殿方 育児あそばせ!第40回

2022/05/11

殿方育児あそばせ

親子で甲冑の偉大さを学ぶ

一時帰国中に何をするかは人それぞれではあるが、多くの方が滞在中の家の大掃除などをするのではないだろうか? 我が家の場合、コロナウィルスの影響で日本入国後に一週間の自宅待機が必要であったので、その期間は特にやることも無く、ひたすら家の掃除や模様替えなどしていた。
スクリーンショット (1146)そんな中、古い一枚の写真を見つけた。一人の少年が甲冑を身に着け立っている。私の七五三祝いの時の写真だ。身に着けている甲冑は父方の祖父がお祝いで買ってくれたもの。そして、娘の七五三の記念写真撮影を中国渡航やコロナウィルスなどの影響で見送っていたことを思い出した。撮るなら一時帰国中の今しかない! 妻とそう決めると次の週には近所の神社で撮影が出来るよう、早々に手配を済ませた。
家の大掃除を更に進めると、驚くことに、幼い頃の私が身に着けていた甲冑がきれいな状態で出てきたではないか。更にセットで大人用の甲冑も出てきた。こちらは同居していた母方の祖父がディスプレイ用に購入したものだ。折角購入したのに、祖母が『怖くて眠れない』という理由で結局飾らず仕舞いでタンスの肥やしになっていた。たまたまであったが、どっちの甲冑も祖父が購入してくれたもの。家の奥にしまっているのではなく、身に着けることで天国にいる祖父たちも、そして甲冑も喜んでくれるのではないだろうか。そう思い、七五三の撮影時に息子と共に甲冑を身に着けることにした。
撮影当日に慌てて適当に身に着けることにならないよう、甲冑の着方を事前に調べ予行練習をした。
着方を調べていると甲冑のパーツそれぞれに多くの工夫や意味があることを知る。印象的だったのは兜の頭部中心についている前立(まえだて)というパーツ。これは具体的に戦闘に役立てる訳ではなく、各武将の信条などを掲げるそうだ。また、首元後方を守るために取り付けられた鉄板を錣(しころ)と呼び、複数枚の細かい鉄板を布の紐で細かく結びつける構造になっている。これによって、戦いの時に首元の動きに制限がかかりにくくなっている。これは実際に着用することで実感できる。このような工夫は西洋の甲冑にはなく、日本の甲冑独特の工夫と美学だ。
さて、実際に甲冑を身に着けてみたのだが、想像以上に重い。立ち上がるのに一苦労だ。「こんなに重い甲冑を身に着けて戦っていたことが信じられない。」息子が言う。同感だ。きっと強靭な筋力だけでなく、重い物を身に着けながらも、最小限の労力で最大限に身をこなす戦闘技術などがあったに違いない。このような力任せではない身のこなしが伝統的に伝わり、それが柔道や剣道の起源に繋がったのかな?など勝手に考えながら重さを逆に楽しんだ。スクリーンショット (1147)スクリーンショット (1148)
いよいよ撮影当日。神社で甲冑を身に着け撮影開始。神社には事前に撮影許可を得ていて撮影時間は約1時間。正直体がもつか心配だ。息子は開始早々、歩くのだけでもフラフラだ。甲冑を身に着けた状態で娘を抱っこしてみてください。とカメラマンもなかなかハードな注文をしてくれる。他の参拝客の視線も、甲冑の重さがかき消してくれる。時間が進むにつれて、息子の疲労が限界なのか目つきが悪くなっていく。裏を返せば普段見たこともないキリっとして殺意に芽生えた目つきだ。甲冑との相性も抜群だ。
ようやく撮影終了。家に帰り甲冑を脱いで一息ついたときにふと気づいたことがある。この七五三の撮影、男性陣の為ではなく娘の為の記念撮影だ。男性陣がやたら目立ってしまった。娘が大きくなった時に写真を見返したら怒られるに違いない……。それを埋め合わせる何かを計画しないと。


スクリーンショット 2021-09-06 144041

Ryosuke Yoshida

埼玉出身、大阪生活は12年。中国語初心者・初の海外生活ということで右も左もわからない状態ですが、世界埼玉化計画推進の為、広州に家族(妻・長男6歳・長女2歳)とやってきました。広州在住日本人の先輩方に助けられ徐々に行動範囲と会話力が広がってきたところです。趣味はゲーム。仕事もゲーム。好物はビールと十万石饅頭、そこらへんの草。

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