道醫學から診たアフターコロナの世界:李寳能先生インタビュー

2023/03/01

収拾しそうであるコロナ禍だが不安が尽きない昨今、この先の未来には何が待っているのであろうか。
東洋思想を代表する道家思想から発展した学問・道醫學を修めた李寳能先生にお話しを伺った。李先生Main Photo

道家思想・道醫學とは
老子が、自然や宇宙の摂理を基に共存・共生を説いた学問とその術。太極拳・漢方・陰陽五行・四柱推命などを使いこなし教えを実践している。宗教の道教やスピリチュアルな迷信と混同されるが、道家は学問の一つで陰陽五行や四柱推命、生物物理学、自然科学の法則によるものである。

PPW:今回は2つのテーマについて道醫學の見地からお話を伺いたいと思います。ひとつ目は「コロナ禍後の世界の気の流れ」です。ふたつ目は「コロナ禍後の家族の絆」について。まずはひとつ目からお願いします。
李先生:非常に壮大なテーマですので、キーワードを絞ってお話ししたいと思います。まず前提ですが、東洋思想において「人間」は特別な存在ではありません。自然の中の一つと考えられています。人間もウイルスもウサギも松の木も一律に同等の存在です。元々自然界において我々人間の隣には、ジブリ作品「平成狸合戦ぽんぽこ」のように狸や狐が住んでいたのです。それがいつの頃からか人間が特権を持ったかのように振舞うようになりました。例えば、自分達のために実験で動物を犠牲にしてまで、ウイルスに勝とうとするようになってきたのです。
東洋思想ではウイルス共々、共存することが理に適っていると考えます。共存といっても競争しながらの共存です。競争には二つあり、ひとつは悪性競争といって「相手を倒す=王道」のもの、もうひとつは良性競争「相手と切磋琢磨して生き残る=聖道」です。この二つが共に東洋思想の世界観の中にあります。我々がウイルスを薬や実験で倒そうとすれば、ウイルスは更に強くなって我々を倒しにくることでしょう。反対に、生活習慣病とは無縁な自然に近い生活を送り、免疫力を高めるよう日々鍛錬していればウイルスとも良性なる競争ができると考えます。ai ウイルスに薬で戦いを挑んだ結果、ウイルスは強くなって我々に反撃をしてくる。しかし我々は暑ければ冷房をつけて、歩くのが面倒であればタクシーに乗る。このような怠惰な生活を送り続けると身体がどんどん退化していくのは明白です。しかもそれが遺伝子レベルで次の世代に伝わり、人類がどんどん弱くなっていく。これではウイルスと共存することはできないでしょう。同じことは対AI・人工知能にも言えます。

道家思想の見地から言えば、我々がいかに元々持っていた本来の姿に立ち返り、心身共に鍛錬することができるか、そして自分たちが特別な存在だとは思わずにもう一度「生命の定義」や「医学・科学の論理」を考え直すことが、自然世界の中において、他物との共存に繋がると思います。考え、学ぶだけではなく、東洋思想の実行(=知行合一)が必要です。

PPW:二つ目の「コロナ禍の家族の絆」についてお願いします。
李先生:「家族」とは何なのか。それは遺伝子を「サバイバルさせるための組織・枠組み」と言えるでしょう。では、なぜその家族の絆が弱まり、その関係が薄れてきてしまったのでしょうか。それは「普通に幸せな生活ができる社会」が円熟して、サバイバルという概念が無くなったためです。しかし近年、共存し生き残ることを学ぶ道家思想が見直されてきたのも、コロナ禍において家族の絆が言及されるようになってきたのも、「生存に危機感」を覚える世界に変化しつつあるからなのです。コロナなどの疫病、戦争、環境問題、地震や津波など人災と天災が続いています。4181486_s サバイバルしていくために、そして子孫を繋げていくために、家族それぞれには役割があります。先祖が培った「生きるための知恵」を語り継いでいくこともサバイバルのためです。
また、男女が結婚をして子どもを産んで育てるということは遺伝子の「多元性」に繋がります。遺伝子Aの男性と、遺伝子Bの女性から、遺伝子Cの子どもが生まれる。AとBはウイルスに負けたがCは生き残った。これもサバイバルのためなのです。3428642_s
家族分裂の原因のひとつには「言語の老化現象・衰退」も考えられます。言行一致や言霊と言われるように、古くは「言葉=真実」でした。愛と言えば、そこに愛が存在しました。リンゴと言えば、そこにリンゴがありました。その次の時代には、「今朝、リンゴを食べた」と現時点には存在しないものを時間・空間で置き換え(=Replacement)するようになったのです。この時点で「言葉=真実」ではなくなりました。そして、今現在はバーチャルの世界が表れて言葉は嘘のまた嘘になってしまったのです。この現象が進んでいくと何も信じられなくなってしまう。自分だけしか信じられなくなってしまう。それにより家族だけではなく、社会からも絆が消えつつあるのです。絆がなくなれば目の前のスマートフォンの画面だけといった「孤の世界」だけしか信じられなくなり、周りの世界は無関係に思えてきます。そのような結果として、バーチャルの延長で回転寿司屋で「飲食テロ」といった迷惑行為をしてしまう事件が起こるのでしょう。

PPW:では、我々にできることは何でしょうか?
李先生:道家思想において、その時代・環境で変化する人間社会は基軸にはなりません。真理は宇宙や自然の法則にあり、そして生命の定義は持続していくことだと考えます。そのような意味において、既述の多元性しかり道家思想は「持続可能な発展 = Sustainable Development」を持ち合わせていると言えるでしょう。
家族だけに限らず隣人との対話・会話をできるだけ増やし、東洋思想・東洋医学を再認識し、共生・共存を目指すことが我々人類が向かうべき方向なのではないでしょうか。

PPW:貴重なお話をありがとうございました。24996912_s


李寳能
李先生②DAOWAY 當代道醫 創設者
中國傳統道醫學顧問 / 臨床身心行為學家
全真龍門派古伝道家原始太極拳
香港地区代表・国際道林太学代表
香港の師範学校で体育の教師を務めたあと、私費留学生第一号として、新潟大学・大学院で行動科学を学ぶ。東洋思想と行動科学に基づき、心身の統合を図るためのオリエンタルライフカウンセリングを手がける。風水学者でもあり、生年月日時をもとに命運を占う四柱推命も教えている。企業に招かれて日本で講演を行うことも多い。
問い合わせ先:
life@netvigator.com
WEB:daoistway.com

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