利用客が安全、安心して地下鉄を利用でき、快適に駅構内で過ごせる交通ビジネスの構築を目指します。例えば、橋やトンネルといった社会インフラ設備の状態を計測するセンサーの設置や、センサーを搭載した自動車をトンネル内で走行させ、状態データを収集、分析の上、劣化状況を把握することで、検査の省力化と補修対策の効率化の実現、そして事故を未然に防ぐことで、安全・安心感が高まります。この事業を通し、香港の更なる発展と皆様の生活に少しでも貢献できるよう取り組んで参ります。

 

 

ありがとうございました。

三菱電機

三菱電機(香港)有限公司
住所:20/F Cityplaza One, 1111 King’s Rd., Taikoo Shing
電話:(852)2510-0555
ウェブ:www.mehk.com

 

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