教育と子育て応援特集1・香港・広東の教育事情

2021/06/23

香港・広東の教育事情を徹底解剖

学校や習い事はどこに通わせようか、そもそも香港にはどんな学校や習い事があるのだろうかとお悩み中の方も多いのではないだろうか。そんな子育て奮闘中のママさんパパさんに向けて、今回は気になる子供の教育事情を特集する。学校や習い事、タメになる教育機関、実際に香港の学校に通わせている親たちの本音など、香港の教育環境を一挙ご紹介!

学校に通わせるなら大きく分けて3タイプ

日本人が香港で子供を就学させるなら、選択肢は大きく分けて3つある。①日本人学校、②英語のインターナショナル校、③ローカル校だ。日本人向けの学校は、小・中学校のほか、幼稚園や就園前のプレイスクールもある。9月開始のほかの学校と比べ、香港であっても日本人向け学校のほとんどは4月スタート。最近では春休み期間なども日本に合わせて長くとる学校が多く、日本と変わらない就学スタイルのため帰国予定のある家庭の多くが日本人学校へ通わせている。また日本人学校小学部大埔校には国際学級が併設されており、オール英語で日本人校とは違った独自カリキュラムの授業が受けられる。

日本人学校以外のインター校は、イギリス系、アメリカ系、カナダ系、オーストラリア系など多数あり、ネイティブのみが通える学校だけでなく、ESLと呼ばれる英語を母語としない生徒のための補修クラスを持つ学校もあり、将来海外へ行かせたいと考える香港人夫婦の子供も多く通う。日本人学校には高校がないため、小中は日本人学校に通い、高校はインター校という日本人生徒も少なくない。

ローカル校はレベルも様々で、小学校からエリートクラスを持つ学校もある。基本的に公立校は授業料が不要だが、公立の場合は居住エリアで学校区域が決まるので、わざわざ有名校のエリアに引っ越す人も。また中国本土から国境を越えて毎日香港の学校に通わせている熱心な親も多い。中学校受験では、小学生時の成績はもちろん、課外活動やボランティアへの参加なども影響する。小学校でも留年することがあるローカル校では、大量の宿題が出るだけでなく、授業についていくためにほとんどの子供が学習塾へ通う。年に数回行われる試験前には親が仕事を休んで勉強をみるという話もしばしば聞かれる。P.3~4の座談会記事でもそれぞれの小学校に通わせているママさんの本音を紹介しているのでご参考に。

ローカル校のお受験戦争はいつから?

学歴が重要視される香港において、受験戦争はいつからスタートするのだろうか。答えは幼稚園選びから。ローカルの名門小学校は幼稚園のレベルや習い事の数によっても入学できるかが決まり、ひいてはその後の就学、就職にまで影響する。そのため出産前から幼稚園や習い事探しを始める親も少なくない。

習い事も充実の香港

このように受験大国の香港なので、習い事も充実している。生後すぐから通えるプレイスクールや体操教室、ネイティブが教える語学教室に、プロが教える音楽教室や絵画教室、バレエスクールなど多種多様で、週7で習い事に通う子供も珍しくない。日本人向けの教室も数多く、学習教室の中には日本で受験を考える子供向けに日本式の受験対策指導を行っている進学塾もある。

 


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epis Education Centre教室長に聞いた通学・受験事情

「通学事情」
 香港には2つの日本人学校(香港校と大埔校)があります。香港校は2018年度より小学部・中学部が統合されました。近年は、香港各地のインターナショナルスクール(以下、国際校)に通学する小・中学生の増加が顕著です。国際校は、アメリカ、イギリス、カナダ等の様々な国の教育制度に基づいて教育が行われています。現地校も含め、香港では小・中学生の教育に関しては、多様な選択肢が用意されていると言えます。しかしながら、上海やシンガポール等とは異なり日本人の高校が存在しない為、日本の高校に進学しない場合は必然的に国際校や現地校に通学することになります。

日本人学校
海外に住む日本人の子供に対して日本国内と同等の教育を行う機関
 全体的に日本に帰国することを前提とした子どもが多く通学しており、海外で生活しながらも日本の学習指導要領にならった授業を漏れなく受けられる利点があります。学期の区切りも日本と変わらず、アジア圏だと、上海、台湾、シンガポール、バンコク、ハノイ、ジャカルタ、クアラルンプールにも日本人学校がある為、親御さんが転勤となった場合も転籍が比較的スムーズかと思われます。
 また、香港校では2016年4月より「グローバルクラス」が新設されました。4年生から日本国内の学習指導要領に則ったカリキュラムを日本語と英語のバイリンガルで受けることができます。20名の定員が設けられており、非常に人気があるクラスです。

