オーストリアの報道写真家の写真展「The Pulse of Time」香港大学美術博物館(UMAG)

2016/02/01

ヨーロッパ3香港大学美術博物館(UMAG)では現在、世界最高峰の写真家集団「マグナム・フォト」に所属するオーストリアの報道写真家、エリック・レッシングの展覧展を開催している。「The Pulse of Time(時代の鼓動)」と題された同写真展では、レッシングの1950年代から1960年代にかけての傑作を100枚近く展示しており、いずれもフォトジャーナリストとしてのプロ意識を感じさせる作品だ。レッシングは第二次世界大戦後のヨーロッパで、民族・国家の運命の岐路や時代の転換点となる重要な出来事に幾度も立ち会った。彼の撮った写真は、東西ヨーロッパそれぞれにおける政治的・経済的混乱と発展の軌跡を鮮明に映し出している。
展示されるレッシングの作品をいくつか紹介しよう。「ベルヴェデーレ宮殿前の公園で熱狂するオーストリア国民」(1955)は、オーストリアの政治的・経済的独立を保障した「オーストリア国家条約」が締結された直後の国民の様子を写したものだ。第二次世界大戦後、他国があらゆる外交的手段を尽くしても東西分裂を食い止めることができなかった中で、自国の独立を保障する条約が締結されたことに対し喜び溢れる大衆の熱気を切り取った一枚だ。同ヨーロッパ4条約をめぐっては様々な伝説が生まれ、当時の外相フィーグルがベルヴェデーレ宮殿のバルコニーから条約書を掲げたその姿は、国家そのものを表す肖像として一躍有名になった。
また「ブランデンブルグ門の交通規制」(1959)は、ベルリンの壁が建設される直前の時期の様子を写したものだ。当時は門衛がベルリン市民の東西の行き来を取り締まっていたが、1961年にベルリンの壁が建設されるまでは、人の移動は比較的自由であった。特に、東側に住みながら西側に出勤していたホワイトカラー層などは、東西分断に西側に逃れることができたという。
ここでは紹介しきれないが、他にもまだまだ時代の息吹を捉えた写真が多く展示されている。今にも動き出しそうな写真を見ていくうちに、あなたも当時のヨーロッパの鼓動を感じることができるだろう。

ヨーロッパ1

 

 

 

 

 

 

 

「ベルヴェデーレ宮殿前の公園で熱狂するオーストリア国民」(1955)

“Erich Lessing: The Pulse of Time̶Capturing Social Change in Post-war Europe”ヨーロッパ2
期間:2月14日まで
場所:1/F, T.T.Tsui Building, UMAG, HKU, 90 Bonham Road, Pokfulam
時間:9:30~18:00(月~土)
13:00~18:00(日) (祝日、閉館)
ツアー:2月12日(金) 13:00~13:30(英語)、http://www.hkumag.hku.hk/lectures_events1_01.htmlより申し込み可(無料)
料金:無料
電話:(852)3929-9500、(852)2377-0469
ウェブ:http://www.hkumag.hku.hk

 

「ブランデンブルグ門の交通規制」(1959)

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