広東料理特集1・広州の名店シェフにインタビュー

2015/10/13

〝広東料理最前線!先端を行く高級店の矜持

広州の広東料理といえば老舗店が有名だが、時代とともに新たな趣向を凝らした高級店が登場している。
今回は、国際都市・広州で進化し続ける広東料理の今について料理人にインタビュー。
そこから見えてきたのは、料理に対する深い思い入れと飽くなき探究がもたらした”新鮮”な広東料理だった。

“新感覚”の広東料理とは?より繊細に、より健康に、より科学的に
【空中一号】料理人が挑む広東料理の最前線!
知る人ぞ知る高級広東料理レストラン「空中一号」。ここでしか味わえない最新の広東料理が多くのグルメを唸らせてきた。伝統的な繊細な味はもちろん、珠江のパノラマにも負けない料理の見せ方にもこだわる。料理に新たな命を吹き込む料理人が広東料理の最前線を明かしてくれた!
知る人ぞ知る高級広東料理レストラン「空中一号」。ここでしか味わえない最新の広東料理が多くのグルメを唸らせてきた。伝統的な繊細な味はもちろん、珠江のパノラマにも負けない料理の見せ方にもこだわる。料理に新たな命を吹き込む料理人が広東料理の最前線を明かしてくれた!

料理長プロフィール
黄志剛さん:広州人。
26年の料理人経験をもつ。「たとえ同じ食材でも調理時間、温度などの変化で違うものになる。心を込めることでこの過程を楽しめるようになる。だから料理の世界は味わい深い」と話す。

いわゆる「粤菜」(広東料理)とはどんな料理ですか?
粤菜は潮汕料理、客家料理と広州料理(広府菜)の総称で、(比較的に高級な広東料理の場合)原材料は海産物や燕の巣、アワビ、フカヒレなどが使われます。スープには鶏骨草、木棉花(※)など生薬にもなる植物が使われます。粤菜の食材選びでは季節感がたいへん重要視されていて、広東の気候と広東人の生活習慣をそのまま感じ取ることができます。
※鶏骨草:マメ科のつる性木本シロトウアズキの根つきの全草。民間薬。木棉花:キワタはアオイ科キワタ族の落葉高木。

粤菜のトレンドをどのように捉えていますか?
ディテールへのさらなるこだわり、欧米ナイズされた料理へと向かっています。また、健康志向がますます高まりを見せています。孔子が「食不厭精  膾不厭細」(※)と述べたように、広東料理は繊細さにこだわり続けてきました。また、広東省は他の地域との交流が多いため、食文化の上でも欧米の影響を少なからず受けてきました。欧米ナイズとは言っても、本来の味を変えるという意味ではなく、主に料理の見せ方や盛り付け技法を取り入れるという意味においてのことです。粤菜はもともと健康を重視する料理ですが、より健康への関心が高くなっています。
※飯は精白してあるほど、膾は細かいほどよい。料理に対する追求の精神を述べたもので、食は腹を満たし命をつなぐためだけのものではなく、口と目を十分に楽しませるものでもある。ゆえに新鮮かつ上等な食材を使用し、きめ細やかに料理するのが望ましい。
無花果燉蓮子
「無花果燉蓮子」イチジクとハスの実は肺や呼吸器に効く

薏米茨実香芋
「薏米茨実香芋」香芋が今ちょうど旬、美肌効果も抜群!

車厘子鵝肝
「車厘子鵝肝」見た目はチェリーだが実はゼリー、中にはフォアグラが!

”新感覚“の粤菜と伝統的な粤菜にはどのような違いがありますか?
伝統的な粤菜は火加減がとても重要で、高温での調理が多くなります。たとえば”䙹“(しっかりふたをし、とろ火で長時間煮る調理法)や”炸“(熱い油で揚げる調理法)などです。最近では低温でゆっくり調理することで、食材本来の味や食感をできる限り残す調理法がより好まれるようになっています。また最新の「分子ガストロノミー」(※)の概念も新感覚の粤菜では取り入れられています。伝統的な調理技法を覆すような手法や料理の見せ方を採用する新たな試みもあります。
※「分子美食学」ともいう。調理を物理的、科学的に解析した科学的学問分野。具体的には、おいしい料理を分子レベルで調べ、その結果分
かった原理を使っておいしい料理を作ること。

望江廳
空中一号(Sky No.1)空中一号(Sky No.1)
住所:広州市天河区珠江新城華夏路1号信合大厦28~31階
電話:(86)20-3785-7111
時間:11:00~15:00; 17:00~22:00(月~金)、10:00~15:00;  17:00~22:00(土日祝日)
アクセス:地下鉄3号線、5号線「珠江新城」駅B1出口、徒歩300m
※パノラマ席・個室は事前予約をお勧めします。

喧騒やキラキラしたものは一切ない、シンプルという最高の贅沢に癒やされる広東料理
【Jiang by Chef Fei】
多くの広東料理レストランは”足し算“的な豪華絢爛スタイルを好むが、「マンダリン・オリエンタル・広州」(広州文華東方酒店)の「Jiang by Chef Fei」はあえてその真逆を行く。枯山水に見られるような、洗練された”引き算の美学“を推賞する。
1973年に広東省潮州市に生まれ、16歳で料理の道に入った。数々のレストランで修行を積み広東料理を極めた。「料理はテクニックだけではない、心が大切。料理とは料理人が心を砕くことでできた苦労の結晶だ」と語る。
黄景輝さん
黄景輝さんはこれまで「中国飯店業十大名厨」など数々の栄誉に輝いてきた

