僕の香妻交際日記 第55回 うがい、手洗い、マスク…なんてしない医師たち
最近、我が家は2人のとてもユニークな医師と遭遇している。
1人は妻のビジネスパートナーで現在フランスでロックダウンされて身動きが取れないフランス人医師のドクターアンドレ。
彼は特許技術や器具も所有するほどのフランスでは有名な白内障のスペシャリストなのだが、副業でマスクやグローブなどの輸出入もしておりアジア圏にネットワークのある私の妻にフランスからZoomで毎日連絡をしてくる。
最近では私たちの2歳の娘も「ドッター」と認識できるほど彼との通話は我が家の日課となっている。
もう1人は妻の気管支炎を診察、治療してくれた香港人医師のドクタードロシーである。
ドクタードロシーは肺の専門医でありながらICU(重症患者を扱う)集中治療の資格も持っており、24時間スタンバイで毎日超多忙に働いている。もともとはよくある担当医と患者の関係だったのだが、どういうわけか妻と気が合ったらしく、治療を終えた今も家族ぐるみで一緒に食事をするほどの仲になっている。
今回はそんな2人の医師の医師ならではの力強い発言を皆さんに紹介したい。
「娘がコロナにかかって今部屋で寝てるんだ」
ドクターアンドレがZoom越しに突然こんなことを冷静に言うので、遠く離れた香港にいる私たちの方がビックリしたのは言うまでもない。
「いや、病院に連れて行った方がいいのでは…」と私たち素人は当然娘さんだけでなく同居しているドクターや家族の心配をしたのだが、「俺は医師だ、俺が娘を治す。病院は信用ならない。」というなんともたくましい一言で一蹴された。
「でも、どうやって…?」と私たち素人は当然疑問に思ったのだが「メロンを食べさせたから大丈夫」とWHO世界保健機関も驚きの治療法を紹介してくれた。
「肌が荒れるから手は洗わないわ」
ドクタードロシーは現役バリバリの医師なので毎日朝から晩まで、時には日付変更線を超えて日々最前線で戦っている。また今年はコロナの影響もありさぞかし衛生面には気をつけているに違いないと思っていたのだが、当の本人はウィルスよりも肌荒れの方が気になっているようだった。ちなみに手を洗わずにどう日々の診察をこなしているかというと、使い捨てグローブを巧みに操り感染と手荒れの危険から見事に免れているとのことである。
「俺ももうコロナに侵されているだろう」
まさかのメロン療法で奇跡的に娘のコロナを自宅で治療してみせたドクターアンドレはロックダウン中もブラックジョークを連発。彼は外出先からもよくZoomをしてくるのだが、そのたびにあまりマスクをしていないので「ドクター、マスクをつけてください」と私たち素人は当然心配した表情を見せると決まって「時すでに遅し」的なジョークを披露して場を和ませてくれる。
「勘違いしている医師は多い」
ドクタードロシーは父親も医師で幼少時代から医師になることを目標としていたいわば医師のサラブレッドである。だからこそ医師の本性というものをよく理解していて、「華やかで優秀に見える医師もその多くは不潔で傲慢で世間知らずの井の中の蛙だ」と会うたびにディスりまくっている。
「俺もコロナにかかった」
これまで破天荒な治療法と強烈なブラックジョークで私たち素人を幾度となく仰天させてきたドクターアンドレも人の子であったことが証明された瞬間であった。現在は病院にて隔離中とのことでZoomも一時中断となっているが、見事にカムバックしてまたパワーアップしたブラックジョークで私たちを笑わせてほしいと切に願う。
ルーシー龍(りゅう)
東京都出身。香港歴7年。元日本語講師。元学習塾塾長。現在香港企業窓際マネージャー。柔道三段。妻は香港人。娘はハーフ。猫は香港仔出身。愛読書は武士道。