深センものがたり 第36回

2021/06/30

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〜鬼も来たる中元節〜

 旧暦7月15日(今年の新暦8月22日)は、「中元節」。客家人の中元節は、前日の7月14日に行なう。その理由は、昔々、中元節当日に侵略者が襲って来て、行事ができなかったため、それ以降、前日にやってしまおう、となったらしい

 前回のコラムで、中元節は悪霊も蘇る「鬼節」との別称もあり、鬼にまつわる昔からの言い伝えを述べた結果、客家の知人からも興味深い伝説を得たのでお伝えする。

 

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鬼たちの門限

 鬼が”あの世“から出入りする鬼門は、7月1日から徐々に開き、14日から15日に大開日をむかえ、その後はゆっくりと閉まっていき、7月30日に完全に閉じる。この期間に、ホームレスである鬼たちは、巷を彷徨い、見知らぬ家へ勝手に来て、食べ物を漁るのである。

 彼らを追い払うには、(ニセモノの)お金を燃やせば、それを持って喜んで15日早々に戻るそうだ。ただし、特定の場所以外で燃やすのは、法律で禁止されている。

 

冥焼

 

鬼節の禁忌

 中元節期間の禁止NGがある。この時期は身体の陽気が衰え、陰気が強くなり、鬼に狙われやすい。

夜更かしはダメ!夜は早く寝る。
・夜12時以降は目を閉じる。夜遊び禁止!
・通りすがりの見知らぬ者から名前を呼ばれても、決して振り向かない、完全に無視する。
・お供え物を盗み食いしてはダメ! 祭物はご先祖様の食べ物のため、彼らの同意なしに食べると、なぜか鬼たちが怒って厄を招く。
・道端のお金を拾うな! 道端に落ちているお金は、鬼が牛馬を買うためのものらしい。
・肩を組んではいけない。人の頭と両肩には各々3本の火が点っており、肩を組むと火が消えて、鬼に捕まる。
・脱いだ靴先はベッドの方へ向けない。鬼は靴のつま先の方向で、人がどこにいるかを判断する。靴のつま先をベッドに向けると、鬼はベッドに入ってきて、あなたと一緒に寝る。まるで”夜這い“である。
・口笛を吹かない。夜に口笛を吹くと、鬼を呼び招く。
・足の毛を抜かない。”一支脚毛、管三個鬼“(足の毛一本は、三つの鬼を管理する)ということわざがあり、彼らは足の毛を嫌う。
・水で泳がない。鬼たちはこの時期に水中で”人の足盗りゲーム“をして遊ぶらしい。

 

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森眼

 

鬼節にする事
・ニックネームを使う。特に夜は鬼が彷徨うので、彼らに名前を覚えられないように、ニックネームで呼び合う。
・箸をご飯の中央に刺す。この儀式は、分かち合って食べるという意味だそうだ。
・昼に洗濯物を干す。夜に干すと、鬼は服を着てしまい、臭い匂いを残すらしい。
・鬼を見過ごす。彼らは怖すことが大好きなので、もし見かけても、見て見ぬふり、無視すべき。
・枕元に風鈴を吊るす。風鈴の音は良い運気を招いて、悪い運気を近寄らせない。

 

線香

灯篭流

 

 鬼は、実在しない架空上の存在である、と付け加えておく。

 

 深セン市に長年住む生粋の深セン住民の約65%が客家人と言われる。以前の深センは湿地帯であり、多くの沼地が存在し、多くの深い溝があった。深い溝は客家語で”深圳(Shen zhen)“である。史籍では、1410年に深センの地名が登場する。

 

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宮城 紀生深セン在住20年のベテランコンサルタント
宮城 紀生
miyagi@waya.net.cn
 
 
 
 
 
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