僕の香妻交際日記 第48回 あなたにとって勇気とは何ですか?

2020/04/08

P16 HK Wife_727信玄とは米や塩の量で競っているわけではない

 永遠のライバルと言われた上杉謙信と武田信玄は14年もの間戦い続けましたが、その間謙信は自国で塩が収穫できず、さらに他国からの供給も止まってしまった信玄へわざわざ塩を送ってあげていたと言われています。塩は人間の生活に必要不可欠なものなので、その塩がないというのは国としても致命的だったに違いありません。

 ライバルがそのような危機的状況に陥っているのですから、自分としてはその相手の弱みに付け込むのが常套手段のはず、しかし謙信はそのセオリーとは逆にライバルを助けることを選択しました。当然ですがこのような謙信の行動を懐疑的に見ていた家来も少なくなく、それらの者たちに対して謙信はこう諭したとのことです。

「私が信玄と争うのは弓矢の強さであって米や塩の量ではない」

 この謙信の「敵に塩を送る」逸話はおそらく知っている人も多いかと思いますが、この話から私たちが学ぶべきこと、考えるべきことは勇気の本当の意味についてなのではないかと私は思います。

 

生きるべきときに生き、死ぬべきときに死ぬ

 ギリシャの哲学者プラトンによれば、勇気とは「恐るべきものと恐るべからずものとを識別することである」とのことでした。この言葉の意味するところは、危険を顧みずやみくもに困難に立ち向かうことは決して勇気とは言えず、それで命を落としたのならそれはただの犬死にすぎないということです。

 「負けない」という強い気持ちを持つことと、「大丈夫」という強がる気持ちを持つことは似ているようで心理的な耐性としては大きく異なり、後者は極めてもろく、ある一線を越えてプツンと切れてしまった緊張の糸は二度と修復することができなくなってしまいます。

 大事なことは危険な状況にこそ冷静になって物事の黒と白を認識することで、それができるかどうかが勇気という言葉にふさわしい行動をできるかどうかに関わってくるのです。

 

私たちは未曽有の危機に瀕している

 今、世界はコロナウィルスの脅威によってこの世界に生きている人間が誰も経験したことのない最大級の危機に直面しています。しかも、敵は私たちの目には見えません。このような状況だからこそ、世界が一丸となって敵に向かう必要があると私は思います。人間ですから、個人個人に嫌いな国もあれば、嫌いな人もいるのは仕方ありません。私にも嫌いな人はいます。しかし、今私たちの敵はそれらの嫌いな国でも嫌いな人でもありません。

 政府と争うのは自由や人権のためであって、今は政府の指示を聞き入れて国民全員が忠実に従うことが先決でしょう。また、ウィルスについて一番の情報を持っているのはプレジデントXiなんですから各国首脳は迷うことなく頼るべきです。

 この2か月間で「大丈夫」と思っていたことがウィルスの手によってすべて覆されました。ここからは「負けない」という気持ちを切らさないことはもちろんのこと、皆が同じ方向を向いて協力、共有しながらこの目に見えない巨大な敵に立ち向かっていくしかありません。

 来年、桜の木の下で入学式が迎えられるように、東京オリンピックが平和の祭典として世界に感動と希望を与えられるように、今こそ勇気ある行動が求められています。

 


ルーシー龍ルーシー龍(りゅう)

東京都出身。香港歴7年。元日本語講師。元学習塾塾長。現在香港企業窓際マネージャー。柔道三段。妻は香港人。娘はハーフ。猫は香港仔出身。愛読書は武士道。

 

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