沖縄出身バレエ・マスター「香港バレエ団 江上 悠氏」インタビュー - 映画・音楽・芸術・アート投稿

ロンドンのロイヤルバレエスクールを卒業し、19歳で香港バレエ団のメンバーとして入団。2014年にレペティターの役割を引き継ぎ、現在はバレエマスターとしてダンサーたちに指導をしている江上氏にお話しを伺った。

PPW：以前街中のバレエ公演のポスターを見ていて、「なんか日本人っぽいダンサーだなぁ。」なんて思った事もあったのですが、まさか香港のバレエ団に日本人がいて、しかも指導をしているとは思いもしませんでした。10代で英国のバレエ学校に入学というのも特異かも知れませんが、バレエを始めた切っ掛けや香港に来る事になった経緯などは？

江上氏：バレエを始めたのは7歳の時で、学校で遊びの一環として振り付けを考えて友達に躍らせたり、自分も踊ったりしていて、面白いと思う様になりそれからバレエに目覚めました。その後、父親の仕事の関係で9歳から10歳までの間、英国のオックスフォードに滞在する事になったのですが、私の母親がミュージカルや芸術などが好きだった為、週末には一緒にロンドンに行き、現地の劇場や美術館でたくさんの刺激を受ける事になります。そんな環境で育ったので、16歳の時点で英国にバレエ留学するということ自体は私にとって、特異なことではなく、むしろ当然でそしてワクワクする事だったんです。

PPW：試験などはあったのですか？よく合格されましたね。

江上氏：留学の前からバレエの道に進む事を決意していたので、15歳の時にその留学先の学校の夏期講習に応募したんです。2週間の集中講座だったのですが、それを受講する為にも審査があったんですよ。プロフィール写真や踊っているビデオを送り、選ばれた人たちが集まり寮生活を送り、ガッチリ組み込まれたプログラムで一日中みっちりバレエに打ち込む講習でした。私にとってそれはそれは幸せな時間でした。やはり自分の進む道はバレエだと再認識し、講習の後現地で先生たちにすぐさま入学を申し入れたんですが、「当校は16歳から受け入れる規定なので、1年後のオーディションに来てください。あなたなら一次試験は免除してあげるから、最終試験からおいでなさい。」と言われました。そして1年後、試験に受かり入学する事になります。

PPW：入学時のエピソードなどは？

江上氏：留学が決まり、有頂天になって髪を金髪にして英国に渡ったのですが、入学初日にすれ違った女性の校長先生に、校長室に呼び出されることになります。「あなた、容姿がちょっと変よね？アジア人には素晴らしい黒髪があるのに、なんで金髪にする必要があるの？」と諭されます。その時に、外見ではなくて内面から磨きなさいと言われているような気がして、次の日からまた黒髪に戻して当校するようにしました。

PPW：卒業後は香港に来ることになり、そして18年が経ちますね。

江上氏：最初は欧州で学んだので欧州で活躍の場を求めていたのですが、当時の芸術監督が、元英国ロイヤル・バレエ団のトップのダンサーだった事から、ロンドンまで私をスカウトに来てくれたんです。香港バレエ団へ入団後は、ダンサーとしてまた振り付け師として、自分のキャリアを積んでくることができました。

PPW：コロナ禍において、今後の展開などを教えてください。

江上氏：バレエや芸術は、皆さんが健康であった上で成り立つある意味、贅沢品である為、やはり我々も講演がキャンセルになったりと影響は多分に受けています。そんな中で始めたのが【HKBALLET@HOME.】という取り組みです。家でも皆さんにバレエを身近に感じてもらおうとYoutubeなどで配信を始めました。是非PPWの読者さん達にも観て頂きたいですね。あとは、9月から1960年代の香港を舞台にした【ロミオとジュリエット】の公演が始まります。香港が舞台ですので、戦いのシーンではカンフーなどが出て来て面白い仕上がりになっているんですよ。7月からチケット販売が開始されます。

PPW：10代の時から海外に飛び出すってなかなか出来る事ではありませんが、最後に今後は海外でビジネスやスポーツ、そして芸術などで活躍してみたいと思っている日本にいる日本人の方にメッセージをお願い致します。

江上氏：思い切って一歩を踏み出して、まずは海外にでちゃう事。それに尽きると思います。海外に出る為の情報収集も大切ですが、そこで気構えし過ぎるよりは、海外に飛び出してしまって、そこで感じた事や考えた事を元にまた次のステップに進んだり、問題を解決していく。そういう方が進む速度が断然早いと思います。今は昔よりも海外に飛び出すハードルも低くなってきているので、是非がんばってほしいですね。

PPW：ありがとうございました。

香港バレエ団
ウェブ：www.hkballet.com
Youtube動画：HKBALLET@HOME.

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