カバーストーリー 2022年10月第2週号「中環の風水大戦とは?」

2022/10/12

風水でできた街・中環で巻き起こった牽制合戦

風水が人々の生活に根付く香港。特に金融街である中環は、風水的にみて、とにかく強いエネルギーの流れる地。九龍半島からやってきた龍がビクトリア・ハーバーで水を得て勢いを増し、ピークまで駆け登った後、一気に降りてくる場所なのだとか。そんな中環で起こった、大手銀行同士の風水大戦をご存知だろうか。スクリーンショット (1955)

香港では内装だけにとどまらず、建物を建てる際に風水師が介入することが日常茶飯事。運気を重視する金融街の高層ビルならなおさらで、どの建物も必ずといっていいほど風水師の助言を尊重した設計がなされている。

スクリーンショット (1956)スクリーンショット (1957)世界最大級のメガバンクである香港上海銀行(HSBC)の本店ビル。1985年に建てられ、中環のなかでも特に風水を多く取り入れた建物として広く知られている。
龍の通り道を邪魔しないよう地上階は吹き抜けに、エスカレーターは縁起のいい八の字形に設置され、入り口の前には2頭の大きな獅子が鎮座。竣工から40年近く経った現在でも、そのご利益を得ようと訪れる人が後を絶たない。さらには金運が最強とされるビル前の土地も購入し政府に寄付。広場にするという規約を結び、スタチュー・スクエア(皇后像廣場)を作ったという。

一方、HSBC本店ビルが完成して5年後の1990年に建てられたのが、そこから目と鼻の先にある中国銀行タワー。アメリカに本部を置く「高層ビル・都市居住協議会」によって『過去50年間で最も影響力のある高層ビル50棟』に選出されるなど、香港を象徴する摩天楼のひとつだ。スクリーンショット (1958)
この中国銀行タワー、70階建と超高層で、まるで鋭く光るナイフのような形。その刃先がちょうどHSBCビルのほうを向いており、高い位置から斬りつけているかのようにも見える。タワー完成後まもなく、HSBCは、中国銀行に斬りつけられていることによって運気が下がり業績が悪化した!と激怒。今度はそれに対抗するかのように、中国銀行側に向けて、大砲(の形をした窓拭き用ゴンドラ)を設置したのだ。すると翌年、風水的に相殺できたのか、見事に業績回復を果たしたという。

その後、これら2棟の間に、仲を取り持つようにして長江センターが建てられた。このビルは鎧で武装したような頑丈な枠で四方を覆うことで、中国銀行タワーの刃とHSBCビルの大砲、両方の攻撃をかわしている。これで長らく続いた大手銀行間のけん制合戦は丸く収まったそうな…。スクリーンショット (1959)

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