ヴィクトリア ハーバー特集13・港で頑張る日系企業にインタビュー

2015/03/25

港で頑張る日系企業にインタビュー

物流会社の上組は、湾岸から世界に広がるネットワークと最新の輸送技術を駆使して、国際物流サービスを提供している。今回の特集では、ヴィクトリアハーバーを拠点に事業を展開する上組(香港)の董事長 中村雅洋さんと総経理 呉座谷高志さんにお話を伺った。

2ドーム CARGO#2

大型貨物の輸送で特出

上組(香港)では、主に精密機器メーカーの部品や製品の輸送を取り扱っている。日本からコンテナ船で運ばれてきた部品等を、ヴィクトリアハーバーでコンテナごと積み替えて中国の工場へ陸送。その部品を使って製造された製品を海外に運ぶ事業などを手がける。

また、同社は建設機械や生産設備など大型貨物の輸送を強みとしている。コンテナ船ではなく在来船で運ばれてきた大型貨物は、ヴィクトリアハーバー沖で、「沖取り」と呼ばれる作業により、クレーンを使って、内海などを通ることができる艀(はけ:内航用輸送船)に移されて大陸などへ送られる。沖取りでは、ワイヤーなどで積荷を結束するラッシングなど特殊技術が求められる。最近、同社は大型貨物として、一枚板のプラスチック製水槽を香港経由で日本からマカオまで輸送した。沖取りは日本人技術者が指導に当たり、細心の注意のもと行なわれた。

同社がこれまで日本などから輸送してきた大型貨物には、沙田競馬場に世界で初めて導入された開閉式の屋根、オーシャンパークの恐竜、青馬大橋の器材、海底に敷設したガス管、海を埋め立てて作った九龍駅の建設工事で地盤を固めるために使われた鋼矢板(シートパイル)などがある。街づくりのための部材や公園のシンボルもヴィクトリアハーバーを玄関に香港へ運ばれてきた。3ドーム 台船上

時代とともに貨物の種類も変化

上組(香港)が香港で現地法人を設立し本格的に事業を開始したのは1985年。時代とともに貨物の種類も変化してきたという。1990年代前半は香港のインフラ工事向け大型設備等の引き合いが多かった。1990年代後半は、中国へ進出する日系工場の生産設備を香港経由で深センや広州へ輸送する貨物の需要が増加。2000年に入ると、精密機器の部品や製品を輸送するコンテナ需要が増えた。「今は大型貨物が減少し、コンテナ貨物が主流になっています。1990年代は大型貨物の積み替え作業の立ち合いに頻繁に行っていましたが、今は少なくなりました」と中村さん。時代の流れとともに大型貨物を取り扱う物流会社も減っており、同社は貴重な存在となっている。

物流を通して、消費や経済の動向をキャッチしているという中村さんたち。現在は、香港や中国に日本産の食材や雑貨を輸送したいという問い合わせが増えているという。

1ドーム 本船上

上海、深センの港が台頭、香港は…?

港としての香港の魅力は「シンガポールと同様、関税などがかからない自由貿易地域なので、モノの出し入れがしやすいこと」だそう。コンテナの取扱量では、1990年代~2000年代前半までは、香港とシンガポールが1位、2位を争ってきた。しかし、日本湾岸協会の資料で世界の港のコンテナ取扱量の推移をみると、2010年以降は上海がトップに、深センが4位にランクイン。「中国の港が力をつけてきており、船のルートも多様化しています。最新のデータでは深センが3位で、香港が4位になっています」と呉座谷さん。ヴィクトリアハーバー、危うし!?

とはいえ、社会情勢などの影響を受けることはあるものの、絶対量はそれほど落ち込んではおらず、積み替えのため香港経由で中国へ行く船も多いという。中村さんは今後の事業の展開について、「香港で東南アジアをにらんで商売をしていこうと考えています。たとえば、東南アジアの工場で生産された部品を中国の工場へ持っていく、また逆に中国で生産されたモノを香港に集約して東南アジアへ輸送していくことを計画しています」と力強く語る。ここを拠点に頑張る企業がある限り、ヴィクトリアハーバーは世界トップクラスの港としての地位を維持し続けることだろう。

上組(香港)有限公司

 

上組(香港)の董事長の中村雅洋さん(右)と総経理の呉座谷高志さん。中村さんは香港在住20年で「香港は第二の故郷」と語る。呉座谷さんは2回目の香港赴任で香港生活は通算5年。香港で食べるのもやっぱり和食だそう。

 

上組(香港)有限公司
住所:Unit 2701, 27/F., Tower 2, Ever Gain Plaza, 88 Container Port Rd., Kwai Chung
電話:(852)2827-9063
ウェブ:http://www.kamigumi.co.jp

 

続きアイコン

Pocket
LINEで送る