知られざる中国の刺し身―魚生(ユーサーン)

2017/03/07

魚生

「食在広東,厨出鳳城」=「食は広東、料理人は鳳城(順徳の旧称)から」といわれるとおり、順徳料理は広東料理の重要な部分を担っている。順徳料理は川でとれる淡水魚などが主な食材となり、「清・鮮・爽・嫩・滑」が特色となっている。今回ご紹介するのは、その中でも最も順徳らしい、まさに順徳を代表するような料理「魚生」だ! 順徳の人々は長らくこの「魚生」を食してきた。ある資料によれば、なんと三千五百〜四千年前までさかのぼるといわれている。日本ではあまり好んで食べられることない淡水魚も刺身として供されてきた。そのためかどうかは分からないが、魚生の場合は必ず活魚を用いる、つまり活造りだ。日本の
家庭では、切り身をスーパーなどで買ってきて刺身として食べることがあるが、順徳の魚生の場合そのような食べ方はできない。

魚生 魚生

ランク:おいしい「魚生」を食するためには魚選びが重要なポイントとなる。魚は種類によりランク分けされており「下品・中品・上品」という三つの等級がある。
①下品(低級):値段も安く、肉薄で骨が多く、口当たりも少々劣る。レンギョ(ハクレンやコクレン)やタラなどがこのクラスにあたる。
②中品(中級):肉が厚く、さわやかな甘味が特徴、骨は主に大骨のみ、口当たりも良い。鯉、ソウギョ(草魚という淡水魚)などがこれにあたる。
③上品(上級):スズキ、フナ、ティラピアといった魚たちで、肉質は歯ごたえがあり、口当たりが非常によく、味は甘い、それに刺し身にした時の発色にも優れている。

魚生

薬味:日本の刺身の場合、薬味は醤油にわさびや生姜といったところだ。それに比べ魚生の薬味はとても多い。その数実に十数種類にも及ぶ。例えば、ニンニク、生姜、ネギ、玉ネギ、ピーマン、醤油、油、砂糖、ピーナッツ、ゴマ、唐辛子、レモングラス、陳皮、紫芋、揚げ玉などが用意される。

魚生 魚生

食べ方:まず先に、お椀に油、塩、醤油、砂糖など好みの薬味を入れ調合しよう。混ぜあわせた薬味の中によく冷やした魚生を入れて混ぜ合わせる。そして、薬味と魚生を一口でいただこう。魚生の冷たくて爽やかで滑らかな口当たりが一瞬にして広がる。さらに、しっかり噛むことで、それぞれの薬味が醸し出す香り、辛さ、酸っぱさ、甘さが引き出され、後味も良くなる。魚生を一口食べたら、一杯の「米酒」*を飲む。これで魚の生臭さを抑えると同時に殺菌効果もあるようだ。

魚の刺身をいただく文化が日本以外にもあることがわかる順徳料理、身近に感じられるのではないだろうか。そして、それぞれの味わい方の違いを感じてみるのも興味深い。

*米酒:もち米から作られた透明で甘みのある中国のお酒。中国南方では食後に好んで飲まれる。

 

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