戦後の香港を民主化に導いた女性政治家

2015/12/31

12月20日、とある女性の葬儀に香港特別行政区行政長官の梁振英氏(Leung Chun-ying)や元長官の董建華氏(Tung Chee-hwa)、曽蔭権氏(Donald TsangYam kuen)など有名な政治家が参列し、棺側付き添い人を務めたことが話題に上った。香港全体が悲しみに暮れるというひとりの女性。これは一体、なんで?!
実はこの女性、戦後の香港を民主化に導いた政治家であり活動家でもあるエルシー・トゥ氏(Elsie Hume Elliot Tu)なのだ。1913年にイギリスのニューキャッスルで生まれた彼女は、今月上旬第二の祖国であるここ香港で102歳の長寿を全うした。その活動の歴史のほとんどは貧しい人エル シー・トゥたちのために捧げられ、1950年代以降の香港民主化に貢献。晩年は新聞新聞サウスチャイナ・モーニング・ポストに社会問題、有力政治家の贈収賄疑惑、ゴミのポイ捨て問題まで幅広いトピックスに対する見解を寄稿するなど最後まで精力的に活動を行っていた。「誠実で有意義な人生を。」彼女の信念は常に明快だった。
およそ70年に亘って恵まれない人々のために活動した彼女は、1951年宣教師として初めてこの地を訪れた。以来、貧困、暴動、汚職、市民代表となるべき政治家の不在、社会保障制度の未熟さなどにあえぐ人々の支えになるため、さらに当時イギリス植民地下にあり不当な扱いを受けていた香港の人々のために戦ったという。彼女の功績は計り知れない。1954年には彼女の夫とともに貧しい子ども達のために慕光英文書院学校を立ち上げ、1965年のスターフェリーの運賃高騰の反対運動を行い、さらには社会全体の収賄撲滅のためにICACを設立。教育、住宅、労働環境、社会制度、政治の分野などの土台を築いたと言っても過言ではないだろう。
20日の葬儀に参列した行政長官の梁振英氏は4分間のスピーチで、香港にとってかけがえのない女性を亡くしたことを伝えた。「今日、我々は彼女に別れを告げなくてはなりません。彼女の旅立ちを香港全体が悲しんでいます。彼らを代表して尊敬の意を表します」と語った。激動の香港に一筋の光を示し、多くの人々を導いた女性。その最期は彼女が愛した香港の人たちによって優しく見送られたという。

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