殿方 育児あそばせ!第26回

2022/01/27

殿方育児あそばせ

 

葉子と新世界

私たちが引っ越してから、はや一カ月以上が経とうとしていた。スクリーンショット (391)
葉子は新しい環境を存分に楽しんでいる。
大人にとっては小さな範囲ではあるが、葉子にとっては新しい世界に違いない。 そこには驚きに満ちた、新しい発見があるのだろう。

スクリーンショット (392)スクリーンショット (393)大きく、日当たりの良い中庭で、毎日元気に駆け回る葉子は疲れることを知らない。この小さいからだのどこから、無尽蔵とも思えるほどのエネルギーが生まれてくるのか不思議に思うほどだ。この中庭で葉子は、知らない植物の葉っぱを摘んだり、不思議な色の水たまりを見つけたり、ノラ猫と話をしたりする。毎日、飽きることはない。
近くのイオンには、ほぼ毎日行く。ここには引っ越す前に遊んでいたキッズスペースの3倍は大きいだろうスペースがある。以前の数人集まればすぐに満員となっていたころとは違い、のびのびとゆったり遊べるようになった。ここでは、遊具の取り合いも必要ない。
新しい家から少し離れたところに、昨年できたばかりのイオンモールがあるのだが、これは圧巻の大きさだ。1日中遊び通すことが出来る。無料で親子で遊べるスペースがあったり、自由に使える休憩スペース、授乳室や家族用トイレなどの設備は、日本でこそ当たり前かもしれないが、ここ中国では非常に稀である。小さな子供連れにとっては、心の底からありがとうと感謝を述べたくなるだろう。スクリーンショット (394)スクリーンショット (395)
私が、子供のころにも町にイオン(当時ジャスコ)があり、母と日常的に訪れたものだ。それは、私にとって日常のあたりまえの楽しみとなっていた。世代を超えて、国を超えて繰り返されるライフスタイル。当時の自分と葉子を照らし合わせると感動を禁じ得ない。
スクリーンショット (396)クリスマスイヴには、イチゴのショートケーキを買って帰ってきた。正直、郊外でイチゴのショートケーキが手に入るとは思わなかった。この時、店員さんが付けてくれたロウソクは花火タイプだったらしく、ケーキのロウソクを吹き消そうと準備をしていた葉子のみならず、私たち一家はそろって目をまん丸くさせたのだった。
中国では、家具付きの物件が主流であり、ほとんどの場合、衣類や日用品をもっていけば新居で困ることはない。だが、私の経験上、今までの物件では付属していた家具が無い場合は、慣れ親しんだ生活習慣から同じものを買い足す場合がある。しかし葉子にとっては、家具の購入さえ新しい遊びとなった。
スクリーンショット (397)スクリーンショット (398)スクリーンショット (399)家具の緩衝材の発泡スチロールが手で削れることを発見した葉子は、あっという間にそこらじゅうを白くしてしまった。葉子が手で集めて放ると、雪のように舞った。私は不思議と怒る気にはならなかった。(その後は静電気でそこら中にくっつき夜中に掃除機をかけることとなったが)
葉子からのサプライズプレゼント。ホワイトクリスマスとなった――思い出。


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神沼昇壱(かみぬま しょういち)

随筆家。広州在住の日本人。2002年に中国に渡り留学と就職を経験。その後、中国人女性と結婚した。2021年現在一児の父として育児に奮闘中。

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