中国法律コラム30「来料加工工場の法人化における経済補償金について」広東盛唐法律事務所

2018/07/18
今回のニュースレターでは、来料加工工場を法人化するにあたり、経済補償金の支払い義務が生じるか否かという問題について、皆さんと情報を共有させていただきたいと思います。

一、来料加工工場が現在の住所地で法人化する場合

1、分析意見
 現在の来料加工工場の住所地で法人化する場合、すなわち新外資企業が来料加工工場の住所地で設立される場合、従業員の仕事場所が変更されることはありません。但し、工場の名称、法定代表者、主要責任者または投資者などの事項が変更されることになります。
工場の名称、法定代表者、主要責任者または投資者などの事項は変更されるものの、従業員の仕事場所は変更されない場合は、労働契約の履行に影響をきたさないため、元の労働契約は引き続き有効とされます。つまり、労働契約は来料加工工場の権利と義務を承継する独資企業により継続履行され、従業員の勤務年数は継続計算されることになります。したがいまして、このケースにおいては従業員に経済補償金を支払う義務は生じません。

2、法的根拠
(1)労働契約法33条、34条
(2)「企業組織形態変更過程における労使紛争の防止業務の徹底に関する広東省人力資源及び社会保障庁の意見」2条3項(粤人社規〔2013〕3 号)

 

二、来料加工工場が、市内で移転して法人化する場合

1、分析意見
来料独資化と同時に市内で移転するケースにおいて、従業員の仕事場所は変更されるものの従業員の生活に明らかな影響を生じさせない場合は、労働契約の継続履行に影響を及ぼしません。または、従業員の生活に明らかな影響が生じるものの、企業が合理的な措置(通勤バスの手配など)を講じて労働契約の継続履行に影響を及ぼさないこととした場合は、従業員に経済補償金を支払う義務は生じません。

2、法的根拠
「企業組織形態変更過程における労使紛争の防止業務の徹底に関する広東省人力資源及び社会保障庁の意見」2条3項(粤人社規〔2013〕3号)

 

三、来料加工工場が市外に移転して法人化する場合

1、分析意見
来料加工工場が、市外に移転して法人化する場合、“労働契約の締結時に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じたことにより、労働契約を履行することができなくなった”との労働法に定める状況に合致することになります。この場合、使用者と労働者が協議を経ても、労働契約の内容の変更について合意できないときは、企業は30日前までに書面により従業員に通知するか、または一か月分の賃金(通知金)を支払って労働契約を解除することができます。つまり、この場合は経済補償金を支払う義務が生じます(いわゆる1N+1)。

2、法的根拠
(1)労働契約法40条3項
(2) 《「労働法」の若干の条文に関する説明》26条(労弁発[1994]289 号)

 

四、まとめ

1、現在の住所地で法人化する場合、又は市内で移転するものの従業員の生活に明らかな影響を生じない場合、経済補償金の支払い義務は生じません。他方、市外に移転して法人化する場合、経済補償金の支払い義務が生じることとなります。
2、当職らの過去の経験によりますと、市内又は現在の住所地で法人化する場合、法律上は経済補償金を支払う義務は生じないものの、従業員がストライ キ・サボタージュ、出荷妨害などの手段を講じて経済補償金を要求してくる蓋然性が高いです。このよ うな状況が生じた場合は、弁護士、政府部門などと連携をし、従業員らに経済補償金の支払い義務のないことを説明する必要がありますが、客先に対し て供給責任を果たすため、一定程度譲歩することを検討すべき場合も多々あると考えます(従業員に協力感謝金などの名目にて一定程度の金員を支払うなど)。したがいまして、来料加工工場を法人化する前には、自社の具体的な状況に応じて、作り溜めや別の工場での製造など、対策を十分に検討されるべきです。

 

 


盛唐法律事務所

広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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