中国法律事情「家電が壊れていた場合」高橋孝治

2015/07/28

中国の法律を解り易く解説。法律を知れば見えて来るこの国のコト。

家電が壊れていた場合 中国

 

DVDプレイヤーなどの家電を買って使おうとしたら壊れていた場合、これは返品などできるのでしょうか。もちろん、買ったお店に相談に行き、店員さんが対応してくれれば問題ありません。しかし、対応してくれない店員さんもいるでしょう。そんなときには下の条文知識が役に立ちます。

家電が故障していた場合合同法第155条に「売主が交付した目的物の品質が要求に適合しない場合、買主は本法第111条の規定により違約責任を追求できる」と規定してあります。なお、「合同法」は日本語では「契約法」と訳されることが多いようです。そして合同法第111条では「品質が契約内容と一致しない場合、当事者間の契約に応じて違約責任を負う。品質の約束がない場合もしくは不明瞭で補充の約束が結べない場合、損害を受けた者は目的物の性質、損失の大小に応じて修理、交換、再制作、返品、代金もしくは報酬の減額などの違約責任を合理的に選択し要求することができる」と規定しています。

普通、DVDプレイヤーを買うときにいちいち品質について相談する人はいないと思います。しかし、「DVDが再生できない」場合は明らかに「品質の約束がないけれど損害を受けた」に該当します。

つまり合同法の規定に基づき修理や交換などをお店に要求できるのです。
さらに消費者権益保護法第45条には「国家の規定あるいは経営者と消費者の約定によって修理、交換、返品が保証された商品に対し経営者は修理、交換、返品を行わなければならない。保証期間内に二度修理を行ってもまだ正常使用ができない場合、経営者は交換、返品を行わなければならない」という規定があります。つまり、修理を保証期間内に二度してもらってもまだ故障していた場合、三度目にはお店は必ず交換か返品をしなければならないのです。この条文も覚えておくといいでしょう。

しかし、「修理」については若干問題があり、中国の個人経営に近い電気屋さんの場合、お店の人が直接修理する場合があるのです。これは家電メーカーの正規の修理ではないため、お店の修理によってもまだ壊れていて、家電メーカーに直接持って行った場合に、「改造済」と判断されることがあります。改造品は当然に保証の対象外になるため、それ以上の修理や返品は受けられません。

お店に修理を頼むときは、そのお店が直接直すのか、それともお店がメーカーに送るのかも確認して、メーカーに送るようにお願いした方がいいでしょう。
なお、法律を持ち出すのは最後の手段ということも覚えておいてください。トラブルがあるから法律が必要なわけです。そしてトラブルがないほうが望ましいことは言うまでもありません。いきなり「法律通りに修理しろ」と言ってお店の人との話がこじれたらトラブルが拡大します。まずは法律を持ち出さず、柔らかく「修理してくれませんか」と言ってみましょう。

 

高橋孝治(たかはしこうじ)

〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法ライター、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。
都内社労士事務所に勤務するも中国法に魅了され、退職し渡中。現
在、中国政法大学博士課程で中国法の研究をしつつ、中国法に関す
る執筆や講演などを行っている。行政書士有資格者。特定社労士有資
格者。法律諮詢師(中国の国家資格で和訳は「法律コンサル士」)。
詳しくはネットで「高橋孝治 中国」を検索!

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