46年の歴史を持つ老舗和食店「大阪 日本料理」尖沙咀

2018/09/18

香港で老舗の日本料理店と言えば、真っ先に名前が挙がるのがチムサーチョイ(尖沙咀)にある「大阪 日本料理」だろう。素朴な外観から一歩店内に入れば、純和風の温かみある内装が私たちを出迎えてくれる。46年の歴史を持つ同店は、スタッフ全員に深く根付く「人の心を温める」という思いが店舗を支えてきたという。

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 1972年に大阪にある日系企業が香港に開業し、日本人シェフが腕を振るう本格的な料理の数々で瞬く間に人気を呼び、香港に駐在する日本人だけでなく、多くの香港人の心も掴んだ。しかし、2011年に東日本大震災が発生。世界中で巻き起こった日本産食品への風評被害は香港も例外ではなく、食の安全性への懸念が一気に高まった。この間、現地の日本料理店もまた大きな影響を受け、「大阪日本料理」も閉店の憂き目にあった。しかし閉店5日後。そこには、いつものように営業を行うスタッフらの姿があった。蘇らせたのは現オーナーである曾石忠(以下Alan氏)さん。どのようにして復活への道を辿ったのか、お話を伺った。

 

 

 

 

 

Q:なぜ、「大阪日本料理」を引き継ごうと思ったのですか?

A:日本人だけでなく、香港人にも愛された「大阪日本料理」の灯を消したくなかったからです。元々、私は同店にサプライヤーとして出入りしてましたが、店内で出される料理がとても本格的でファンになっただけでなく、当時のオーナーであった八尾健二氏とも非常に良い信頼関係がありました。彼が閉店前の営業最終日、常連のお客さんと共に「さよなら大阪の会」を開催した際、別れを惜しむ皆さんが大挙して訪れる姿を見て、このまま消してしまうのは非常に惜しいと感じ、八尾氏に話を持ち掛け、レストランを引き継いだのです。

 

Alan氏が「大阪日本料理」を引き継いだ際、元々在籍していたスタッフの大半がそのまま店に残ることになった。しかし、同店は再度困難の日々を迎える。

 

Q:お店を引き継いだ後、どのような困難がありましたか?

A:元の仕事だけなく店舗運営も行うわけですから、当時は本当に厳しかったことを覚えています。ちょうど時期を同じくして「東日本大震災」が発生し、日本産の食品に対する風当たりが強まった頃でしたので、最初の3ヶ月は本当に辛かったですね。

 

原発の事故後、日本産食品に対しては輸入規制が定められ、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県を原産地とする食品は輸入停止措置を受ける事になりました。食品については、品目に応じて放射性物質検査合格証明書の添付が義務付けられるようになったり、輸入する際に放射性物質がないか検査を行うなどの対応がなされた結果、原発事故後1年が経過し、ようやく香港における日本産の食品への影響は落ち着いてきたように感じます。

 

Q:大変な時期に、挫けたり諦めたくなった事はありませんでしたか?

A:全くありませんでした。スタッフ一丸となって、お互いを鼓舞しあっていましたから。今思うと、スタッフ間に強い信頼関係があったからこそ、あの難局を耐えられたと思います。私が店を引き継いだ際、スタッフに対し、「3ヶ月後に収支のバランスが取れたら、皆さんの給料を上げる」という約束を交わしました。残念ながら3ヶ月後という約束は果たせなかったものの、彼らとの約束は、6ヶ月後に果たすことが出来ました。

 

Q:スタッフとの信頼関係が、店を復活させたのでしょうか?

A:そうですね。「大阪日本料理」のスタッフの中には、若い頃からここで働き、数十年にも渡って働いているスタッフも居ます。ウエイトレスの蘭英(MissLanYing)は20代から40年以上ここで働いており、今や立派な女性になっています。料理人の西宮茂久氏も20代からずっとここで働いていましたが、60歳の時に残念ながら脳卒中にかかってしまい、これまでのように仕事をする事が難しくなってしまいました。西宮氏は人生の半分以上を香港で過ごしていたこともあり、日本に帰国したとしても不便を被ると感じ、香港の養護施設を手配しています。

 

Alan氏とスタッフの情宜により「大阪日本料理」は困難を乗り切り、人の心を和ます飲食店として創立46周年を迎えました。

 

Q:昨今、香港内の店舗賃料が上昇傾向にありますが、運営への影響はありますか?

A:私たちだけでなく、香港中のレストランが直面している課題でもあります。私が2011年にこの店を引き継いで以来、賃料は2倍以上になっています。人材募集も大きな課題で、長期間働いてくれる従業員をいかに確保するか?については、非常に難しい問題です。

 

Q:これらに対しての対策は?

A:私たちができる事は、まず料理の味を高めて行くことです。「大阪日本料理」は、鉄板焼き、和食、寿司、ラーメンなど、主だった日本料理を全て提供していますが、このような店は香港では少数派です。同店ではこれまで培ってきた味に対する信頼を守って行きたいと思っています。シェフの曽國浩氏(MrTsangKwokFai)は、20代の頃からこの店に携わっており、30年以上にわたり八尾前社長、西宮前シェフを追い掛けて来ました。ソース一つとっても30年以上引き継がれています。また、私自身、現在でも食品卸業を営んでいますので、極力コストを抑え、お手頃な価格で新鮮な食べ物を楽しんで頂けると思います。皆さんも、是非ご来店ください。

(テキスト:Annabelle)

 

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「大阪 日本料理」おすすめ料理

鶏の唐揚げ

開店以来、関西の有名な飲食店「ニューミュンヘン」の唐揚げレシピを使用し、骨つきの胸肉を贅沢に使ったヘルシーかつジューシーな逸品。皮はパリッと、身はホクホクで、旨味をギュッが凝縮されている。

 

おぼろ鯖寿司

おぼろ昆布を巻いた鯖寿司は、鯖の食感とおぼろ昆布の相性が絶妙な逸品。口に含むと酸味が溢れ、新鮮な鯖の風味を味わえる。

 

うなぎゴボウ鍋

開いたうなぎと笹掻きにしたゴボウをみりんと醤油の割下で煮込み、玉子でとじた逸品。いわゆる「柳川風」鍋だが、しっかりとうなぎの風味も味わえる。

 

宝石いなり三種

いなり寿司と様々な海鮮を組み合わせた宝石いなり三種は、いくらとカニの身、いくらとサーモン、いくらとボタン海老という3種類の寿司が選り取りみどり。お箸がすすむ逸品だ。

 

 


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大阪 日本料理
時間:月~日12:00~15:00、18:00~23:00
住所:G/F.&1/F., Ashley Bldg., 14 Ashley Rd., TST
電話:(852)2376-3323
Facebook:「大阪 日本料理」で検索。

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