PPWビジネス通信 × アナシス Vol.25

2020/01/22

M1

人事労務のアナシスによる誌上相談会

「メリハリのある昇給にしたいのですが」
問い:不公平さを感じるので、昇給にもっとメリハリをつけたいのです。どれくらい差をつけるとモチベーションアップになりますか?

黒崎:貢献度が高い人へより報いたい。経営側としては当然の思いだと思います。しかしどれだけ差がつけばモチベートされるかというのは、一概には言えません。ここでは賃金のメリハリを「業績を上げていて今後も期待できる従業員に高い賃金を支払う一方で、あまり貢献しないあるいは今後の期待度が低い従業員には昇給や賞与を抑えて、明確な賃金の差をつけること」と定義します。「やってもやらなくても一緒」を避けるためですね。

 しかしメリハリがあることが有効なときとそうでないケースがあります。例えば「業績が良かった」「会社への貢献度が高い」人材たちは当然差のある賃上げ率を求めるでしょうから、こうした人材には有効でしょう。しかし納得できる高さの賃上げ率ならばいいのですが、結果として転職したときの賃上げ率よりも低くなるケースも多く、実はあまりモチベーションアップには繋がっていない事もあるのです。やる気が上がっても瞬間で終わる可能性もあります。ひとつ言えるのは「評価されている」という有能感や承認欲求を満たすことは出来得ると言うことです。業績は賃金よりも賞与に連動させた方が効果的でしょう。

 また「行動評価の悪い人材」にも有効と思われます。行動・態度の変容を促すことになり得るからです。あるいは自主的に離職を考える要因にもなるでしょう。一方、有効とは思われない人達もいます。外部環境要因等で業績が悪い場合などは賃上げ率の低さでモチベーションが下がり、逆効果となるケースもあります。辞めてもらってもいいケースならば別ですが、賃金は内部格差の妥当性と外部競争優位性の双方で納得を呼ぶものですので、リテンションには大きく影響します。賃金がレンジの天井となっていてそもそも賃上げも期待できない人などは、結果として「何をしても一緒」となってしまいます。普通なら辞めてしまうかも知れませんが、会社にしがみつく人も実際には存在します。賃下げなどの不利益変更や契約の解除は、出来ないわけではありませんが慎重な対応が要求されます。

 「メリハリ」をより有効にするには、過去評価の結果だけでなく現在評価や未来の可能性評価などを含めた市場価値による賃金を検討せざるを得ないのではと思われます。人事評価は原則過去の評価です。ある一定の期間の中での成果(業績や行動)あるいは能力など各社が定めた評価項目によって決められるものです。先述したように賃金は外部競争優位性でも決まってきますが、それは過去評価ではなく現在評価なのです。だからといって市場賃金に合わせるように過去評価を変えることは「逆算評価」となって、評価としての論理が合わなくなります。

 それゆえ、「評価=賃金改定」とならないようなマネジメントをする必要があります。評価の目的には処遇の決定だけでなく、人材育成や目標達成のための日々の軌道修正というものがあるのです。

 その他にも、職務とチームによってはメリハリをつけない方がよいケースもあり、単にメリハリをつければうまくいくというわけではないのです。それでも能力の高い人材・貢献度の高い人材へのリテンションにある程度のメリハリは必要です。組織目的と現状分析の上で導入が必要です。日系企業では、標準の評価を1とすると、最高評価でもその1.5倍から2倍程度の賃上げ率の差となるケースが多いようです。標準が3%なら良くても6%ということです。それでモチベーションはあがるでしょうか。昇格させてもっと給与をあげないとリテンションできないかもしれませんね。

 

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