タイルに込めたアーティスト達のメッセージ

2016/08/23

タイルタイル

香港の海洋汚染は深刻な問題だ。かつて毎年行われていたヴィクトリア湾を泳いで渡るハーバーレースも、水質の悪化により、2010年までの33年間中止を余儀なくされた。政府による水質改善対策が功を奏し、2011年より再度恒例行事として復活することになったものの、街中でゴミをポイ捨てする人は相変わらず多く、今も海上には常に大量のゴミが浮かんでいる。また、国連の環境に関わる補助機関「UNEP」によれば、香港の海のゴミや有害物質の80%は、排水溝・側溝から下水を通じて海へ流れ着いたものなのだという。海がもつ本来の美しい状態に少しでも近づけるために必要なのは、私たち一人一人の意識改革なのだ。

海辺の町そんな中、こじらせた「海の病」を治すべく、主に海洋環境の改善を目的とした活動を行う国際NGO「Ocean Recovery Alliance」と、地元のアーティスト達がタッグを組んで始めたプロジェクトがある。より綺麗な海に戻したいという想いを込めて「點都呑唔落(Fish don’t eat trash)」や「汚物莫入此路向海(No dumping drains to ocean)」などのメッセージを描いたタイルを作り、海への入り口である側溝や、その付近の歩道に設置するというものだ。これまでの政府との度重なるやり取りの末、この度設置の許可がおり、実現にこぎつけた。既にこれらは赤柱( スタンレー)、淺水灣(レパルスベイ)、香港仔(アバディーン)、鴨脷洲(アプレイチャウ)といった香港島の南側にある海辺の町で目にすることができ、今後は大学生なども参加してその数を増やしていく予定だという。政府も「きれいな海の環境を維持する上で、市民の意識を高めることを目指すこの革新的なプロジェクトを喜んで支援する」と協力的だ。

一人一人が美しい海への願いをこめた、手書きならではの温かい、そして気持ちのこもったメッセージ。素材をタイルにしたことで街の風景にもうまく溶け込んでいて、可愛らしい印象もうけるが、「何が書いてあるのかな」とふと立ち止まってみたくなるような「作品」ばかりで、道行く人たちに警鐘を鳴らし、意識向上を促すという役割は充分に果たしているように思える。夏真っ只中の今、「ちょっと海水浴」「ちょっと海辺でビール」なんて人も多いのではないだろうか。思わず羽目を外したくなる季節ではあるが、マナーはしっかり守って楽しいレジャーにして欲しい。その心がけが、明日の美しい海への第一歩だ。

のアーティストタイルタイル

Ocean Recovery Alliance
「The Grate Art project」
ホームページ:www.oceanrecov.org

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