ラーメン特集 Part 1「香港人のソウルフード」

2018/11/07

香港人のソウルフード「出前一丁」
インスタントラーメンの進化と、 愛される秘訣に迫る。

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香港人のソウルフードと言えば点心などが挙げられるが、昔から市民に根付いているものと言えば「出前一丁」だ。「茶餐廳」(チャーチャンテイ)と呼ばれる日常的に見かけるレストランには必ずと言っていいほど「出前一丁」がある。日本人にも馴染み深い、赤いパッケージの「ごまラー油味」がポピュラーで、香港市民は、朝、昼、夕問わず食す、まさに国民食とも呼べる。日清食品のインスタントラーメン「出前一丁」が、なぜここまで香港に根付き、今も昔も変わらぬ地位を確立しているのか。その秘訣に迫っていく。

 

インスタントラーメンの起源・歴史

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ご存知の方も居るだろうが、インスタントラーメンは、安藤百福氏が創業した「日清食品ホールディングス」が販売。安藤氏は、50年代日本の食糧不足問題を解決しようと、1958年に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を開発した。最初の「出前一丁」は、1968年2月12日に日本で正式に発売された。「持ち帰りいっちょう」という意味を持つ、独立した調味料パウダー包装を使用した最初のごま油インスタントラーメンで、50年も香港人の食欲を奪った。

 

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これを目の当たりにした際、日本人が麺を好むことを改めて実感し、それと同時に麺には大きな可能性があることを見出したのだ。「食が一番大切。食をなくして、衣も住も、芸術も文化もあったものではない」(安藤氏)と、食の大切さを痛感し、「お湯さえあればすぐ食べられるラーメンを作ろう」と決意。世界の「食」を変える第一歩を踏み出した。その情熱は、麺を油で揚げ、内部の水分を弾き出し、お湯を注ぐ事で弾き出された穴に水分が浸透し、柔らかい状態に戻るといった「瞬間油熱乾燥法」を生み出した。妻の天ぷら料理からヒントを得たこの製法は、長期間の保存が効き、かつ熱湯をかければすぐに食べられるインスタントラーメン誕生の瞬間だった。

 

「出前一丁」 in 香港

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日清食品は1984年、本格的に香港へ進出。翌年に工場も建設し、現地生産を始めた。「海鮮味」「牛肉味」など、日本よりも多くの種類を取り揃えている。日本でもお馴染みのパッケージで、岡持ちを片手に微笑む「出前坊や」は、香港では「清仔」(チェンジャイ)と呼ばれている。

「家家食出前一丁,有美味有歡笑!」(各家庭に出前一丁、美味しさ笑顔を)のフレーズで知られるCMソングは香港人の間でも知らない人はいないほど愛されている。

 

 

 

香港の日常に根付いた日本ブランド「出前一丁」

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なぜ「出前一丁」は香港の定番となったのだろうか?それは日系企業ながら、香港人の好みにあった味を次々に開発し、「現地化」を進めたからだ。他のブランドと比べ、コシのある麺、コクのあるスープは香港人にも受け入れられた。小麦粉をこねてカットし、蒸した後に「瞬間油熱乾燥法」で乾燥。防腐剤や人工色素などは一切使用されていない。

香港で発売されている「出前一丁」の味は日本より多く、スーパーの乾麺コーナーに行くと、お馴染みの袋入り麺までも驚くほど豊富なバリエーションが取り揃えられている。その味はほぼ20種があり、高級調味料で知られるXO醤」、「海鮮」、「牛肉」、「エスニック風カレー」など、様々。一番人気はやはりオリジナルのごまラー油味だそう。

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さらなる成長へ、その原動力に迫る

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茶餐廳のメニューに並ぶ定番は「菠蘿包」と呼ばれ、パンやミルクティー、そして出前一丁がセットになっている。しかし最近、ある茶餐廳が焼きそば風の出前一丁をメニューに盛り込んだところ、これが一躍大人気となった。日清食品は2016年、油で揚げずに製造した「出前一丁 棒丁麵」を発売。揚げずに出来た独特なストレート麺と本格スープがセールスポイントだ。昨年は茶餐廳「LOF10」と協力し、「出前一丁 棒丁麵」を使用した新しいメニューに着手し、「出前一丁 棒丁麵」のプロモーションにも一役買った。進化は中身だけでなく、出前坊やもアップグレードされてイケメンとなり、「出前一丁 棒丁麵」を後押しする。他ブランドとコラボレーションした新製品の発売にも注力しており、今年はアパレルブランド「STAYREAL」とコラボした「STAYREAL x 出前一丁聯名系列」を発表。同じくアパレルブランドの「:CHOCOOLATE」、さらには人気アニメ「妖怪ウォッチ」とも協業が実現した。人々の流行りも取り込んだこういったマーケティングも、日清食品のインスタントラーメン業界の王者たる所以だろう。

 

 

新しい挑戦

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香港のインスタントラーメン市場でシェアトップを走り、中国プレミアムインスタントラーメン市場でも2位に位置する日清食品。昨年12月には、香港証券取引所に上場し、香港日清のより一層の現地化や戦略的パートナーシップの獲得を通じて中国・香港市場での拡大を目指している。1968年に出前一丁が誕生してから50年。地道なものづくりの観点と市民に真摯に向き合ったインスタントラーメンが香港人に愛され続けてきた。今後の50年もまた、新たな製品を通じ、我々を驚かせてくれる事だろう。

 

*売価5人民元以上に設定される即席麺はプレミアムインスタントラーメンと定義する。

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