中国法律コラム43「中国の残業に関する問題」広東盛唐法律事務所

2019/08/21

〜中国の残業に関する問題について〜

今回は、中国における残業に関する問題について、整理しましたので、皆様と情報共有させていただきます。

一、残業に関する法令の規定
《労働法》に定める“業務時間の延長(”いわゆる残業)とは、労働者に法定の業務時間又は企業の定める業務時間を超えて仕事をさせることをいいます。残業は、平日、法定休日(祝祭日)、休日に実施する場合に計算され、1時間単位で計算されます。

1、平日残業
平日8時間を超える業務について、残業を手配することができます。しかし、残業時間は、一般的に“1日につき1時間を超えない特殊な原因”により延長する場合でも、3時間を超えてはならないとされています。また、1ヵ月では36時間を超えてはならないともされています。
平日残業については150%の割増で残業代を支払わなければなりません。但し、下記の状況にある場合の残業は、前述の制限を受けません。
a.自然災害、事故又はその他の原因により、労働者の生命、健康、財産の安全が脅かされ、緊急に処理しなければならない場合。
b.生産設備、交通インフラ、公共施設に故障が商事、生産及び公共の利益に影響をきたし、適時に修理しなければならない場合c.法律、行政法規に定めるその他の状況に該当する場合

2、休日残業
休日残業とは、従業員に休日に仕事をさせることをいいます。従業員に休日に仕事をさせた場合、振替休日を与えるか、又は200%の割増で残業代を支払わなければなりません。

3、法定休日(祝祭日)の残業
法定休日に従業員に仕事をさせた場合、振替休日で対応することはできず、300%の割増で残業代を支払わなければなりません。

二、法律の上限を超えて残業をさせた場合のリスク
1、行政上の責任
使用者が前述の上限を超えて労働者に残業をさせた場合、労働保障監察部門より是正命令がなされ、かつ、権利侵害を受けた労働者1日あたり100~500元の過料を科されるリスクがあります。

2、民事上の責任
労働者が死亡した場合など、死亡する前に大量の残業をさせており、休息が不足していたときは、遺族から過度の残業により死亡することとなったとして、損害賠償を主張されるリスクがあります。実務においては、従業員の遺族が過度の残業をさせられていたこと、十分な休息が取れていなかったことと、死亡との関連性を立証することは困難です。しかし、裁判所から、因果関係を完全には否定できないとして、使用者に一定金額の損害賠償を命じられるリスクがあります。

三、残業時間低減の方法
企業は、残業時間を低減するため、次のような方法を講じることができます。
1、休日残業については、振替休日を手配する。残業時間の低減により、ワーカーの離職率が上昇してしまう場合は、基本給などをUPさせるなどの方法により、ワーカーの収入を維持することなどにより対応する。
2、オートメーション設備を導入し、効率化を高め、ワーカーの人数及び残業時間を低減する。
3、従業員の人数を増やし、一人あたりの残業時間を低減する。

四、まとめ
中国の現行の法令及び司法の実務においては、残業時間が36時間を超えた場合、従業員が死傷したときに、その事故や傷病と残業過多(過労)との因果関係を認めるといったような明らかな規定は存在しません。また、過労死は、中国の労災認定の範疇とはされておりません。
しかし、残業時間が多い労働者が傷病などにより死亡した場合などは、遺族が大勢会社に押しかけ、会社に多額の賠償金を求めるというケースが多く見受けられます。
当職の理解では、製造業の残業時間は一般的に60~80時間/月にコントロールし、かつ、毎週かならず1日の休息を与えれば、労働行政部門により処罰されるリスクは低いと思われます。

以上


ddd広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問

大嶽徳洋  Roy Odake

行政書士
東京商工会議所認定
ビジネス法務エグゼクティブ
Tel:(86)755-8328-3652
E-mail:odake@yamatolaw.com

中国の法律事務所で10年以上の実務経験を有しています。
得意分野は、労働法・会社法・契約法です。
法律関係でお悩みのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。

九州出身、趣味は卓球です。
深圳市で日本人卓球クラブの代表を勤めております。
卓球が好きな方は、ぜひお気軽にお声掛けください。
部活経験者を特に歓迎しています。

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