来年の世界経済の動向は?大手投資ファーム見通し発表

2018/12/19

914億米ドルの運用資産を持つパインブリッジ・インベストメンツが今後の世界経済の見通しを発表。チーフエコノミストのマーカス・ショーマー氏によれば、来年は世界的な成長率の再収束が予測されるが、それは以下の諸条件に左右されそうだ。

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1)政策決定者達が過去の中立的な金利で実際の政策金利を押し上げるという誘惑に負けなければ、FED※1は米国経済を安定させることができる。FEDと中国サイドが調和を選択した場合、世界ビジネスの輪は広がる。FEDは来春引き締めサイクルを中断し、中立的レートを僅かに上回る約3%に設定予定だ。

2)政策立案者が対策の幅を多様化できれば、 中国は米国の関税が自国商材に及ぼす影響を逆手に取り、民間部門の成長を刺激して世界の輸出業者に利益をもたらすだろう。

3)欧州中央銀行は、英国のEU脱退による潜在的な負の経済効果、イタリアの予算膠着状態と来年の選挙等の問題を緩和できれば、途上国の中央銀行政策の広範な再統合に着手できる。なおアジアのGDPは2019年に5.5%、2020年には5.3%、北米は2019年には2.4%、2020年は2%が見込まれるのに対し、欧州は2019年には1.9%、2020年には1.7%である。

同社はテクノロジー及び産業部門双方で、スマート設備投資の生産者、利用する企業の収益とマージンは成長すると見ている。同社が日本のオートメーション株、連結業種、企業統治を改善した企業へ寄せる期待は高い。

規制強化と緩和策間の調和を期待し、同社は中国経済については楽観的見解を示した。また来年は世界的に価格競争力を持ち、投入費用上昇の中でも利益を守る能力を持った世界の企業に好機を見い出し、成長に注目していく。但し労働力不足、商品価格の高騰等資本費用の上昇が懸念され、 環境など一部業種を除いて営業利益率を守る価格設定能力を持った企業は多くないという。

グローバル・ヘッド・エクイティのアニック・セン氏は、「中国の成長に安定感が戻れば選択的投資機会に良好な環境が整い、昨年の好調な需要条件が来年も起こる可能性がある」と述べた。

来年債券投資家はポートフォリオを見直し、以下のような状況の到来に備えると良い。

1. 国際的なレートの正常化
2. 米国の金融引き締め策によるトレイルオフ
3. 米国IT企業の不調
4. 高い分散性、低いリターン、安定性の欠如

同社の債券チームは、来年市場が概ね好調に推移すると考えているが、急速かつ予想外のマイナス要素浮上の可能性は否定しない。「新興市場は慎重に検討し、リスクの高いクレジットを払い戻すなど選択的にリスクを回避しつつ、米国債の配分を再検討すべきだ。この防御的傾向は、低リターンや大きな価格変動、世界的なレート正常化の流れなどの変化に対する投資家への指標となり、予期せぬアクシデント発生への備えにもなる。」

来年中国は春頃景気減速が進行するが、積極的政策により秋冬には復調すると同社は予測。これは中国の景気後退に直面する欧州や多くの新興市場諸国にも関連する。加えて企業利益、FEDの利上げ休止や緩和、米中間の緊張等も引き続き注目だ。

「世界的なマクロ経済の不確実性は顕著で、地政学等からの混沌、技術革新、企業投資等はより現実的になってきている。これらは資産クラス間で高い選択性を持つ必要性を強調し、資産間の分散の増加をもたらす。」と国際資産&ポートフォリオマネージャーのサニー・ンー副社長は語る。

生産性への投資強化はこのサイクルを長くするだけでなく、勝者と敗者が広く分散した環境の中で、既に確立され、危機的なビジネスモデル環境にも貢献する。同社はプライベートや受動的な投資でなく流動性を重視し、資本の最大限活用とポートフォリオ調整のための投資を実践していく。

※1…連邦準備制度

(テキスト:Hilary Kwan、翻訳:Shoko Masuda)

 


PineBridge Investments
ウェブ:www.pinebridge.com

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