ECO特集~人と環境について考える~ Part 6

2018/10/10

香港でビーチクリーン活動を行なう「The First Penguins」代表、松岡氏に聞いた環境面から見た、香港の現状と改善点とは?

 

Profile

松岡 智子(まつおか さとこ)さん
豪州モナッシュ大学教育学部GradDip修了後、現地の小中高にて教員を務め、2015年に来港。2016年8月「The First Penguins」を発足。以来月に一度のペースで香港のビーチクリーンを主催。環境家ではない立場を守りつつ、香港の他環境グループや香港政府と積極的に情報交換を行なっている。また、日本のNPOと連携しビーチクリーンツアーを共催。

 

 

「The First Penguins」を立ち上げたきっかけを教えてください。

小さなきっかけがいくつか重なり、団体立ち上げに至りました。香港人の主人を追いかけるかたちで、豪州から香港に移り住んだのが2015年。その主人と一緒に鯉魚門(レイユウムン)を歩いていたときに、海からカラカラという音が聞こえてきたんです。それは瓶の破片などのゴミが波に揺られてぶつかり合う音で、なぜかずっと心に引っ掛かっていました。これが1つ目のきっかけです。

2つ目のきっかけは、香港にはゴミの分別がないことに衝撃を受けたことです。香港以外で生活した経験があるのは日本と豪州だけですが、どちらも行政によりゴミを分別するルールがありました。そのため、香港の現状がとても奇妙にうつりました。3つ目は、友人がいいね!をしていた、「宇宙の子マサ」さんのフェイスブックの投稿を目にしたこと。台風で香港の海に大量のゴミが打ち上げられたため、当時沖縄の海で清掃活動をされていたマサさんが香港にゴミ拾いにやってくるという内容でした。「わざわざ日本から来る人たちがいるのなら、私も行ってみようかな」と思い、そのクリーンアップ活動に参加しました。そのときに訪れた大浪湾(タイロンワン)のビーチに打ち上げられたゴミの量にショックを受けました。かつてマサさんが所属していた「NPO法人 Make The Heaven(現・Make Happy)」と香港ビーチクリーンツアーを企画することになったので、「こちらも経験を積んでおかないといけない」という気持ちで立ち上げたのが「The First Penguins」です。

もしあのとき大浪湾のビーチにここまでゴミがなかったら、「The First Penguins」を立ち上げていなかったかもしれません

もしあのとき大浪湾のビーチにここまでゴミがなかったら、「The First Penguins」を立ち上げていなかったかもしれません

 

活動内容や、これまでの取り組みについてお聞かせください。

毎月1回を目標に、海のクリーンアップ活動を行なっています。団体立ち上げ当初から変わらず、中心となっているのは私と主人の2人ですが、毎月必ずご参加くださるコアメンバーは10名弱、その他入れ替わりで20~30名ほどの方が集まってくださいます。他団体と一緒にイベントを開催するときには100名以上集まることもありますし、年に1回は日本からNPO法人の方々がいらして一緒に活動を行なっています。毎回きっちり出席をとるようなことはしていません。どなたでも気軽に参加できるグループを目指しています。そのため、ゴミ拾いの合間にスイカ割りをしたり、皆でご飯を食べに行ったりと、参加者同士が交流できるよう工夫しています。というのも、香港には政府と関わり本格的に活動をしている団体が数多く存在しますが、ハードルが高くて参加しにくいという声もたくさん耳にします。だからこそ、皆さんがもっとカジュアルに環境活動に関われる機会を増やすことが私たちの役割だと感じています。正確にビーチの状況を把握するために、ビーチクリーンで出会った地元の方々に情報をいただくことが多いです。季節や天気によって日々状況は変わるため、こういったネットワークを非常に大事にしています。最近は、南丫(ラマ)島での開催が多いですね。近隣住民の皆さんもとても協力的で、飲み水を用意してくださったり、トイレなどの設備もしっかりしています。また、ショートトリップしたような気分になれるので、ゴミ拾いを楽しく行なうこともできます。

 

いつ頃から環境に対する意識がありましたか?