国際校(インターナショナルスクール)
主に外国人の子供を対象とする教育機関
 国際都市・香港ならではの利点で多くの国際校が存在します。基本的に使用言語は英語で、主に外国人の子供が対象ですが、香港人やダブルの子供も多く、語学力はもちろん、様々な人種や考え方の中で生活する為、柔軟な思考や対応力が身に付くと思います。答えありきではない取り組みも多く、子供に自発的に何かをさせたり、考えさせる方針が際立ちます。
 入学に際して英語力が必須ですが、学校によってその基準も異なるので、詳しくは各学校に問い合わせてみるのが良いでしょう。

ローカルスクール
その国・地域の教育制度に基づいて教育を行う機関
 広東語はもちろん、英語、普通話も同じように勉強する為、多言語習得が可能です。先生との会話は主に広東語か英語で行われます。ローカルスクールと言えども多国籍の生徒が集まるので、育った環境や考え方もまちまちな為、いじめ等の問題は少ないように思います。また、何と言っても小学校受験から競争が熾烈なので、学習量や競争力といった点では他と比較して群を抜いているかと思います。小さいうちから明確なレールがイメージできるのも利点ではないでしょうか。その半面、常に膨大な宿題と頻繁に行われる大小のテスト準備に追われ、それを支える保護者の精神的な負担は少なくありません。

「受験事情」
海外に滞在中、もしくは1年以上の滞在後に帰国して2年以内といった帰国生入試の基準を設けているところが多い
 近年、帰国生入試を実施する学校が増加しており、多感な時期を海外で生活した子供の経験を大きなアドバンテージとして捉える傾向が顕著です。帰国生入試の基準としては、受験時に海外に滞在中もしくは1年以上の滞在後に日本に帰国して2年以内が多いです。しかしながら、条件は学校によっても変動する為、香港や上海等の現地で開催される各校の説明会や学校に直接問い合わせてみるのが良いでしょう。
 また、帰国生入試は、先述した条件をみたす子供に与えらる特別機会なので、仮に帰国生入試で上手くいかなかったとしても、一般入試で再挑戦できるというメリットがあります。
 中学受験の場合、帰国生入試と言っても、その実態は様々で、一般入試と同じ問題を課される場合、国語と算数の試験だけを実施する場合、英語力重視で試験を行う場合等に大別され、子供の教育履歴に合わせて学校を選択していくことが可能です。
 高校受験は、私立高校だけでなく、国立高校や公立高校も帰国生入試を実施しているところもあります。また、香港やシンガポール現地で入試を実施する私立高校の存在が、海外からの受験をより容易なものにしてくれています。
 多くの大学も帰国生入試を採用しています。大学によって制度の内容は様々ですが、国際校での成績、共通テストのスコア、そして小論文や学力試験、面接等を総合して合否判定が行われます。一方で、欧米の名門大学への進学の道も開かれており、高校生たちにとっては将来の選択肢を広げていくことも可能です。

 最後になりますが、各々の学校に通っていても、多様な文化と価値観の中で育つ子供たちは「地球には様々な文化や価値観を持った人たちが一緒に暮らしている」ということを日常的に肌で感じながら成長しています。こうした子供たちが、日本のみならず世界の政治・経済・文化等の各分野でリーダーシップを発揮し、様々な問題を解決していけるのではないかと期待しています。こうしたダイヤモンドの原石のような子供たちを大切に指導していくことが、私たちエピスの使命だと考えています。

 

epis仲田敬之(なかた ひろゆき)教室長
epis Education Centre 香港教室 教室長。2010年に来港。2015年5月に中国・蘇州教室の立ち上げに参画し、2017年より現役職。得意科目は英語。趣味は音楽鑑賞(ジャズメイン)、ランニング、ハイキング。

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香港・深圳をはじめとする海外8拠点の詳細はこちら www.epis-edu.com


 

海外の教育サポート!香港・広州日本人学校概要

香港日本人学校は1966年に、日本国政府の海外子女教育施策に基づき、香港在住邦人の総意によって設置された教育施設。現在47年の歴史を持ちながら、香港日本人学校を通う生徒がたくさんいて世界の日本人学校の中でも有数の規模だ。各校とも毎年体験入学を行っている。音楽会、スポーツ大会も開催。日本らしい学校生活が体験できる。

 

