中国のおかしな証明書取得事情

2016/01/11

奇2現代社会ではあらゆることに証明書が必要となる。中国も例外ではなく、むしろ非常に多いことで知られている。例えば、婚姻を証明する写真入りの「結婚証」、出産許可を証明する「准生証」、全国民が取得しなければならない「身分証」……挙げればきりがない。各種証明書申請のためには、時に多大の時間と相応の費用が必要となる。時折、たらい回しが問題視される日本のお役所仕事だが、中国でもそうしたことが話題になることがある。
2015年5月6日の国務院常務会議で李克強首相が”你媽是你媽“(母を母と証明する)のような”奇葩証明“(おかしな証明)について、「こんな事どうやって証明するの?全く笑い話だ」とコメント。国務院常務会議が始まってからの一週間、各地で少なくとも28件の”奇葩証明“が取りざたされ、房管(住宅管理局)、社保、教育、公安、房産(不動産)、計生(計画出産)、民政など政府の15部門が関係していたことに対するコメントと思われる。これを機に、煩雑な”奇葩証明“に新たな展望が期待されているようだ。
母を母と証明する!?
海外旅行を計画していた陳さんは困惑させられる出来事に遭遇した。あなたの父親があなたの父親であることを証明してください、犯罪を犯したことがないことを証明してください、未婚であることを証明してください、子供がいないことを証明してください……と証明事項が延々と続く。海外旅行のためには、こうした事項について書面による証明が必要となり、各行政機関へ奔走することになる。規定により書類を取り揃えなければ手続きができないことはわかるが、こんなことまで証明書が必要なの!?というような不思議な証明もある。また、事後発給や紛失・盗難による証明書の再発行手続きにはトラブルがつきものだ。これは決して珍しいことではなく、多くの人が同様の”奇葩証明“問題を経験している。まるでコントのような「奇葩証明」問題だが、現実に生じていることを考えると笑ってはいられない。奇3
統計によれば、中国では、一人の人が生まれる前の「准生証」から亡くなた後の「骨灰存放証」まで、たった百年にも満たない人生で大小100を上回る証明書を必要とするという。それぞれの手続きに必要とされる時間と費用は膨大なものになる。さらに困るのは、証明書申請手続きが、より多く、より複雑で、より奇妙になるのは概して一般市民に対してであり、いわゆる力のある人達にとってはそれほど大きな問題になることはないという現状だ。どうにかできてしまう人がいる一方で、そんな特権を享受できない大多数の市民は融通の効かない規定通りの手続きを強いられる。「奇葩証明」問題が生じる表向きの理由は、関係する行政部門の間で相互に事実確認をするためだとされている。しかし、現状は部門間での責任の押し付け合いによる場合が少なくない。各部門は孤立した行政の”砦“、情報の”孤島“となってしまっており、互いに隔絶し情報を共有することは少ない。今後これらの障壁を取り除いていくことが、”奇葩証明“問題の解決につながるとみられており、2015年5月6日の国務院常務会議上でも、さらなる”簡政放権“(政府機関の簡素化、企業に一部の権利を移譲する)を進めることが確認された。”母を母と証明“するような珍事に遭遇することは少なくなるかもしれない。

奇葩(qí pā):本来の意味は、珍しくてきれいな花。優れた人や物を指していた。現在では、常識外れ、変わり者(名詞)、変だ(形容詞)の意味で使われている。テレビやドラマやバラエティ番組のタイトルにもよく使われる。
2013年の十大流行語の一つ。奇1

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