「デザインとマーケティングと香港の話をします」第一回:広告は死んだ?

2018/01/29

1998年より香港で広告とマーケティングのコンサルティングをしているTYAの植木(うえき)です。6回に渡って

「デザインとマーケティングと香港の話をします」

というコラムを連載させていただきます。

本業なのに広告は死んだなんて言っていいの?と思われるかもしれません。実際には世の中から広告が無くなる訳ではありません。PPWでも魅力的な広告が多数掲載されています。私達は日々、広告に接しています。ただ、コミュニケーションの形が大きく変わった今日、広告という概念は徐々に新鮮さを失っているのかもしれません。また、何をもって広告と呼ぶのか、という定義もぼやけてきています。広告をめぐる環境を紹介しつつ、第1回目のコラムでは「広告は死んだ」という問題提起をします。

2つの視点からお話したいと思います。
1つ目の視点は消費者が情報を受け取る場所が変わったというものです。

その立役者がインターネットであり、スマートフォンです。

ニールセン香港の調査では2015年に1人当たり1日180分だったネットの接触時間は2016年になんと270分に増加しました。現在ではスマホをネットに繋ぐと大抵のことができます。情報を得る、買う、つながる、撮影する。スマホだけで仕事を完結する人も増えました。

多くの人が多くの時間を過ごす場所に広告が進出してくるのは当然のことでしょう。

さて、最近、MTRの車内広告を見ましたか?乗客は皆、スマホを見ています。ゲームにチャットの低頭族でその広告を覚えている人がどれほどいるでしょう?それならスマホに広告配信したくないですか?

誰がテレビを見ているの?という声も良く聞きます。でもテレビは相変わらず強くて、調査では媒体接触率第1位。視聴方法が進化して、ネットにつながっていればスマホでいつでもどこでも視聴でき、過去の番組を視聴することもできます。いくつかの新しい局も人気です。ネットのおかげで視聴する選択肢が
増えました。

動画配信や動画投稿、WEB、ブログ、検索エンジン、ソーシャルメディア、各種アプリ。オンラインメディアは増え続けています。マスメディアを加えると、消費者と企業のタッチポイントは膨大な数です。

顧客ターゲット、メディア属性、顧客に期待する行動、市場における商品の現在位置を熟考の上、クリエイティブ表現とのベストミックスを見つけることが必要です。

2つ目の視点。消費者は情報を選択でき、自分も発信するようになったというものです。

例えば広告はスキップできます。「サイトやアプリで同じ広告ばかり見るのが嫌だ」という声を聞きます。昔もCM中にトイレに行ったり、広告を読み飛ばしたりできました。しかし、今ではより自覚的にスキップやブロックすることが可能です。

また消費者は情報を発信できます。コンテンツも作ります。ネット上で互いにつながることができます。不適切な投稿の炎上も発信の一形態です。更に自分の好きなブランドを勝手に応援する人もいます。非公式コミュニティに多くのファンがつくこともあります。たくさんのフォロワーを持つインフルエンサーがメディアとして期待されているのは周知の通りです。

オンラインでもオフラインでも良い体験をしたい、という消費者の欲求は止まりません。いつ、どんな形でどんな情報を受け取るのが心地良いか、の基準は大きく変わりました。

広告が限られたチャンネルで、一方的に届けられる時代の終焉。飛躍的に増えた選択肢と、自ら発信するパワーによって、消費者の行動様式は全く異なったものになりました。その意味において「これまでの広告は死んだ」ということだと思います。

これからのコミュニケーションはより戦略的にデザインされた上で選択してもらう必要があるのです。(続く)

 

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植木 伸彦氏

植木 伸彦氏
1995年、黎明期の上海で日系企業のマーケティング立ち上げを手伝う。1998年にTYA(HK)LTD設立。戦略クリエイティブを核に大手家電、化粧品、食品会社などのブランディング、プロモーション、コミュニケーションプランに携わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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