宝石業界こぼれ話 鋳造で作る

2016/08/23

先回は、ハンドメードのジュエリーのお話でした。今回は鋳造の話です。

 

ジュエリーを加工する技術の一つに鋳造が有ります。つまり、型に貴金属を流し込んで作ります。勿論ジュエリー完成までには、いくつもの加工工程が有ります。

初めにデザインを描きます。そのデザイン画を銀やワックスで形にします。そこまでは、手作業です。これを原型と言います。

原型を銀で作り上げるには、加工職人としての修業が必要です。それをもっと容易にしたのが、ワックスです。ロウを使えば火を使わず低温で接合が出来ます。削るのも楽です。形を作るのも簡単です。また修正も容易です。こうしてワックス原型ができますが、量産をする時は、ワックス原型から型を取って、銀を流し込んで銀の原型(銀原型)にします。

第一段階として原型製作出来ると、その原型をゴム(ラバー)で包みます。熱をかけ、圧を掛けると原型の形がラバーの中に出来ます。それを注意深く切り開き原型を取り出します。写真は、ラバーを切り開いた時の様子です。

この左右のラバーを合わせて閉じると取り出した原型の部分が空洞に成ります。そこにワックスを注入します。すると原型の形がワックスになって取れます。この作業を繰り返すと、同じ型が、簡単に沢山とれます。

準備ができた沢山のワックスを石膏で固めます。固めた後、ワックスを溶かし出すと、石膏に空洞が出来ます。そこに、融点(1100度~1775度)で真っ赤に溶けた金やプラチナを流し込みます。金属が冷えて固まった所で、石膏を割り、型を取り出します。こうして、ジュエリーとしての形の基本形ができます。商品として完成するには、その後、何度も磨き、ダイヤなどを留め、そして最後の仕上げまで、加工は続きます。

以上が、鋳造方式による加工の概要でした。

rubber for casting Feb 2016

この方式の利点は、様々なデザイン製作しやすい事。同じデザインを大量に製作が出来る事です。しかし、有史以前からのジュエリーの歴史でこの方式が広まったのは、ここ半世紀くらいです。20年前に、ある神戸の会社を訪問した時、社長が「日本で鋳造方式を始めたのは当社です。戦後で苦労の連続でした。」と言われたのを覚えています。香港では、40年くらい前でしょうか。そして、中国では、香港から技術移転をした大型工場では、ほぼ100%がこの方式で今日に至っています。正に世界的に見て、ジュエリー加工の定番になっています。

しかし、ここ十数年に新たなイノベーションが起こりました。ITの活用です。それまで人の手で作っていた原型を、コンピューターでデザイン(CAD)をして、そのデータを樹脂で形にする技術です。ITの力でジュエリー製造も大きく変化しつつあります。また、変化をしなければ、淘汰されて消える運命に有ります。ジュエリー業界にも次の生産方式の模索が始まっています。

 

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