目から鱗の中国法律事情 Vol.27「中国・契約法のファイナンス・リース契約」第1回

2019/01/09

 

ファイナンス・リース契約とは

ファイナンス・リース契約とは、ある者(借手、ユーザー)がある機械(リース物件)を使いたいが、購入する資金がない場合などに、その機械を直接購入せず、リース会社にまず購入してもらい、リース会社からリース物件を貸与してもらう代わりに賃料を支払うという契約をいいます。このような契約は、形式上は賃貸借ですが、事実上リース会社から機械の購入資金を借り、購入資金を賃料の形で定期的に返済するという金融と似た構造を取るので、「ファイナンス」リースとよばれます。ファイナンス・リース契約終了時に、リース物件の所有権が借手に移るタイプの契約も行われています。日本には、民法上にファイナンス・リース契約に関する規定が存在せず、賃貸借の規定やそれぞれの契約書を用いてファイナンス・リース契約を行っています。

これに対し、中国の合同法(契約法)にはファイナンス・リース契約に関する規定が存在しています。本シリーズでは、中国の合同法のファイナンス・リース契約について見ていきましょう。

 

 

中国にはなぜリース契約の条文があるのか

まず、日本では規定されていないファイナンス・リース契約がなぜ中国で規定されているのかを考えてみましょう。日本の民法は、明治時代に作られた法律です。明治時代には、ファイナンス・リース契約という複雑な構成を取る契約は誰も考えたことがなく、民法にファイナンス・リース契約は規定されませんでした。その後、民法の財産や契約に関する条文は何回かの改正がされましたが、結局ファイナンス・リース契約は規定されずに現在に至っています。

さらに、民法はトラブルが発生したときのみ使われる法律であり、トラブルが発生しなければ、またはトラブルが発生しても契約者双方が自力で解決したり、自力で解決できるよう契約書などを充実化させておけば特に法律の出番はないわけです。そのため、特に必要がないと判断されているためか、現在まで日本ではファイナンス・リース契約は法律に導入されていませんでした(法律に規定すべきだ、という提言は多くなされています)。

これに対して中国は「社会主義国家で民間人の契約は存在しない」と民法の制定を長い問拒んできました。中国で民法制定への機運が高まったのは、1980年代からです。そしてファイナンス・リース契約を規定した合同法は1999年に制定され、しかも、ヨーロッパ各国の民法を参考にして、世界でどのような民事的問題が起こっているかを考慮して作成されたとされています。

このように中国が世界最新の動向を参考にしたために、合同法にはファイナンス・リース契約が法律上にも規定されているのです。(続く)

 

 


高橋孝治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

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