小さな頃から環境に対する強い意識があったわけではありません。ただ、母のすすめで、小学生の頃にガールスカウトに所属しボランティア活動を行なっていました。困っている人たちと出会ったり、何か問題が起こったときにどう行動すべきかは、周りの大人たちから自然と教わってきたように思います。そのため、「The First Penguins」の活動も特に気合いを入れるわけではなく、本当に自然とスタートし、継続させることができています。

ゴミに対する意識がないと、そこにあっても気づかないもの

ゴミに対する意識がないと、そこにあっても気づかないもの

 

「The First Penguins」の活動以外に取り組んでいるエコ活動はありますか?

香港は非常にリサイクルしにくい場所だと感じています。だから、まずは家から!義理の両親と一緒に暮らしているのですが、少しでも家庭内にリサイクルの意識が芽生えるよう、私が率先してゴミの分別するよう心掛けています。最近、変化も見えてきて嬉しいですよ。

 

なぜ、香港なのでしょうか?

元々、主人も私も10年以上豪州で暮らしていました。結婚後、主人が「やりたい仕事がある」と香港に移ったのですが、すぐに戻ってくるとのことだったので、私はそのまま豪州で教員の仕事を続けていました。しかし、なかなか戻ってこない(笑)主人は香港に腰を据えて仕事をしたかったようなので、私も思いきってこちらに引っ越してくることにしました。

 

環境の面から見た、香港の現状をどのように思いますか?

香港でリサイクルにアクセスできるのは、街にある分別のゴミ箱くらい。ただ、実際どのくらい機能しているのかわからない状態です。あまり分別が意味をなしていないと感じますし、普段からリサイクルに関われる機会がものすごく少ないのが現状ですね。

 

改善に必要なことは何だと思いますか?

ハード面とソフト面、それぞれからのアプローチが必要だと思います。ハード面(インフラ)はどうしても私たちの力だけではどうしようもなく、政府や企業に働きかける必要があります。もちろん声を届けるよう努めてはいますが、私たちが主に力を入れているのはソフト面の改善です。ソフト面と言うのは個々人の意識・行動、そして、教育で、少しずつでもここが変わっていけば、環境問題は改善に近づいていくはずです。そのために私自身が意識していることは、毎月のクリーンアップ活動を通じて、ゴミ拾いを経験したり、リサイクルの感覚を身につけてもらうこと。参加者の方々からの声で、汚いビーチを見るだけでも、その衝撃でその後の意識や行動が変わるということにも気がつきました。そして、多くの人に情報を届けること。幼稚園や小学校などで海のゴミに関するお話をさせていただいたことがあり、「これまでオーガニックな暮らしをしていた人たちが、バナナの皮を捨てる感覚でプラスチックを捨てている。生活環境は変わってきているのに行動が全く変わっていない」ということや、「海に打ち上げられるゴミを中国から来たものと思っている人がたくさんいるが、実際は圧倒的に香港のゴミが多く、政府の会議でも80%以上は香港で出されたゴミという発表がされている」ということなど、こういった思い込みに気づけるような情報を発信しています。地道ではありますが、香港在住者(特にローカルの人たち)に環境に対する責任意識が芽生えてくれることを願っています。

 

「The First Penguins」、そして、松岡様ご自身の今後の取り組みについて。

過去の経験を活かして、もっと教育面に携わっていきたいですね。子供たちに向けた講演活動もそうですし、学生さんたちとのクリーンアップ活動も続けていきたいです。また、これはNGOに登録した後の目標ですが、「日本でクリーンアップ活動をすること」「環境に関するリサーチを行なうこと」にも取り組みたいです。コアメンバーの皆さんから「今度は私たちが日本に行ってクリーンアップ活動をしたい」という声が上がっています。そのため、今後もっと積極的に日本の団体とも関わっていきたいと思っています。また、これまでの活動の中で、大学で珊瑚の研究をしていたり、ウミガメの産卵場所を調べたりしている方々と出会いました。そういった研究データを集めて、環境活動に役立つシステムか何かを作ることができたらいいなという思いがあります。他にも、海に浮いているゴミを取り除く技術を香港で採用できたらなど、夢も膨らみますね。現在、まずハード面の整備として政府にお願いしたいことは、リサイクルをしやすい環境を整えることです。そのために私たちにできることは協力する!という気持ちでいます。

Photo3

 

 


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メール:info@thefirstpenguins.org
ウェブ:http://thefirstpenguins.org
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