殿方 育児あそばせ!第11回

2021/09/22

殿方育児あそばせ

 

アンセンチメンタルなパパと小葉子

photo1 小葉子とママが、内モンゴルにいる舅舅(JIUJIU母方の叔父)を訪ね、旅行に出発してから数週間のうちに、私はたくさんの動画と写真を通して、小葉子の成長を垣間見た。それは、背が伸びたことのような見た目の成長だけではない――今までできなかったことの克服、新しく習得したもの、目に見えないが、自然とあふれる自信――それらは、私の想像をはるかに超えていた。

 

 二人の旅行に反対だった――初めての飛行機、長すぎる移動時間、危ない目に合わないか――私の小さな心配をよそに、娘は元気に、大きく成長していた。飛行機から降り立った後のロビーでの動画では、小葉子はスーツケースを自分で引いていた。このスーツケースは彼女のお気に入りで、今より小さいころから、家の中で毎日のようにガラガラと押したり引いたりして遊んでいた。(そのころはスーツケースをうまく扱えず、後ろに引いていたスーツケースが倒れてしまったり、前方に推していたスーツケースと一緒に、前のめりになって転んで、泣いてしまったりしていたが、今では上手に扱っているようだ)この様子を見れば、飛行機も怖がらず、知らない場所でも普段通りで居ることができたということだろう。

 

photo3 舅舅一家と、近くのショッピングモールに行った時には、キッズスペースで楽しく遊んだようだ。ママから送られてきた動画には、段差をうまく乗り越えたり、ボールを投げたり、居合わせた他の子供に、やさしく挨拶をしたりする様子がおさめられていた。(私が知るところの以前の小葉子は、他の子供の遊具をムリヤリ奪うなど実にやんちゃであった)特に、トランポリンで楽しそうに飛び跳ねる姿には驚いた。広州の我が家の近くにある、良く行くイオンのキッズスペースにはトランポリンは無く、私が知るところ、今まで遊んだことの無い遊具である。そして同じ日に撮られた舌を出して写真に納まる姿は、私の真似をしているようで、私は微笑まずにはいられなかった。

photo2 他の動画では、いつも私が引っ張ってあげていた、キックボードに一人で乗って、颯爽と滑る娘の姿が写っていた。思えば、いつも小葉子は、父の助けなどいらない、一人でやらせてくれと主張していたように思う。

 

 

 

photo5 最も新しい動画では、小葉子は勇敢にも犬の散歩をしていた。なぜ勇敢かと言うと、私は犬が怖いからである。猫好きの私にとって犬は、どんなに小さくとも脅威でしかない。小葉子が手なずけた、この犬は舅舅の家で飼われている。犬が苦手な私は犬の種類には詳しくないが、恐らくマルチーズという種類だろう。聞けば、舅舅の家での生活が始まってしばらくして、手をかまれて血が出たらしい。ママは、私が心配して気が動転してしまうと思い、内緒にしていたが、最近になってそのことを知った。かまれた犬に立ち向かい、今では仲良く散歩が出来るようになっているとは……。ほんの少しの間に、大きく成長していく小葉子を見て、私はこう思った。

――親ばかと言われようとも、私は断言しよう――我が娘は天才であると。

 

photo4 私がセンチメンタルな父となってしまった、今回の経験によって学んだ教訓とは、親の心配など取るに足らぬことであということだろう。私は、これから先、心配のあまり、父として娘の可能性を摘んでしまうことだけは無いようにしなくてはならないと思った。これが、父親としての成長。私はもはや、アンセンチメンタルな父であった。


スクリーンショット 2021-07-20 143351

神沼昇壱(かみぬま しょういち)

随筆家。広州在住の日本人。2002年に中国に渡り留学と就職を経験。その後、中国人女性と結婚した。2021年現在一児の父として育児に奮闘中。

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