香港日本人学校 小学部&中学部

香港日本人学校 小学部

校舎は香港島のハッピーバレーに位置する。現在300名ほどの子供が通っている。2012年夏より一年以上の期間をかけて大規模な改装工事を施し、2013年9月2日リニューアルオープンした。5階建ての校舎内には、パソコン教室や立派な書院造の和室、機能的なレクチャールームなどがあり、大変充実している。

校長が毎日更新している、香港校校長室ブログ「えがおひろば」では子供たちの生き生きとした学校生活をシェア。気になる方はぜひチェック。

中学部は2018年3月より北角から、ハッピーバレーの小学部の敷地内へと移転した。

中学部は1967年に開設され、1982年に現在の香港島の緑豊かなブレーマーヒル(宝馬山)の高台にビクトリアハーバーを見渡せる北角校舎が建設されたが、現在はハッピーバレーへ移転となっている。最新の設備を備え、日本と変わらない教育が受けられる体制が整っているため、中学部を卒業した後に帰国して日本の高校受験を受けても困ることがない。

 

住所:157 Blue Pool Rd., Happy Valley, Hong Kong Island
電話:小学部事務局(852)2574-5476 中学部事務局 (852)2574-5479
ウェブ:http://www.hkjs.edu.hk/~hkjspri/index.html
香港校校長室ブログ「えがおひろば」:http://dorakuri2014.blog.fc2.com

 

 

香港日本人学校 小学部 大埔校

香港日本人学校 小学部 大埔校

香港校よりも200人近く多い子供が通っている大埔校は1997年開校。香港島在住の児童が香港校に通学する一方、大埔校の生徒たちは九龍・新界に住んでいる児童が多い。

授業内容と学校設備は香港校とほぼ一緒だが、新界の大自然を感じる広々とした土地の便利さで運動場まで持つところはここの魅力だ。前述通り国際バカロレアPYP認定プログラムのインターナショナル国際学級も設けており、通っている日本人児童だけでなく、国際色溢れるカリキュラムで授業も行われており、学校内で国際交流ができるという環境になる。

住所:4663 Tai Po Rd., Tai Po
電話: (852)2834-3531
ウェブ:http://www.jis.edu.hk/~jisjs/index.html

 

 

広州日本人学校

広州日本人学校

広州で仕事をする日本人の子女に日本と同等の教育の場を確保することを目的に設立された広州日本人学校、前身は補習授業校だった。1995年に正式学校に生まれ変わったが、近年人気駐在先の1つとして知られる広州にいる日本人児童も家族赴任で増えているため、2003年に現在の広州科学城に独立した校舎へ移転した。
「自ら学び、個性豊かに国際社会に生きる児童・生徒の育成」という教育目標を持つ教師たちが日々生徒たちが「明日も学校へ行きたい」と思えるように努めている。

住所:広州市高新技術産業開発区風信路10号
電話:(86)20-6139-7023
ウェブ:http://jsgcn.com

 


 

香港日本人学校中学部

生徒さんにミニインタビュー生徒会長を務める佐々木裕平君

中学部で生徒会長を務める佐々木裕平君(3年)に、海外生活、学校生活について取材させていただいた。

■香港に住んで何年になりますか?
今年で3年目です。香港の前は台北に2年半住んでいました。
■海外は5年目ということですね。香港で不便だなと感じることや、嫌いな点は?
台北の日本人学校で習った北京語が少し出来るので、あまり不自由は感じません。ただ、香港と台湾とを比べると、台湾の人の方が親切で優しかったなと思います。でも、香港の人たちの元気なところも大好きです。
■香港で好きなこと、楽しいなと思うことは?
父の影響で、山登りやトレイルにハマっています。香港は意外に自然が多いので、夜明け前に出発して山の上で迎える朝の景色は最高です!友達と街に遊びに行く時は、英語や広東語などが話せる友達と行き、楽しんでいます。
■学校生活で困ったり、嫌だなと思うことは?
特にありません。強いてあげれば、香港日本人中学は、校舎がタテに長いので、階段が多くてちょっと疲れるところかな(笑)。
■勉強、受験に対する不安は?
特に感じません。来春高校進学のため日本に帰ります。
■学校生活で楽しいこと、いいなと思うことは?
生徒会で「七夕祭」や「クリスマス会」などの行事を企画することが楽しいです。また、先生方は日本全国からいらっしゃっているので、各都道府県の話や、受験情報などを聞けるのが、いいと思います。
■将来は?
将来は、海外生活の経験を生かし、英語や中国語などを使って、様々な国の人たちと仕事をしてみたいです。

台北や香港で、異なる言語や文化に触れたことで、そういう思を抱くようになったと語る佐々木君。海外経験を生かして広い視野を持った若い人たちが増えていくことは楽しみな限りだ。

 

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