ビジネスの翼　第5回 - ビジネス投稿

「前例にとらわれず、大胆にチャレンジする」
日本にフリマアプリを根付かせ、創業7年で売り上げ高500億円を超える企業へ成長したメルカリに33歳で参画し、2017年には代表取締役に就任した小泉文明氏。2019年には鹿島アントラーズFCの代表取締役社長にも就任。前例にとらわれず新しい市場を作り上げるそのアイデアにウィングファットインターナショナル中込直樹が迫る。

中込 直樹：ボーダレス化する市場の中でメルカリの社員も40カ国から集まっています。この多国籍な社員の能力を最大に引き出すための社内環境作りを教えてください。
小泉氏：私たちは難しいミッションを達成するためにグローバルに展開していく必要があります。社内ミーティングでは1人でも外国人スタッフがいたら、全て英語で行なう。スラッグも日本語、英語がやり取りされていますが、それを専門チームが翻訳し、全社員に同じ量の情報を与えるようにしています。異文化コミュニケーションでは皆でインドのボリウッドムービーを観に行ったり、ハラール料理を食べに行く。そういう体験を通じて多国籍な社員のバックグランドの理解を深めています。

中込 直樹：スマホ決済アプリのメルペイの利用者も500万人を突破し、ドコモとの業務提携などで利便性が高まっていますね。
小泉氏：大手の店舗では約200万箇所までメルペイが使えるようになりました。今後は地方にも加盟店を広げ、コンビニなど普段使いできる店舗を増やしていくのが課題です。メルペイとメルカリの両者の間の取引を循環させて相互利用性を高めていくことも必要ですね。

中込 直樹：2017年には小泉さんが2か月の育児休暇を取られたのも大きな話題となりました。
小泉氏：ベンチャー企業はトップに権限が集中しがちですが、私は育児休暇取得決定から休暇に入るまでの数カ月で他の社員への権限移譲を行ないました。わが社では男性社員も80％が平均2か月の育児休暇を取得します。これからはますます優秀な人材の取り合いになってきます。会社が上で社員が下という従来の関係から、フラットなパートナーとして社員のキャリアプランやライフプランに寄り添える企業が選ばれていくでしょうね。

中込 直樹：2019年7月に鹿島アントラーズFC代表取締役社長に就任され、新しいシーズンも始まりました。
小泉氏：今年は新しい監督が就任し攻撃的で勝ちにいけるチームに成長させ、タイトルも獲りにいきたいですね。現在はコロナウィルスの影響で試合も延期されてますが、まずはきっちり安全に運営できるようになることを第一に考えています。

中込 直樹：鹿島アントラーズはサッカーチームですが、街のアイコンでもあります。
小泉氏：鹿島アントラーズがスポーツを通じて街に心の豊さを届け、もう一つのハブとしてメルカリが積極的にテクノロジーを導入し、渋滞、子育て、ヘルスケアなど地域の課題を解消していく。街の競争力も上がり、訪れる人も増えて経済も豊かになり、住み心地が良い。そういうコミュニティができれば良いと思っています。

中込 直樹：小泉さんは山梨県のご出身で駿台甲府中学校の第1期生ですが、学生時代の想い出を教えてください。
小泉氏：新設された中学校の第1期生ということで学校も1人に1台パソコンを与えてグラフィックを学ばせ、ゲーム作りするなど実験的な試みをしてくれました。自由な環境でやりたいことを学ぶことができ、それが今の前例にとらわない旺盛な好奇心につながってます。

中込 直樹：インバウンドの隆盛で山梨県にも多くの観光客が訪れますが十分に魅力を伝えきれてないと思います。小泉さんなら山梨をどうPRしますか。
小泉氏：山梨と言えば、富士山を観て温泉、という定番ニーズもあります。しかしこれからはもっと体験型の観光をPRしていくべきでしょう。例えば、キャンプや名産の桃でスイーツを作る。ワインで有名な明野でワイン作り体験をしたり搾りたてのグレープジュースを味わってもらうなど、個人客に付加価値ある旅をアピールしたいですね。

中込 直樹：海外の読者に、小泉さんからのメッセージをいただけますでしょうか。
小泉氏：皆さんはすでに海外に飛び出し自分で変化を起こし、人より一歩先に進んでいて素晴らしい。私はいつも明日死んでも後悔しない人生を歩もうと意識してます。皆さんも10年後を考えずに、今の自分を信じてやりたいことに一直線に行動する。それで楽しかったと思える人生が一番じゃないでしょうか。

小泉 文明（こいずみ ふみあき）
（株式会社メルカリ取締役会長、株式会社鹿島アントラーズFC代表取締役社長）
山梨県出身。
2003年、早稲田大学卒業後、大和証券SMBC株式会社（現大和証券株式会社）入社。投資銀行本部にて主にインターネット企業の株式上場（IPO）支援を担当し、ミクシィやDeNAなど数多くのIPOを実現させる。
2007年、株式会社ミクシィ入社。社長室長、経営管理本部長を歴任し、2008年に取締役執行役員CFOに就任。
2012年、同社取締役を退任し、アカツキ、フリークアウト、ラクスル、trippiece等の社外取締役・監査役などスタートアップ企業の経営を支援。
2013年、株式会社メルカリに入社し、2014年に取締役就任。
2017年に取締役社長兼COOに、また2019年より取締役会長に就任。
2019年8月より株式会社鹿島アントラーズFCの代表取締役社長に就任。

中込 直樹（なかごみなおき）
Wing Fat International Creative Ltd（ウィングファット・インターナショナル）代表取締役。製造拠点（3ヵ国4工場）を中心にキャラクターライセンスを使用したマーケティング、企画製造を手掛ける傍ら、プロサッカー選手・本田 圭祐氏とタイアップ事業等、多方面で活躍。山梨県南アルプス市出身。