花樣方言 ポケモンが1匹、2匹…

2016/10/12

ポケモンポケモンGOは、第1世代の151匹で始まっています。今後、第2世代100匹、第3世代135匹、第4世代107匹…と、順次登場してくるのでしょうね。

日本語では、ポケモンは「匹」で数えるのが普通のようです。妖怪ウォッチでは妖怪は「体」で数えているようですが。100体、200体…。日本語にはこのような助数詞と呼ばれるものが500以上はあるようですが、三味線が1棹(さお)、琴が1面(めん)など専門家しか使わないようなものが大半で、なおかつ、1個(こ)、1台(だい)、1枚(まい)のように大多数が音読みであるという特徴があります。音読みということは、漢語から取り入れた借用語だということです。訓読みの、1羽(わ)、1筋(すじ)、1粒(つぶ)などはあとから二次的にできたものであり、日本語にもともとあった助数詞は、ひとつ、ふたつ…の「つ」、ひとり、ふたり…の「り」ぐらいなものです。助数詞は、数は多くても日本語のオリジナルではなく、しかも一般人が日常使うものの数は知れています。牛は1頭、鳥は1羽、エビは1尾…であっても皆「匹」で事足りてしまいます。

広東語の「一條路」(1本の道)や「一架車」(1台の車)などの、「條」(細長い物に使う)や「架」(機械などに使う)を日本語的文法になぞらえて「助数詞」といってはいけません。中国語では「量詞」と呼びますが、これも的を射た呼び名とはいえません。なぜなら広東語の場合、本質的に「数」や「量」とは無関係だからです。「類別詞」というのが言語学での言い方で、これは特に東南アジアの諸言語においてとても重要な役割を担っています。類別詞は中国の南と北で使い方に大きな違いがあって、東南アジア諸語、特にタイ系諸語に非常に近い特徴を持つ広東語では類別詞の働きも実に活発。「この車」などというとき日本語では類別詞を使いませんが、広東語では「呢架車」と、必ず類別詞「架」が必要です。「私の車」ならば「我架車」。単に「これ」とだけ言う場合も、細長い物を指すのなら「呢條」、機械の類ならば「呢架」、コンピューターなどなら「呢部」。数は、「呢三架車」(この3台の車)のように、付随的に、この位置に入ってくるに過ぎません。数詞や指示詞なしで「條路」「架車」「部機」と使うこともできます。こういう場合はヨーロッパ諸語の冠詞に似た働きになって、「特定の物」(the+名詞)が表されます。類別詞の習得なくして広東語や東南アジア諸語の上達はありえません。

中国語は、北に行けば行くほど類別詞の数や働きが少なくなって、「架車」のような定冠詞的な使い方はなくなり、北京語ともなると、「この~」と言うときは皆「這個~」だけで済むようになります。学校では「這三隻鶏」(这三只鸡)のように「普通話」を習いますが、生粋の北京語ならば「這三個鶏」のように言うのが自然です。広東語の場合は全てを「個」だけで済まそうとするとかなり無理があるので、できれば全部覚えてしまったほうがいいです。60個ぐらいで済みます。

中国語では、動物には主に「隻」や「頭」や「条」などを使い、「匹」はもっぱら馬だけに使います。馬は大昔から人間にとって重要で、ほかの動物とは特に区別されたためと考えられ、類別詞も「匹」がすでに先秦時代に、先陣を切って現れています。類別詞ができる以前、金文や甲骨文字の時代には、牛五牛、羊三羊、田十田、玉八玉…のように名詞をそのまま繰り返し使って後置して、すなわち、牛が「5牛」、羊が「3羊」、田が「10田」、玉が「8玉」…と数えていたわけで、これが次第に似たものどうし統合していって種類分けが進行、そして現在のような一定の数にまで「進化」したのです。「匹」は、「匹敵」という熟語があるように本来は「二つ、対になるもの」を意味していて(匹敵は、敵対する両軍、拮抗する双方、という意味)、馬の尻の二つに割れているその形状から、馬を「匹」で表すようになったとされます。香港では、エアコンの力量を「匹」で表すのをご存じでしょうか。「1匹」のエアコンは日本の6畳~8畳用に相当します。4畳半相当なら「3/4匹」。これはかつてエアコンのパワーが物理学用語の「馬力」で表されていたことに由来すると思われます。「匹」は3千年の時を経て、香港ではエアコンの量詞に、日本では全ての動物およびポケモンの助数詞にと、メガ進化をとげています。

いわゆるポケモンワールドには、一般の動物がいっさい存在しないので、ポケモンたちこそがまさに動物の寓意であると考えられます。ポケモンを通して自然と親しむ心を伝えているはずなので、ポケモンGOも郊外や田舎に展開すべきです。都市部で起こしているくだらない問題や事故もなくせるでしょうし。

大沢ぴかぴ

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