インタビュー「福八海洋有限公司」荒牧美羽さん

2020/01/22

異例の若さで、香港の代表に!!
不安やハンディもチャンスに変え、
「明太子を福岡から世界に発信!」のモットーを貫く

「鱈卵屋(たららんや)」をご存知だろうか?
2013年、「明太子を福岡から世界に発信!」をモットーに香港へ進出した明太子ブランドだ。
荒牧さんは、その「鱈卵屋」を運営する日本の「株式会社ふくや」に総合職として入社。
そこでキャリアを積み、同社の関連会社である香港の「福八海洋有限公司」へ出向。
女性経営者として約1年間携わった明太子専門レストラン「鱈卵屋」を2019年10月にたたみ、
同年12月より、本業である卸業の更なる強化へ力を注いでいる。
2020年からは、香港のレストランや小売店向けに自社ブランド食品を販売拡大していく予定。
そこで今回は、香港に赴任してからこれまでの苦労や、現在の仕事、また、今後の展望などを伺った。

 

 

Profile荒牧 美羽(あらまき みう)さん
福八海洋有限公司 副総経理
福岡生まれ福岡育ち。大学時代にデンマークへ交換留学を経験した後、大学卒業後の
2017年に、福岡の明太子メーカー「株式会社ふくや」へ入社。半年間の新人研修後、1年間、国内卸部門で県外の小売店向け営業を担当。2年目に海外事業課へ異動となり、20192月に現地駐在員として来港。現地の代表として飲食店の経営と卸営業を行なう。

 

レストラン閉店から、現在のお仕事に至るまでの経緯をお聞かせください。
 レストラン閉店時は、正直、スタッフも驚くほどの大盛況でした。最後の1週間は、開店前から行列ができはじめるほどで、お客様からは、「美味しい明太子料理が食べられなくなってしまう」「やめないで欲しい、悲しい」「もうよその明太子は食べられない」「復活して欲しい」という、嬉しいお声をたくさんいただきました。閉店後も、「どこで鱈卵屋さんの明太子を買えますか?」というお問い合わせをいただくことが多く、11月第2週目の1週間限定で物販品のみ臨時復活営業を行ないました。
現在は、これまでレストランに足を運んでくださった鱈卵屋ファンの皆様のためにも、より身近に鱈卵屋の明太子を感じていただけるよう、小売取扱店舗拡大や、飲食店様への新規導入に力を入れ、今まで以上に営業活動をがんばっています。

Photo01レストランを閉店したことが、撤退に繋がらなかったのはなぜでしょうか?
レストランは、「明太子を世界に」というモットーを実行するための
1つの手段でした。「明太子」という異国の食べ物を受け入れてもらうためには、「食べ方」を知ってもらう必要があり、レストランをオープンしましたが、現在、香港進出当初の6年前と比較すると「明太子」という言葉の認知度は高まり、コンビニや大手飲食チェーン店のメニューにも採用されるようになりました。そこで、レストランをたたみ、卸業に特化した次のフェーズへの展開を決めた次第です。

Photo03初の海外赴任、また、お一人でとのことですが、当時はどのようなお気持ちでしたか?
かなり不安がありましたね。それでも、「行くしかない」「せっかくのチャンスだし」と、その不安を振り切って、駐在員になることを決断しました。香港は、旅行でも来たことがなかったので、「見知らぬ土地で、ゼロからどこまでできるかやってみよう」という気持ちでした。
初めて香港に来たのは出張で、駐在もまだ確定していない時期だったのですが、人の多さとビルの高さに圧倒されました。正直、こんなに都会だとは思っていなかったので、人が多いところが苦手なわたしは、「大丈夫かな~」と少し不安になりました。でも、少し離れると自然が豊かな場所があって、山に行けばトレイルやサイクリングが盛んで、数十分で行ける離島もたくさんありますね。香港島にもたくさんビーチがあり、ボートトリップやマリンスポーツが楽しめるという一面があると知りました。それでも、仕事面での不安が大きかったので、不安と期待と入り混じったような、複雑な気持ちのまま赴任しました。

Photo04香港(海外)ならではの苦悩や成功について、ご自身の経験を踏まえて教えてください。
香港で、香港人と仕事をするというところには悩まされました。よくも悪くも適当で、ストレートな感情でぶつかってきますよね
() 常態化している遅刻や、従業員のストレートな意見にはなかなか慣れることができませんでした。ただ、やはり、どうしても彼らにとってわたしは外国人であって、「香港で商売をさせていただいている身分」なので、彼らの文化や主張も聞き入れようと努力しました。それと同時に、自分(会社)の曲げられない部分はきちんと伝えないといけないという責任感もあったので、そこの塩梅が難しく、特に最初の半年はこれに苦しみました。でも、今は、その経験があるからこそ、徐々にではありますが、彼らの主張の正当性を判断する力がついてきましたし、自分の中でも、本当に大切にしないといけないものは何かが明確になってきているのを感じます。

今後の展望を聞かせてください。
まずは、まだ伸びしろのある香港で、もっと鱈卵屋の認知度を上げていきたいです。香港でも、「明太子」という言葉は浸透してきたものの、実際、明太子とは名ばかりで、とびこやシシャモの卵が使われている現状があります。それでも、本物の明太子を求めているお客様や、本当の日本食を伝えようとしている飲食店様はいらっしゃいますし、「本物を知りたい、食べたい」というニーズはあります。そのニーズに応えられるよう、流通を整え、皆さんに知ってもらえる場を作っていく。そして、将来的には香港から世界へ繋げていきたいと思っています。

香港に赴任して以来、交流が増え、プライベートも充実しているようですね。
香港に来てすぐにバスケ部に出会えたのはよかったですね。元々体を動かすのが好きなので、「何かスポーツをしたいな」と思っていたときに、仕事中の雑談がきっかけで誘っていただき、参加することになりました。バスケは初心者だったのですが、皆さんいい人で、トラベリングばかりするわたしを優しく受け入れてくれました
() 週に1回でも、定期的に体を動かせる時間が作れたのは本当によかったです。バスケ部でできた交友関係のおかげで、いろんな香港の美味しいレストランも知れましたし、香港歴が長い方からは、香港の楽しみ方を教わりました。練習後の飲み会で、「鱈卵屋へ行こうか!」と言ってくれて、みんながよくレストランに足を運んでくれたのは、本当に嬉しかったです。

最後に、香港に住む同年代の方々にメッセージをお願いします。
わたしは
1994年生まれで、今年25歳です。香港に来てから、この年齢をハンディキャップだと感じることもありました。この年で駐在される方も少ないので、仕事をする前から年齢と性別で、「能力がない」と思われてしまい、対等に話をする機会を与えられず、苦しんだこともありました。しかし、同世代の人が少ないからこそ、世代を超えた関わりを持てる絶好のチャンスでもありました。英語を習得するために、いやでも英語を使う環境に身を置く留学のように、人生の経験を積むために、世代の違う人たちとたくさん関わる経験ができる環境なのだと思います。その分、辛いこともありますが、いろんな人と関わっていろんな話を聞くことや、その人脈を大切にすることが自分の糧になるのかなと思います。

 


 

Photo02福八海洋有限公司
住所:14/F., Circle Plaza, 499 Hennessy Rd., CWB
電話:(852)2250-7117
フェイスブック:鱈卵屋(Hong Kong)

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