グローバリズムとナショナリズムのせめぎあい Borderless Management & Investment Ltd.

2017/03/06

玉利将彦さんグローバリズム(英: globalism)

地球上を一つの共同体とみなし、世界の一体化を進める思想である。

ナショナリズム(英:Nationalism、民族主義、国家主義、国民主義)

文脈により多様に使い分けられておりその一義的な定義は困難であるが主要な論者のひとりであるアーネスト・ゲルナーは「政治的な単位と文化的あるいは民族的な単位を一致させようとする思想や運動」と定義しており、十全とは言えないものの、この定義が議論の出発点としてある程度のコンセンサス(意見の一致)を得ている。

辞書を引くと小難しいが平たく言えばグローバリズムは国境や人種・民族の概念が薄くなってゆくことで、ナショナリズムは国境の内側は自分たちの縄張りで、外側は自分たち以外の人の縄張りという概念がはっきりしていることではないかと思う。

ナショナリズムでは内側の利益を優先するが故に外側とは対立する構図が生まれやすくなる。どちらが先にできたかというとそれはナショナリズムである。自分により近い者の利益を守りたいというのは人間の本性だろう。まずは自分の利益が最優先でその次に家族、その次に友人・仲間、、という順番でより利益を得てもらいたい、幸せになってもらいたいと感じるはずだ。そう感じる範囲内の人を便宜上「内側の人間」とする。逆を言えば、自分から関係の遠い人になればなるほどどうでも良くなってゆく。そうして自分から近い存在を広げてゆくとだいたい同じ民族とか同じ国民とかまでが「内側の人間」に入るはずだ。

人間社会の大規模な利益の相反、例えば政治的対立や経済的対立はだいたいこの単位で発生する。皆が幸福になれれば良いがそれは困難。どちらかしか満足な利益を得れない場合、内側の人は協力して外側の人と争うのである。内側の人の利益の優先、それがナショナリズムの原型だろう。ではグローバリズムが優先しているのは何かというとそれは人間社会全体の利益とか効率ではないかと思う。

グローバリズムの例として企業の生産拠点の海外移転という事象がある。従来国内で同胞の労働者を雇用して報酬を支払いすばらしい商品を作っていたA国の企業が、自国より人件費の安いB国に工場を移転して生産をはじめるというようなことである。そうしたおかげでB国の人たちが新たに仕事を得られるようになり、商品の生産コストが下がって世界中のより多くの人がそのすばらしい商品を入手できるようになり、企業の売上や利益も拡大した。

ところがこれによって本来A国で働いていた人は失業して不利益を被った。社会全体のプラスマイナスで見るとプラスが大きいが失業したA国の労働者は決してそれを望まないはずだ。安い賃金でも喜んで働く移民が自国へ流入して本来そこに住んでいた本国生まれの人が仕事を奪われた、あるいは所得が下がったというのもグローバル化の側面だ。そうしたグローバル化の不利益を被った人たちの意思の反映が昨年のブレグジットであり、アメリカのトランプ政権誕生ということになる。今年相次いで大きな選挙が行なわれる欧州でもナショナリズムを標榜する極右政党の台頭が目立ってきている。

今後グローバリズムとナショナリズムはどちらが主流になってゆくのか?

あくまで個人的な考えだが、やはり世界は徐々にグローバリズムが広がる方向に傾いてゆくのではないかと思う。昨年から相次いで起こっていることはここ20年ほど急速に広がってきたグローバリズムに対する強烈な揺り戻しではないかと考えている。だが科学技術や交通網が発達し、地球の主要な地域へはどこへでも数時間から10数時間で到達することができるようになり、インターネットによってあらゆる情報が手に入り、それが自分が解する言語に瞬時に翻訳される。技術革新はあらゆることの効率を高める方向に動き、そうした進化を人類は止めることはできまい。それについて行けない企業や個人はやはりこの先厳しい立場に立たされるはずだ。

ナショナリズムの台頭によりグローバル化の進捗が多少なりとも停滞するなら、それはそれで今出遅れている人にとってキャッチアップの好機といえるのではないだろうか?

玉利将彦 (タマリ マサヒコ)
上海と香港を拠点に活動し、中国在住歴は20年に渡る。香港の証券取扱免許(SFC)と保険取扱免許(PIBA)を保有する資産運用アドバイザーとして、顧客のライフプランに即した投資計画の立案及び積立ファンド・保険の仲介、HSBC香港BOOM証券・中国銀行など海外の有名金融機関の口座開設・運営サポートをおこなっている。

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