ロブスター
ロブスター

松茸の功夫湯
松茸の功夫湯

シェフ・フェイは海の幸を使った料理を得意とする。食材選びにもこだわりがあり、「陳年花雕蒸龍蝦」で使うイセエビは、柔らかくてプリプリの肉質と甘味が特徴のパラセル諸島産。紹興酒「陳年花雕20 年」をベースに地鶏卵、エビ汁を加えて煮込む。
医食同源の観点で作られる「功夫湯」では、今が旬の雲南産松茸を使用。ガン予防などの薬膳効果もある松茸、コラーゲン豊富な鰾(魚の浮袋、花囷)、水鶏を素焼きの急須「紫砂壺」で調理する。
他の高級店で見られるような喧騒やきらびやかさをアピールする雰囲気とはかけ離れている。しとやかで控えめ――シンプルという最高の贅沢の中で、身体をいたわるやさしい広東料理を堪能できる。

Jiang by Chef FeiJiang by Chef Fei
住 所:広州市天河区天河路389号広州文華東方酒店3階
電話:(86)20-3808-8885
時間:10:00~14:30、11:30~14:30、17:30~22:00

高級 飲茶レストラン
白天鵝賓館宏図府宴会庁
白天鵝賓館宏図府宴会庁
住所:広州市䠵湾区沙面大街1号白天鵝賓館2階
電話:(86)20-8188-6968
アクセス:地下鉄6号線「文化公園」駅E出口

陶陶居
陶陶居
住所:広州市䠵湾区第十甫路20号
電話:(86)20-8188-6968
アクセス:地下鉄1号線「長壽路」駅A出口

愉粤軒
愉粤軒
住所:広州市天河区珠江西路5号 広州国際金融中心四季酒店71階
電話:(86)20-8883-3888
アクセス:地下鉄3号線「珠江新城」駅B1出口

半島名軒
半島名軒
住所:広州市天河区天河北路189号 中国市長大厦2~3階
電話:(86)20-8755-5928
アクセス:地下鉄3号線「林和西」駅A出口

海航威斯汀紅棉中餐庁
海航威斯汀紅棉中餐庁
住所:広州市天河区林和中路6号 海航威斯汀酒店4階
電話:(86)20-2886-6868
アクセス:地下鉄3号線「林和西」A出口

徐博館養生私房菜
「医食同源」の最先端を体感!
”広東料理の博物館”で考える”食”

珠江新城南部・広東省博物館の側に”飲食・養生“(食と養生)をテーマにした一軒の広東料理店・「徐博館」がある。
「徐博館」と呼ばれるのは、創設者の広州中医薬大学養生博士研究員(ポスドク)・徐峰さんに因むもので、ここには広州中医薬大学博士研究員の研究・開発および実験の拠点もあり、まさに”広東料理の博物館“といったところだ。
珠江の畔に佇む同店は、「中和広場」7階にあり、広州のシンボル―琶洲、海心沙、広州タワー、博物館、オペラハウスを見渡すことができる。店内は、採光を考えすべて床面まであるガラス窓。80席のテーブルを擁する珠江パノラマホール、さらに18室のVIPルームの内12室は、珠江の全景を望めるパノラマ室となっている。
料理長の馮澤鋒さん   徐博館養生私房菜
料理長の馮澤鋒さん

「春苗夏花、秋果冬根」(春は芽夏は花、秋は実冬は根)、これは「徐博館料理研究開発所」が旨とする重要な原則で、博士研究員チームは南方の二十四節気の特徴に基づき、植物の本草、果実、根茎を使い、各地の天然食材を添え、それぞれの持つ薬効に基づいて制作部門と共同で身体の体質を調整し改善できる料理を研究開発している。
徐博館の料理は、「贵精不贵多」(量より質)の原則で、料理人チームは”出品是作品“(料理は作品)とみなし、オリジナル料理「八大名菜」と「博士養生茶」を人の命の質と長さを引き伸ばす”鎮店之宝“(店の宝)としている。八大名菜とは「咸檸檬灼鮮鮑」(塩レモンと焼きアワビ88元/人)、「日本竹塩焼和牛膜」(塩竹和牛ステーキ280元/人)、「松茸蓮藕酥」(松茸とハスのパイ包み10元/人)、「柚子汁北海道刺参」(柚子汁北海道ナマコ280元/人)、「脆烧星斑扒」(星斑魚のパリパリ焼き128元/人)、「金蘭花汁燴龍趸皮」(胡蝶蘭ソース龍趸魚皮煮280元/人)、「金山黒金剛牛黄燉螺頭」(180元/人)、龍蝦湯稲庭面(伊勢海老スープ稲庭面38元/人)。
咸檸檬灼鮮鮑 塩レモンと焼きアワビ 脆烧星斑扒 星斑魚のパリパリ焼き 勃垦地黄牛肝

「徐博館は実のところ養生を素材とした博物館と言えます。」料理長の馮さんは語る。「わたしたちは、中国大陸で初のミシュランの星獲得を目標に努力しています。紹介したのは全て私たち料理人が心を込めて研究・開発した至極の一品たちです」。馮さんはさらに笑顔でこう続ける。「ミシュランの調査員はわたしたちが招いてやってくるわけではないので一定レベルの料理をいつでも提供することができれば、いつか彼らが訪れてくれると信じています」。
広東料理の真髄とも言える「医食同源」に正面から向き合う徐博館は、これからの広東料理の先端を行く料理店なのかもしれない。身体に良いものを無理なく、美味しく摂り入れるこの地のスピリットを体現する同店で心も身体も、そしてお腹も満たしてみてはいかがだろうか。

徐博館養生私房菜
住所:広州市天河区珠江新城 臨江大道57号中和広場7階
電話:(86)20-3807-8889
時間:11:00~15:00、17:00~22:00

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