柔道を始める前に知っておきたい18のこと  最終回

2020/05/20

zyudo

最終回 柔道の未来

 

柔道からJUDOへ

 1882年に嘉納治五郎師範によって創設された柔道は、120年を超えるその歴史の中で広く世界に普及し、現在では200を超える国と地域で日本伝統の武道として、そしてオリンピック競技の一つとして親しまれるようになりました。

 とりわけ、競技スポーツとしての柔道を表現する場合、最近では日本においてもアルファベット表記によるJUDOが使用されることが当たり前になっています。

 

脚を触ったら負け!

 しかし、このように日本の武道として見事グローバル化に成功した柔道は、その姿をJUDOへと進化を遂げたまでは良かったものの、普及発展に伴う国家間の競争の激化によって勝利至上主義が先行し、その中身まで本来なら必要のないルール変更を強いられる結果となりました。

 このルール変更により、なんと嘉納師範が作り上げた柔道の技のいくつかは現在の試合では使用禁止となってしまったのです。

 例えば、試合中に帯から下、つまり相手の脚に触れてはいけないという新ルールです。故意であろうとなかろうと触れてしまった場合には反則負(即試合終了)となります。技術面で劣る外国人選手たちの力任せのタックルがあまりにも目立ち過ぎたがために一律して「脚取り禁止」というルールが追加されたのです。

 ただ実際のところ、脚を掴んで投げること自体は問題ではなく、歴とした脚を掴んで投げる投技として掬投(すくいなげ)や朽木倒(くちきたおし)といった技は日本人の多くの選手も得意としていましたし、これらの技は劣勢の選手や体の小さい選手が自分たちより大きくて強い選手を投げるときによく使われていたので、このルール変更を機にかつてのような大逆転、大金星といったような試合は少なくなりました。

 

組むことが大事

 これまで時代の流れとともに様々な変化を遂げてきた柔道ですが、今後のJUDOは「組んで投げる」というのをより意識した指導、トレーニング、そしてルールが主流になっていくことが予想されます。先に述べた脚取り禁止ルールもかつての柔道の醍醐味を多少失わせてしまったという事実がある一方で、このルールのおかげで「組んで投げる」という柔道本来の目的が改めて柔道家の間に浸透したのも確かです。

 ですから特に子どものうちは勝ち負けよりも相手の襟と袖をしっかり持って技を掛ける練習を繰り返すことが大切です。組めば組むほど組む力が強くなり、いずれ相手に振り回されることもなくなります。

 

継続は力なり

 私は大学ではオリンピックメダリストを多く輩出する強豪柔道部で稽古を積みました。私自身は目立った成績も残せず日々の練習についていくのが精一杯でしたが、強豪選手たちの稽古や私生活を見て分かったことがあります。

 続けられる人間はいつでもどこでも強いということです。

 ただし、競技柔道はスポーツなので強い人が必ず勝てるわけではありませんが、畳の外の生活においては、総じて「続けられる人」は選手を引退した後もそれぞれの分野で活躍しています。

 嘉納師範が説いたように、柔道家が柔道で培った力を社会に還元することができたとき初めて自己の完成、豊かな社会の形成が完成します。

 勝ち負けに一喜一憂することも人間には必要です。でも子どもたちにはその勝ち負けの先にもっと大切な未来が待っていること、そしてその未来は自分たち次第で明るくも暗くもなるということを、私も柔道指導を通して常に言い聞かせていきたいと思います。

 

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judo_prof筆者プロフィール

宮坂 龍一(みやさか りゅういち)
柔道参段。講道館で柔道を始め、暁星中高、筑波大学と柔道部に所属。元柔道香港代表U-17・U-12コーチ、2017年柔道日本マスターズ73kg級3位。

 

 

KLNBJJ_LOGOサタデーキッズ柔道クラス

場所:九龍柔術
住所:11/F., Park Hovan Commercial Bldg., 18 Hillwood Rd., Jordan
時間:毎週土曜日 3~6歳クラス 9:10~10:10、7~12歳クラス 10:15~11:30
指導言語:英語(メイン)、日本語、広東語
月謝:HKD600
最寄駅:佐敦(ジョーダン)駅D出口より徒歩5分
問い合わせ:info@klnbjj.comまたは(852)6647-7164(宮坂まで)

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